入社3日目、現場生活2日目の朝だ


『戦国くん、おはようございまちゅぅ~

今日はちゃんと働いてくだちゃい!』


キモイんじゃ、このバカ

って・・・

朝からもめたらいけん(>_<)

元気よく心を殺して・・・

『おはようございます!』(汗)



張り切っていこーっ!

現場事務所の前には2トンダンプがとまっている。

下請けさんかな?

現場事務所へ入ると作業員の人が何人かいた。


『おはようございます(^o^)』


元気よく言うと…


その中の親分っぽいオヤジが

『おう、お前か新入社員は』

はい!よろしくお願いします!

『大学か?!』




『ええ』



『知ったかぶりするなよ、わしの前で…

わかったか?』


な…なんよ、いきなりケンカ売るんか?


『わしはお宅の会社の下請けやらせてもろて20年になる。

みんながぺーぺーのときかはわしは知っとるんよ。

のぉ、舐めたことするなよ!』



なるほど、うちの会社にずっとくっついてる下請の社長か…


関係ないわ(笑)



わしは元請じゃ!


初めて担当したのは下水道工事の現場


工事金額は多分3000万円クラスだったと思う。




朝9時道路に規制をかけて掘り始める。

『戦国くん、何してるんでちゅか?

働いてくだちゃい!』



はぁ?


わしゃ、何をしたらええんや!?


お前が指示せぇや!わしに!


『指示してください!何したらええんすか?』


『ええっ?…戦国くん・・・

指示されないと何もできない人なんでちゅか!』



がーっ(`▽´) そうくるかーっ!

まるで無能者あつかいじゃん


『戦国!ちょっと来い!こっち来て手伝えや!』



下請の親分がわしを大声で呼んだ。



はぁ? なんでわしが作業の手伝いせにゃならんのよ!



『戦国くん、手伝ってくだちゃい』



… ん~…



手伝うしかないか…



掘っている所に行き


『何しましょうか?』


『なにボサーッと立っとんや、カクスコ取れ』


え?


『カクスコって何っすか?』



『お前、大学行ったのにカクスコも知らんのか?

先が四角のスコップのことよ!』



なるほど…



『バタカク取れや』



ん~…



『そこの1mくらいの木があるだろうが!

ホンマに何も知らんのじゃの~!

ホンマに大学行ったんか?』



なんでそこまでボロカス言われにゃならんのよ(>_<)



道路の地盤より2m掘って塩ビ管を据えつけて、石の混じっていないサラサラの砂で周りを巻いて埋める。

なるほど…

この単調作業を繰り返すのか。


フムフム…



『はよ~持って来いやぁ~塩ビ管!』



怒られながら4mの管を肩に担いで運ぶ。


この親分に一ヶ月くらいボロカス言われながらコキ使われ、現場の機械、道具など現場用語をたたきこまれる(^o^)



いま思えば、キツかったが勉強になった一ヶ月だったな☆


この親分…



10数年後、わが社の常務になる男である。



続く…

『戦国くんは1日中マンガ読んでたでちゅ』


あのなぁ~!

まぁ、そりゃホントの話なんじゃけど…




みんなの前で言うことないじゃん(>_<)

こいつ…

かなり手強い…

引きずり回すか…




いや、やるんなら人のいない所で

仕掛けて仕損じ無しって感じでやらなくては…



ヤバイ…



謝り&反省をアピールせねば


すると課長が

『Dよ、なんでお前、戦国くんに何も指示せんのや』



『わたちも忙しいでちゅから。

戦国くんも考えて動いてもらわないと』



『お前が戦国の上司だろ?

お前が指示せずに現場初日の人間がどう動けるんや!

よう考えてみいや!

のう、Dよぉ

戦国くんに何も教えてないってことは

お前は仕事してないってことど。

わかっとんか?』



ぷっ(笑)



怒られてやんの(笑)



課長は正しい思考の持ち主だ、助かった(汗)



『しゅみまちぇん…』



ついでに赤ちゃん言葉も注意せぇ~よ課長!


ちゃんと反省したんかぁ~Dよ~!



『戦国くんも、Dに仕事無かったら聞くようにな』



聞いたんよ、わしは~って…(汗)



『はいわかりました。すみませんでした!』

ええ子を装う(笑)




『あと、そこが戦国くんのデスクになるからね。

しっかり仕事してください。』と課長。


わしのデスク…


これが最強に嬉しかった(^◇^)


自分だけのデスクを与えてくれた(泣)


Mの下請けである『リッド』には特定のデスクは与えられなかったから、仕事しててもMの社員が来たら中断して席を譲らなければならないルールがあった。

だからスゴイ嬉しかった。




『戦国くん、Yです。

よろしく(^o^)

良かった、やっと後輩ができた(笑)』


私より4歳年上の先輩のY主任だった。


Y主任と話をしているとD主任が寄ってきて…



『戦国くんのせいで、わたちが課長に怒られたぢゃん(>_<)

ちゃんとしてくだちゃい!』



ムカつくのぉ~コイツ…



『Dさん、バカじゃないん!

あっち行きんさいや!』



おっ、Yさんが追い払ってくれた☆


救世主あらわる(^o^)




現場初日は早く帰っていいと言われたので7時には帰宅した。


おお、明日からのために早く寝るか~って



ピンポーン 誰?



大学の同期でコンサルタントに勤めているイワちゃんが遊びにきた。



『借りとったエロビデオ返しにきたんよ、

まだ仕事中じゃけ、帰るわ』


と… 私が貸したエロビデオ置いて帰る。



半年前のじゃん、日向まこ!(汗)


まあ、とりあえず見るか…


って… おーい、ちゃんと巻き戻しとけ~や~


イッたシーンがわしにバレバレじゃ~ん(汗)



ヤバイ…



なんか久しぶりに会った彼女と朝まで燃えるようにムラムラしてきた(`▽´) …



あ…



しまった…


無意識のうちに…



3回もやってしもうた( ̄▽ ̄)



ゴッドハンド…



いや、右手のバカバカ(>_<)




現場初日を終えた戦国みつをは…


現場より帰宅してから疲れてしまったのだった…



続く…

入社2日目が始まった・・・

『おはようでちゅう~』

正気かお前は!



朝から赤ちゃん言葉での挨拶…

江戸時代なら斬り捨てても罪にならんで!



いやいや、これからお世話になる先輩…

ここは大人として…


『おはようございます!よろしくお願いします(^o^)』

元気よく挨拶すると!!


ぷっ…


D主任が吹き出し笑いを…

ん?

なんか変なかったか?

なに笑っとるんやこいつ。。。


『え、なにかおかしかったですか?』

と、作り笑顔で聞くと…


『いや、別に…』


別に?!

いま確かに、ぷって笑ったど(汗)


ぷっ、って笑うのは感情的におかしい要因があったときに無意識無想にくりだされる技のはず…



うわっ…


すげぇ、感じの悪いやつ(`□´)



『まあ、よろしくでちゅ』



まあ…


まあを使うか、この人間は…



単なる赤ちゃん言葉の使い手だと甘く見ていたが…


こいつは精神的にゆがんだ人間であることは間違いない…


が…


こいつから教えてもらわにゃならん…


ガマン、ガマン…


シーン…


ん?


Dは黙ってワープロをカタカタやっている。


時間が経過して9時…


『Dさん、今日は現場の方は?』


『えっ、今日は現場休みでちゅよ!

知らなかったでちゅか戦国くん!』



お前が言わんのに、わしが知っとるわけないじゃんバカ…


と、思いながら


『そうだったんですか、僕は何しましょうか?』


『何ができるの?』


くっ、そう切り返してくるか…

確かになんもわからんわ!!

はよう教え~や!!


シーン…


結構、こいつ手強い…



『事務所の掃除しましょうか?』


『昨日したからいいでちゅ』


あの~、掃除は毎日するもんじゃ…


シーン…


ん?


応接机の下に…


少年ジャンプ

少年マガジン

少年サンデー

ヤングマガジン

ヤングジャンプ

ビジネスジャンプ

ヤングサンデー


おおっ!


今週の週刊誌が全部揃っとる(`▽´)

下手なラーメン屋より品揃えがええぞ!


まさかコロコロコミックなんかもあったら笑うなぁ~



ん?


『Dさん、このコロコロコミック

買ったんですか?(汗)』



ドラえもん好きなんでちゅう~☆

毎月、買ってまちゅよ(^◇^)

えっ!?

戦国くん、コロコロコミック読まないの?』



えっ!?


読まないの?って…


わしがおかしいんか?



わしゃ~


コロコロコミックは小学低学年で卒業しとるわぁー!



どこの世界に30過ぎたオッサンが毎月コロコロコミック楽しみに読むんがおるんか!


絶対、お前のほうがおかしい!


最高裁の判事でも

『そりゃ~Dくん、おかしいよ』って言うわ!



まあ落ち着いて…



『戦国くん、今日ヒマだからマンガでも読んでたら?』



おお… いいやつかも(^o^)



初日の仕事… 週刊誌まとめ読み(汗)



夕方、本社へ帰ると課長が


『おお、戦国くん、どうだった?現場は(^o^)』



『ええ、今日は…』

と言いかけた時、後ろからD主任の声が



『戦国くんは一日中マンガばっかり読んで仕事しなかったでちゅ』



はっ、はめられた!


続く・・

経営者への道・第3話「現場監督への第1歩」


入社初日のことだった

『戦国くん、うちの会社がいま施工してる現場を全部まわるから、行こう。』

課長と二人で車で回ることになった。


ん?

課長…


朝からドーナツをムシャムシャ食べてる(汗)



『戦国くんもどう?』


うっ


いぇ、朝は食べてきましたから(汗)


『私も朝ごはん食べてきたんだけど…

家から会社くるまでに腹へっちゃって(笑)』


この人、絶対おかしい(笑)


朝からドーナツ…


いまだに鮮明にこの衝撃は記憶している(笑)


課長の話では土木部に現場監督は5人

各自、一つの現場を担当しており 一つの現場は3000万円から1億円だという。


私の生活の中で初めて(億)の単位が出てきたのはこの時だったかもしれないな(^o^)



てか、課長の巨体と私の巨体で…


軽自動車がかわいそう…(汗)


かなり狭い&苦しいドライブが始まった(笑)



まず係長の現場へ行く。

係長は会社の近くの道路改良工事をやっていた。

なんや…

このプロレスラーみたいな人間は…

ここの会社はみんなデカイんか(汗)

目の前に長州力が立っていた(@_@;)


第一声は今でも覚えている。

『酒、好きか?』


はい、好きですよ(汗)


『合格、合格!土木部へようこそ(笑)

よろしく。係長のKです(^o^)』



なんか感動したな~この時は。



まずヘルメットを被ってる男はこんなにかっこいいのか!


自分がこれからなろうとしている現場監督とは、こんな感じなのか…


嬉しくなった。




次に土砂災害の現場へ行った。

そこにS主任がいた。

『はじめまして(^o^) 戦国くん。

広島工業大学なん?

馬鹿ばっかりじゃったろ(笑)』


確かに(汗)


2代目のバカボンが多数いたな(笑)


S主任は砂防ダムをここに作っていた。


砂防ダムってのは土砂災害防止のために作られるコンクリートダムのこと。


大きい…


自分の身近な所にこんなものがあったのか…


そして、これを作る職業があるのか…


感動した記憶がある。



次にD主任の現場へ…

下水道工事の現場だった。

道路を掘り、下水道管を入れているとこだった(^o^)

単純に思ったのが

『道路の下はこうなっているのか!』だった(^o^)



ヘルメットを被ったメガネくんが近寄ってきて


『わたち、Dでちゅ~!よろちく~!』



ええっ!(汗)


30過ぎの男が赤ちゃん言葉を巧みに使っている!



マジか…



『戦国くん、馬鹿じゃろこいつ(笑)

まあ、気にせんように(笑)

さっ、次に行こうか』



課長は慣れてるのか、あっさり受け流して車に乗る。



こんなんでも現場監督できるんかいな…(汗)



生理的に受けつけんで、気持ち悪い男じゃ…(汗)



なんか鳥肌が立つわ…


車の中で課長が


『明日から今のDくんの下について現場に出てくれる?わからん事あったらあいつに聞いてね。』


え… すごい、いやです(>_<)



気持ち悪い…



が…



『了解!いや、ラジャーと言わせてもらいます!頑張ります!』



ついに現場監督への道が始まった。



続く…

大学の教授の紹介で建設会社の面接へ出向き

その会社の課長との面接が始まっていた・・・・


『うちは建設会社でも管理者、俗に言う現場監督だな。

土木工事の施工管理を主な仕事にしてるよ』


『そうなんですか、現場監督ですか』


課長が笑いながら

『(笑)戦国くん、うちの業務内容、知らないで面接きたの?』



『ええ(笑)男の職業だと教授から聞きまして(汗)』




『現場管理は頭脳労働体力勝負なとこがあるからね。

確かに男の職業だな(笑)』


現場監督


現場ではトップ

偉い

人から命令されない


おお…これだ!


これは間違いなく男の中の男の職業だ!



『よろしくお願いします!

入社したいです!』


『私は戦国くん、面白いと思うから

専務に合格と伝えとくよ(^o^)

明日、専務と土木部長に合ってもらうから

朝10時にまた来てくれるかな。』



この会社 広島市内でも中堅どころの建設会社。


年商16億、創業50年の老舗。


現在、代替わりして2代目の社長が経営。


部署は土木、建築、総務の3つ。


土木部は全員、同じ大学の先輩。


などなどT課長より説明を受けた。




翌日、会社に行き役員室へ通されると

オランウータンのような専務

リチャード・ギアを色黒にしたような土木部長が座っていた。



『いつから来れるんや、ええ体しとるのぉ!

よっしゃ!よっしゃ!

部長、戦国くんの住むとこは用意したんか?』


『ええ、いま若者はワンルームマンションが人気だと聞きまして

昨日、押さえとります。』


『よっしゃ、よっしゃ!

戦国くん、ワンルームマンションでええじゃろ!

総務で作業服のサイズ言うて帰りんさい。』



正直、人間が持つパワーに圧倒されたのはこの専務が初めてだった。


なんというか、その人間が持つオーラのようなものを感じたな。


圧倒されっぱなしのまま面接は終わり会社を出た。



これが建設業界に入った瞬間だった。



この時戦国みつを 26歳


T課長(現・我が社の専務) 38歳


土木部長(現在、我が社の下請の社長) 40歳


すべての始まりだった。


第3話へ続く…

起業から現在まで目の前にある問題を一つ一つ解決しながら

7年の月日が流れ、8年目に突入した。

ふと振り返ると、わしは何故起業まで到ったのか?

何がわしを起業まで導いたのか?

それを考えると、サラリーマン時代に経験したことが大きく影響していることに気付く。

いろんな起業に関する書籍が出版されているが、このような物語形式のはあまり見当たらないな・・・

この物語を通じて、これから起業しようとする人たちに・・・

仕事を頑張るサラリーマンに何かを伝えられたら嬉しく思います。



って、わしが物凄い人物かと言えば全然そうではないんじゃがな(笑)


ここに記すことはわしが実際に経験してきたことなのだが

関係者に迷惑がかかっては不本意なので一部脚色をしています。

本筋は実際に起こったことである。


物語は戦国みつをが大学を出たところから始まる・・・


大学から就職したのは広島の地元大手自動車会社Mの下請会社。

車や工場の設計コンサルだった。

もともと図面を書くのや、構造計算などが好きで

だったら図面屋だなって感じで簡単に就職を決めた(^o^)


今から14年前かな☆


やはり自動車会社Mの仕事ってなんか凄く見えて

Mの会社の中で働けるのが嬉しかった。


が…


中に入ってみるとビックリの連続だった(笑)


Mの社員は我々下請けを『リッド』と呼び

リッドは人間じゃない、みたいな感じで扱う社員もいたなぁ(^o^)


すごいプライドの高い社員ばかりでうんざりしたなぁ。


そんな中で長年派遣されている下請けの人間ときたら最悪で

ジメジメしてる人ばかりだった(笑)


最終的に直属の上司の課長を首根っこ捕まえて、みんなが見てる前を引きずりまわして辞表出したんだけど(笑)


『こんな腐った会社、辞めたらぁ~っ』


辞表出して思った…


『男のやるべき職業は無いんか!?』


『ベスト オブ 男 って職業は無いんか!?』


『自由で、しかもあまり人から命令されない職業はないんか!』


この3点を志、母校に相談にいく。

広島工業大学へ行き教授に聞いてみる。


『教授、男の職業を探して旅をしよる!

何か無いかね!』



『あるある、ちょうど今日そこの課長が誰かいないか聞いてきたんよ~行く?』


おいおい、そんな簡単に男の職業があるんかいな


まぁ、ええわ!!


行く!すぐ面接行く!


少しは考えて返事せえや~みたいな(笑)


教授にアポをとってもらい、すぐにその会社へ愛車AE86トレノを乗りつけた(`▽´)


応接室で待っていると 巨大な肥満体型の男が入ってきた…


この会社は…


こんなに太るくらい給料ええんか!?


まずそう思った(笑)


『キミ、戦国くん?課長のTです』



(^o^) これが現在のわが社の専務との出会いだった。


第2話に続く・・・

「いっちゃん、行ってこいや」


次の現場が決まろうとしていた。

そして地獄の始まりだった。




建設会社には大きく分けて3種類ある。

1つは、我々のような一般人が経営する建設会社。

1つは、普通の人間ではない人が経営する建設会社。

1つは、普通の人間ではない人が経営者を裏で糸を引いている建設会社。


それ以外のもあるが少数なので省略(笑)


今回、私が担当になった現場は3つ目の種類の建設会社と入札で競り合って我社が落札したものだった。


営業部長の話では、その落札できなかった会社が我社の下請けをするから丸投げしてくれと言ってきたらしい。

「うちは、まともな会社しか仕事は出さない!」


土木部長の一声であっさり却下。



しかし、営業部長は

「たぶん現場を何らかの形で妨害してくるで、Sさん。

あいつらは汚いんじゃけえ」



「そんなんでいちいち仕事出しよったら、うちの協力業者は全員頬に疵がある人間ばっかりになるで。

ここは要求を突っぱねて我々の方針を分からせましょう。」



「土木は部長の管轄じゃけえ、わしはええよ。」

営業部長が言う。



「課長、ちょっと」

部長が課長を呼ぶ。



「担当者、誰がいいと思う?課長」



「そうですねぇ、戦国でしょうね。」


「じゃあ、そうしよう」


おい!即決か!


「いっちゃん、行ってこいや」


はい・・・・

結構、素直な性格なので、そのまま準備を始める。

そして着工の日、行き止まりの道路の奥から下水道工事を始める。


機械がアスファルトを剥がし


道路を掘って2Tダンプへ積み込む。


2m角くらいの広さで、深さ2mくらい掘った時・・・・



「おい、誰に断ってうちの前を掘りかえしとんや!」


行き止まりの一番奥の住民のオッサンが出てきた。



「あの、一週間前から住民の皆様へ挨拶に回って今日から工事するのを了承してもらったんですが・・

お宅様も一度、ご挨拶に伺ってご説明させていただいたんですが!」



確かにこのオッサンは一度、工事の説明したはず。。



その時は別に何も言うてんなかったが・・・



わしは聞いてないで!

あんたらが挨拶もなしに勝手に掘り出したけえ

ビックリして飛び出してきたんで!!」



ええっ?



「今から車出すけえ、埋めてくれーや」



ええ~っ!せっかく掘ったのに!



「お宅らが勝手に掘るけえよ」



協力業者の社長の冷たい視線が・・・・



「監督さん、挨拶廻りしてないんです?

そんなんで工事が遅れたら、わしら迷惑ですよ。

ちゃんとしてくださいよ



ガーン!!!


違うんじゃ~違うんじゃ~わしはちゃんとしたんじゃ~・・・



プップープップープップー


「はよう、埋めんか~こら~」



くっ・・・

「なにをモタモタしよるんじゃ~!

はよう埋めんか~こら~!」


これが、工事の妨害というやつか・・・


近所の住民も出てくる。



「この業者が挨拶もなしに勝手に掘りやがって

迷惑しとるんですわ!」



・・・・・


「用事があるんじゃ~!

はよう埋め~や~!」



埋めよう・・・



「埋めます・・・」




協力業者の社長が

「埋めよ、埋めよ、仕事にならんわ!」

すみません・・・

掘った土をまた穴へ埋める。



今日の工事の売上はゼロだ。


私の給料や協力業者の労務など赤字だ・・・・




埋め終わると車が出て行く。



「おい監督さん、わし、今からパチンコ行って来るけえ

帰ってくるまでに家の前を奇麗に掃除しとけえよ」



ニヤニヤしながら出て行く。



パチンコ・・・



このオッサンはパチンコ行くため大騒ぎして、クラクション鳴らしあげて

掘った穴を埋めさせたのか・・・



これが妨害か・・・・



この住民は、あの業者の手先ってことか・・・



どう対処するか・・・・



「明日はどうするんですか?

あのオッサンまた同じことやりますよ明日も!」


協力業者の社長がイライラしながら言う。



・・・・・



「明日も工事しますよ。頑張りましょう!」


「ええんですか?明日はちゃんと工事できるように

挨拶しておいてくださいよ!」


「大丈夫ですよ。お疲れ様でした」


協力業者が帰っていく・・・



へこんだ。



いや、へこんでいても、すぐ明日がくる。


手を、なにか手を考えなければ・・・・


ん~・・・・・


考えながら日報を書くのであった・・・・


「本日の工事 進捗 0 」


続く・・・・



「こいつ知っとるか?サンフレッチェの選手の!」

ん?

「僕、サッカー見ないからわからん」

入社3年目の秋である。



「これもダメか~!

サンフレッチェの選手なら、あんたがビックリする思うがの~!」


このオヤジは・・わしをビックリさせるために・・・


サンフレッチェの選手を飲み屋に呼びつけたのか・・・


そっちのほうがビックリしたわ(笑)


「わっはっはっ、ええことじゃ、ええことじゃ。

人の上に立つものは少々でビックリしよたらいけんよ、よっくん」


・・・・・


「オヤジさん、いつか聞こうと思うたんじゃけど・・

誰ですか?」


「わしか!わしはヤクザよ!大極道よ!」


・・・ああああぁぁぁぁ・・・・わしの人生・・・


加速度的に転落していきよるわ(汗)



「まぁ~社長、よっくんをイジメんさんなや(笑)」



お店のママが助けに入ってくれる・・・

ん?イジメ?



「社長はヤクザじゃないんよ(笑)

近いけど(笑)」



近いけど・・・違う・・・・



限りなく近い・・・数学でいう近似値的なものなのか?



「しかし、よっくんは肝が座っとるのお~!


何者かわからん人間と何ヶ月も一緒に飲みよったんか?


わしが本物じゃったらどうしたん?」



「必死に逃げます(笑)」



「いやいや、よっくん、ヤクザからは逃げられんで(笑)

警察より情報網が整備されとるけえな」



「あうう」



「心配しんさんな、わしは普通の会社の社長よ(笑)」



「何関係なんですか?」



電気通信関係の会社よ。もう40年になるがね、会社始めて。」



「40年・・・すごいっすね」



オヤジさんから名刺をもらう。



おお、聞いたことある・・・会社名だ・・・



このオッサンが・・この会社のトップなんか・・・



「よっくんは何がしたいんや?」



「何?」



「これからの人生、何がしたい?」



「オヤジさん、僕は高校、予備校と数学の教師になりたかったんよ。


センター試験受けて国立大学の教育学部を受験したんじゃけど・・


勉強したわけじゃないけえ、そりゃ落ちますよね(笑)


どこでもいいから地元で大学行こうって、広島工業大学へ行ったんです。


それからマツダへ出向社員で入り、大企業の社員の意識レベルの低さを知りました。


大学の教授の推薦で土木工事の現場監督の会社へ就職して、今です。


いまはこれが天職じゃと思って頑張ってますよ(笑)


先のことを言えば課長、部長になりたいですね。」



「そうか、そうか(笑)」



「なんで僕に良くしてくれるんですか?」



「わしは、あんたが好きじゃけえよ。他に理由がいるか?」



「しかし、高い酒や高い料理を食べさせてもらっても

なんもお返しできませんよ(汗)」



「よっくん、わしに返さんでもええ。

金は天下の回り物って言うじゃないか」



「はい・・」



「わしは、よっくん、あんたという人間に何かあると思って

わしからつき合わさせてもらっとるんよ。

わしはよっくんに付き合ってもらっとるんで

返す必要無いじゃないか。

金は下に回せ。」



「下に回せ?」



「そうじゃ、自分が目上の者に何かをしてもらったら

返す必要は無い。

その分、今度は自分の下にいる、これはという人間に何かしてやれ。

そうやって金は天下を回っていくんよ。

それが上に立つものの金の使い方よ。」



おお。。。



「自分が何かしてやったと、恩着せがましく

見返りを要求する上の者がいたとしたら、

ついて行くに値しないと思え。」



おお・・・



「自分がしてもらったことは下にしてやれ。

それが自分が何かをしようとした時の土台となるんよ。」


なにかやるとき・・・?


なにをやるんだろうか・・・?


まだこのとき、オヤジさんの言う言葉を全て理解するには

私はまだ未熟すぎた・・・



続く・・・


私は昔から夜の街を一人でブラブラするのが好きで

その日も、広島の夜の街で一人飲んでいた。

「あんたぁ、いっつも一人じゃのお」

60代くらいののダブルのスーツを着たオヤジが話しかけてきた。

この人間との出会いが私の人生の転機だったと今になって思う。

男の生き方、なにが人間にとって一番大切なのか?

入社3年目の夏のことである。



このオヤジ・・


確かによく顔を見かけるなあ、この店で・・


「つるんで飲むってのが、苦手なんで。」


私がそう答えると


「はっはっはっ、面白い!ちょっと付き合ってくれんか一軒」


え?


このオヤジ。。アルマーニにスーツ・・


どう見ても・・ヤクザではないが・・


どっかの会長クラスか?


暇な年寄りなんか?


面白い!付き合ってやるか!


二人で店を出て街を歩く。


「この店よ。ん?あんたデカイのぉ~!何センチあるんや」


「182センチです」


「ええことじゃ、ええことじゃ」


2人で店に入る。


おお!


なんと、私が普段行くようなスタンドじゃなく・・


クラブ?女の子もドレスを着とる!!


「社長さん、いらっしゃい」


店のママらしき女性がオヤジに向かって言う。


やっぱり、どっかの社長じゃったか・・・


ボックスへ座る。


こんな広いボックスへ2人で座ってええんか?


まあええか(汗)


「ヘネシーでええか?」

ヘネシー!?


いまでこそボトルキープが安くなっているが、10数年前のヘネシーはサラリーマンではキープしにくい値段だった。


というか、初めてヘネシーを飲むのだった(汗)


「あんた、どういう名前か?」


「・・・・・(実名)です。」


「そうか、じゃあ、よっくんじゃな!」


「は、・・・はい」


よっくん・・・うちの親に呼ばれる名前じゃん(汗)


まあいいか。


「おっ、よっくん!見てみぃ!

カープの高橋で、そこにおるの!」


オヤジは立ち上がりカープの高橋のほうへ歩き出す。


おいおい、オフで飲みに来てるのに、嫌がるじゃろうに・・・


すると、カープの高橋が・・


「あっ、社長!ご無沙汰してます!

一緒に飲みましょうよ!」


ええ!?


「お~い、よっくん!こっち来いや!」


は・・・はい・・・


カープの選手何人かと同席して飲み始める。


「よっくん、カープの高橋でこいつは!」


「こんにちは・・・

僕、野球見ないんで誰が誰やら分からんのです。」


「よっくん、カープの選手知らんのか!?」


「ええ、カープの高橋と言われてもピンとこんです(汗)」


「わっはっはっ!!!

こりゃ~ええわ!!面白い男じゃのお!」


「私らも野球知らない人と飲んだほうが気が楽で楽しいですよっ!」

カープの高橋が笑いながら言う。


その夜は結構、遅くまで飲みまくり、お店の閉店までいた。


飲み代いくらかな・・と思っていると


「さっ、よっくん帰るか!」


「あらっ?お金は?」


「わしが誘ったんじゃけえ、いらんよ。」


マジか・・


「ごちそうさまでした」


オヤジと別れて気がついた・・・


いったい誰じゃんたん?いまのオヤジは?


名前聞くの忘れとったわ(汗)



しかし、数日が過ぎ、また再会することになる。


「おお、よっくん!また付き合ってくれぇや!」


「いいんですか?」


「ええよ、ええよ、行こうや!」


また前の店か?


と、思ったら違う・・・


料亭だ(汗)


こんな所、来たことないし・・・


メニューみたいなものを渡され


「好きなもの頼みんさい!」


好きなもの・・


ん~


メニューに書いてある料理がどんなものか分からんし(汗)


いかん、居酒屋メニューしか見たこと無い私にはお経のように見えてしまう。


「メニューに書いてある意味が分からんです!」


「はっはっはっ!そうか!

女将を呼んで説明さすけえ、待ちよりんさい!」


女将!?


すごい・・・


着物姿の女将が部屋へ入ってくる。


「まあ、この方が社長さんが言うてた方なんですの?」


「ほうよ、面白い男よ。」


なんじゃ、この会話は・・・


わしの話を前にもしているような感じだな。。。


「女将、次からよっくんが一人で来たら

タダで食わせてやってくれえの」


「分かってますよ」


「いや、それはちょっとやめてください。申し訳ないし、理由も無いですから!!」


「はっはっはっ、ええよ、ええよ、その感覚は正しいが

わしの好きでやりよるんだから、ええんよ。」


うう・・・強引な人じゃなあ・・・


「よっくん、世の中の美味しい料理には、世間でいう成功者のオーラを発している人間が集まるんよ。

まだまだ、あんたの知らない料理、それに集まるあんたの知らない大きい人間がおる。

それをわしが見せてやる。」


なんなんだ・・このオヤジは・・


わしは普通のサラリーマンで・・・


現場監督なんで・・話したじゃん・・


なんか勘違いしとるで・・・


てか、この料理うまい!!!


こんな感じでオヤジとの付き合いが始まる。


この付き合いは、この過去への漫遊の衝撃のラストシーンまで続くのであった・・・・



入社3年目の夏のことであった・・・

続く・・・


「戦国、新入社員が今日からjだから」


入社から丸2年が経った、3年目に突入だ。

その新入社員が3階の土木部に入ってきて・・

第一声は・・

「あ~働きたくないな~」




おもしろいのが入社してきたなと思った。

働きたくない?

どういうこと?


「こいつのオヤジの会社はうちの下請けのS工業なんよ。

オヤジが私のとこへ頼みに来てなぁ。

うちの坊主を鍛えてやってくれんかって。」


なるほど、二代目を信頼できる会社に預けて勉強させる。


よく聞く話だ。


専門学校を卒業して、1年間ブラブラとパチンコ屋のサクラなどして遊んでいたのを、オヤジが我社へ引きずってきたってことだな(笑)


「朝は何時からですか?」


そう聞かれたので私が8時と答えると


「ええ~!?起きれるかなぁ」


ええ~?うちの激務に耐えられるんかな(汗)


現場監督の仕事は朝が早い。


朝7時30分には現場事務所へ到着して、下請会社や交通誘導員がくるのを待つ。


夕方は定時は5時なんだけど、現場が5時に終了するわけだから・・・


それから現場事務所の片付け、明日の段取り。


それから会社に戻り、報告やコピー関係の雑務をする。


帰宅時間はどうしても8時か9時になる。


この坊ちゃんにそれができるのだろうか・・・


課長の指示で、この坊ちゃんはS主任の下につくことになった。


S主任は大手ゼネコンにいた人で転勤が嫌で、その会社を辞めて我社に入ってきた人だ。


大手ゼネコンにいた人間が我々のような地場ゼネコンに来ると使いものにならない(笑)


大手ゼネコンの現場は大きくて何人もの職員がついて現場を動かす。


だから知識も技術の中途半端なのである。


安全管理に関しての知識のみ突出したイビツな現場監督に成長してしまう。


地場ゼネコンは2億以下の現場だと1人の現場監督がこなす場合が多く全て一人でやらなくてはならない。


工程管理:工程表を作成し現場の完成までを采配する。


品質管理:使用される資材のチェック、規定の品質基準をみたしているかどうか。


労務管理:作業員をどう動かすか、現場内に入場してくる作業員の管理。


安全管理:現場で事故の無いよう、安全対策を考えて実行する。


予算管理:現場で動く全ての金を把握する。いかにして会社に利益を残すか?

この予算管理が現場内で最重要だといえるだろう。


これを地場ゼネコンの監督は一人でこなす。


S主任も最初は苦労したようだった。


知識においては大手にいただけあって豊富なものがあった。


だが、頭が良すぎて人に教えることを苦手にしているのが見てて分かっていた。


そんなS主任に、この坊ちゃんを・・


課長の意図が分からなかったし、良い結果にならないと私は思った。


結果は2ヶ月後に出た。


悪い結果として・・・


「おい、ちょっとこいや」


課長が坊ちゃんを呼び


「全然、日報が出とらんじゃん、どういうことや。

Sから聞いてないんか?もう何回も言うとるでSに」


「え?聞いてませんよ」


「毎日、何しよるんか?ちょっと言うてみいや」


「え?何も・・・下請けの手伝いしてますよ

パイプ持ったり、コンクリート打ったり・・・」



「はぁ?なんで下請けの手伝いせにゃならんの?」


やること無いんなら下請けを手伝えってSさんが・・」


「やること無いわけ無いだろ!うちは作業員の会社じゃないんで!

戦国!ちょっとSを呼べ~や」


ラジャー!


S主任が会社へ戻ってくる。


「お前、Sになんで作業させるんや!

土木作業員の教育ならお前に預ける必要ないんよ!

現場の施工管理を教えるためにお前につけとるんど!

なにを考えとるんか?」


「教えたんですけど、なかなか言ったとおり覚えないので・・・」


つまらん男じゃ、こいつは・・


「それを教えこむのが、お前の仕事だろうが!

お前は会社からこいつを預かっとるんど!

こいつに教えて無いってことは、お前は仕事を全くやってないのと同じど!」


思えばDくんも同じことを私にやってたなあ。


確かに自分の仕事をやりながら、人に教えるのって大変なのは大変なんだけど・・・


その人間がどんどん育っていったら楽しいと思わないんだろうか?


苦手だから、とか、なかなか覚えないからとか関係ないじゃん。


ちょっと感覚にズレがあるんだな。


まてよ・・


課長はS主任が人に教えるの苦手と分かってたはずだ・・・


だから、あえて下につけたのか?


苦手を克服する企画だったのでは?


結果、失敗ではあったが、そういう意図があったはずだ。


それにS主任が応えられなかったってことだな。


人に教えるってことは案外難しいことなのかもしれないな・・・


と、大学受験で国立の教育学部を受験し見事に落ちた

教員志望だった若き日の戦国みつをは思うのだった・・・


続く・・・