3.嫉妬
私は男友達が好き。
バーテンダーの彼に言ったところで、何が変わるわけでもなかった。
誰かが協力してくれるわけでもなく、ましてや私の心の中の熱い気持ちが大きくなるわけでもない。
ところで、その熱い気持ちとやらは私の中に存在しているのか・・・。
ただ、嫉妬というわけの解からない感情のみがソコにはあった。
いつものように、親友と二人カウンタに座る夜。
こうして過ごす夜も段々楽しくなくなってきた。
親友に紹介するの早まったかな・・・。
車の話、お酒の話、ブランドの話、私には全く興味がない。
くそー、仲間はずれの気分だぜ。
「なぁ、どんな車好き?」
私に聞くか?
その質問を私にするか?
「うーん、ごっついの」
「ごっついって言うても、色々あるやん」
「うーん、いかつくなくて、頼れる系?」
「ジープとかそんなん?」
「え!?」
「だめだめ、この子に車の名前はわからんよ」
あは、あははは、あははははは。
笑っとけ、笑っとけ!
あはははは、あはははは、あは、帰りたい。
親友は楽しいんだろうな。
一向に帰りたがらないな。
電車なくなっちゃったよ。
おーい。
つまらない。
っていうか、今何の話題で盛り上がってんだ?
あんまり聞き取れないな。
あ、この映画知ってる。
つまらないんだよね。
店のスクリーンに映し出された映画は、音もなく誰にも見られることなく進んでゆく。
つまらない、音のない映画を見終えてしまった。
どのくらいの時間、私は会話にも入らずこのスクリーンを眺めてたんだろう。
このスクリーンから目を外して元に戻すのが怖いな。
「俺、上がりやからそろそろ帰ろうか」
帰る!?
うんうん、帰ろう。
早く帰ろう。
「おぃおぃ、ちょっと待てって。そろそろやけど、まだやから・・・」
早く、終わらせな、私は外で待ってるよ。
店を出る私の背後から「変な子」って言う言葉が聞こえてきたけど気にしない。
親友さえついてこなかったことも気にしない。
あ、出てきた。
男友達と親友が並んで歩いている。
走れよ。
ムカツク。
「何か用事あったんか?」
「別に」
楽しくないだけだよ。
車の鍵が開く音がする。
私は直ぐに後部座席に乗り込んだ。
男友達が運転席のドアを開け、荷物を私に手渡しいた。
親友は助手席のドアを開ける。
私はいつも思う。
なんで、私の隣ではなく、助手席に座るわけ?
私はいつもいつも、二人の背中を眺めてた。
バーの映画のようだ。
二人の会話が聞こえない。
確かに、目の前に居るのは私の友達なのに。
左は中学からの親友で、右はカッコいいからって私が逆ナンした男。
そんな関係のない二人の笑い声だけが聞こえてくる。
この車の椅子気持ちが良いな。
目をつむったら眠ってしまいそうだ。
家の前まで送ってもらって、早々と自分の部屋へと駆け込んだ。
携帯がなる。
「ごめん、やっぱ用事あったろ?」
男友達からだった。
「別にって」
「何か怒ってたっぽいし」
「別に。今度遊びに行かへん?」
「二人で?」
「何か問題でも?」
「え!?」
「この間のデートの子とうまくいってんの?」
「ま、ぁ・・・まぁかな」
「よかったやん。応援してるで。別に友達同士が遊びに行ったって問題ないやろ」
「まぁな、じゃぁ今度の休みに映画にでもいくか」
「うん」
ひょんなことから、男友達と遊びに行くことになった。
とことん私は意味が解からない。
何がしたいんだろう・・・。
恋とかそういうんじゃない、ただ、私の友達なんだってこと。
親友に取られたくない、そう思った。