今年初めての書き込みが4月になるとは……

さて、実は今年の1月から劇団を立ち上げました。
制作群 猫が帰ってこない。です。私は広報担当ということで、ホームページの更新やらツイッターの更新やらやってます。
手作りなのでレイアウトの崩壊が起こりやすいホームページはこちら。↓
http://nekokae.web.fc2.com
ツイッターは@nekokae_info

8月10日(日)には小名浜市民会館にて旗揚げ公演「藪蛇島(ヤブヘビジマ)」を上演予定です。不条理コメディらしいです。まだ脚本が上がっていないので全容はあかせない(笑)

しばらくはこちらにかかり切りになりそう。大学の方も結構がんばってますよ。

それではまた。

すっかり前の話になってしまった。大学にいったり風邪をひいたりしているうちに今年も後半戦じゃないか。

比較的前半戦に見てきたレポがそのままになっていたので、アップするだけするのである。


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 小林賢太郎をご存知だろうか。

 お笑いコンビ「ラーメンズ」の片割れ、漫画家、劇作家。

 単純なところを書けばこんなところだろうと思うが、その夜の彼は一流のパフォーマーであった。


 2013629日、いわきアリオスにてポツネン「P+」を観た。

 小林賢太郎に関わる自らの経験といえば、6年前の高校演劇発表会でラーメンズの作品を4本、オムニバスにして上演したことだ。彼のコント作品は戯曲集としてすでに三冊発売され、一部は文庫本になるほど長く人気がある。件の戯曲集を購入したのはまだ中学生のときだったが、そのときから彼が作り出すものは、コントというお笑いとしての枠を超えたものではないか、どちらかといえば演劇に近いのではと思っていた。(実際に、2002年からKKPというプロジェクトを立ち上げ、定期的に演劇作品を発表している。)相方の片桐仁は個性派俳優として活躍しているところもみると、やはりこれらを仕掛けている人物=小林賢太郎というひとも一筋縄ではないのだ。


 さて、このポツネンというライブの形態について少々説明すると、その名の通り小林賢太郎その人ひとりが「ポツネン」と舞台に立って、短い作品を連続で上演する、というものだ。「ひとりの演者が次々と別の話をする」という点では、落語の演劇版といえるかもしれない。今回の「P+」は昨年ヨーロッパ公演を行った「P」の凱旋公演であるため、ところどころにフランス語訳がついている他、見てすぐ分かる作品が多いなど、ワールドワイドな表現が目立った。

 大きく分けて4つの作品が上演されたが、特に気に入ったのは「んあえお」だ。このタイトルは作品の内容から私がつけたものなので、実際には違うと思われる。(上演中でのタイトルの発表はなかった) ごく単純な構成で、「ん」「あ」「え」「お」の4つの音だけで様々な状況を表現するのだ。

例えば、

「んー?あぁ……えっ?おー」と人の話を聴いてみたり、

「んー!あー!えー!……おぉ」と開かないドアを開けようとするのである。セットは必要最低限のもの(スクリーン代わりの壁)以外はなにもないので、全ての動きはパントマイムだ。

確かにこの4つだけでも、その状況は通じるものである。最近の演劇ではとくに言葉にこだわった作品を観ることが多いが、こうしたシンプルで洗練された作品を見ると、言葉というのは必要で大切なものかもしれないが、頼りすぎてはいけないのではないかと思う。人間は言葉だけで会話するのではなく、身体も使って表現するものだから、人を描こうと思ったときは、言葉と同じぐらい身体でどう伝えるかを考えるほうがいいのだろう。そのための身体は常に鍛えて、しなやかにしておかなければいけないし、いつでも声を出せるようにしないといけない。

 ただ、それと同じぐらい大切なのは、発想だろう。作り出す人間にとってはそれほど失って悔しいものはない。今回のライブにはアンコールがあり、そこで披露してくれたのは「手の奴」というものだった。この作品のタイトルはその場で発表されたので、正しいはずだ。

 ポツネンで必ず上演される作品に「ハンドマイム」というものがある。まず14型ぐらいのモニタにイラストが横スクロールで表示される。それにあわせて、小林氏の手が歩いていく。さらにその様子をカメラで撮影、そのまま会場の大きなモニタ(もしくはスクリーン)に投影するという手法の作品だ。音楽だけでセリフはなく、基本的に出演者は小林氏の手だけ。本人曰く、「やっている方は大変」だそう。そりゃそうだ、10分近く自分の手をピースにして歩いているように気をつけて動かさなきゃいけないんだから……

 小林氏は昨年のヨーロッパツアー中、「もっと日本を歩かないと」と思ったそうで、この「手の奴」は東海道五十三次を全部回るというものだった。日本橋から始まり、品川、川崎、神奈川……と、各地の宿場をめぐるものの、早々全部に名物があるわけでなし(笑)なにもないところもあれば、なぜかセロハンテープ工場のことだけが大きく書かれている箇所もあった。動く映像の前で手が歩いてみたり、人がルームランナーで歩いてみたり、そうするだけで自分も伊勢まで行った気分になる。あくまで気分になるだけでも、いいんじゃないかな。演劇だもの。

「憧れのあの人」の舞台。これからもっとそういうのを観る機会が増えるだろうか。というか増やしたい。

次の目標は大人計画だ。

ではまた。

1721分、青い森鉄道で八戸駅に。そこから八戸線へ乗り換えて、186分、本八戸駅到着。本日の宿はさらにそこから徒歩で20分先のところにある。iPhoneのマップに頼って歩いたら、やたらと細かい道を歩かされた。ホテルは素泊まりにしておいたので、夕食は八戸の郷土料理でもと思い、一休みしてから専門の店へと歩いた。ホテルは駅から遠くて不便だと思っていたが、繁華街からは近かった。ラッキー。しかし目当ての店は予約がいっぱいで入ることができず。仕方なくぶらぶらと歩いていたら、「みろく横丁」を発見した。そういえば八戸では横丁文化が発達しているんだった。まず友達とはこんなところへは入らない。一人旅ならではの気楽さが私を後押しし、赤提灯がゆれる路地を歩いた。その突き当たりに雰囲気のよいお店をみつけたのでおじゃまさせてもらう。

 ママさんと美人なお姉さん、ふたりだけで切り盛りしているそこは、カウンターだけで8席くらいしかない。私が入った時点で、地元のお兄さんたち5人、宮城県からきたご夫婦、それから私でぎゅーぎゅーになって、仲良くおしゃべりしながら、ワインやせんべい汁をもらった。お通しのきんぴらごぼうは味付けが甘めで、すごく安心できる味だった。これもめぐり合わせなんだろう。特にせんべい汁はもちっとした食感や醤油系の味付けにすっかりやられてしまった。ザ・家庭の味。それからママさんから教えてもらったのだが、南部せんべいのくずをバターでいためるといい肴になると知った。八戸の人はうらやましい。毎晩でもこんないいところに飲みにいけるのだから。


 なんだかんだで結構酔っていたのか、その後は一人で二時間カラオケで歌っていた。録音が残っていたが全くまともに歌えていない(笑)これはちょっとムダ使いだったか。

 22時ごろホテル着、23時に就寝。


 

2013.5.5(日)

 6時起床。支度をして640分ごろにチェックアウト。

 徒歩で駅へ。722分の八戸線で陸奥湊へ向った。目当ては駅前日曜朝市だ。今日の朝ごはんはここで海産物をいただこうと思う。

 雨が降ってきたので朝市はやっているだろうかと不安になったが、杞憂だった。朝市のBGMは「おさかな天国」(笑)駅のホームに聞こえるほど大きな音で鳴っていたので、まず間違いなくやっているだろうとわかった。方言で「イサバのカッチャ」といわれる売り子のおばさんたちが、しゃがれた声を張り上げて焼き魚などを売っている。

 いつもの朝市だとご飯は一膳100円だそうだが、日曜の朝市だとみそおにぎりに代わるんだそうだ。ごろっとしたみそおにぎりは2個で150円ぐらい。それからシラスが入った白魚汁、ハマグリの貝に盛られたうに、たらこ、焼きホタテ……ちょっと欲張りすぎたがまあいい。どれもおいしくいただいた。

 12時ごろ、八戸駅に戻り東北新幹線に乗り込んだ。

 八戸駅に着くまでのあいだ雨は降り続いていて、5月になっているというのが信じられないぐらい肌寒かった。その、しとしとと降る雨がとてもよくこの土地に似合っていて、私は、胸がしめつけられるような、だけど悲しいだけではない思いを感じた。


 一泊二日の弾丸一人旅もここまで。

 茨城の片田舎から、本州の端っこまで来たことそのものが、まるで夢のような2日間だった。青森の、東北の土地にただようノスタルジックな空気に刺激され、未だ言葉に出来ない感覚が心の中に溜まった。それはこれから作り出すもの、描き出すものの中に、少しずつ現れてくるだろうことを願っている。