丸刈りにした翌日、ニット帽被って実家へ。

どうしたん?
と聞かれる前に口を開く。

私、ケア帽子を脱いで
「とうとう脱毛きて、丸刈りにしてもらってん。似合うやろ?」

「……そうなんか……でもまた生えてくるんやろ?」

「抗がん剤が終わったら生えてくるよ」

少しの間、なんともいえない表情だった母が
「ちょっと、触らして!」
私の頭に手を伸ばしてくる。
背の低い母が触りやすいように、私は椅子に座った。
グリグリ、ジョリジョリ、母は私の頭をなで回す。
「そや、そや、あの子らの頭もこんな手触りやったわ」
母のいう「あの子ら」とは、自分の弟達の事だ。つまり、私の叔父さん。
「あの子らの頭も、こうやって触ってなぁ」
と、ちょっとだけ昔話を。
でも昔話をしながら、どんな思いで丸刈りの娘の頭をナデナデしたんだろう。
ガンになった上に、薬でハゲになろうとしてる娘。
そういえば、母とのスキンシップなんて何年ぶりだろう。

ひねくれ者の娘は、ただ
「そんなん、ええよ」とか
「知らんがな」とか
「どうでもエエんちゃうか」とか言ってしまいます。

分かってんねんけど、ゴメンな……
と、あえて明るく接してくれてたであろう母に心の中でつぶやくだけでした。