前回の「40. 悲しすぎる祝福二世の脱会理由」で紹介した「祝福二世」という書籍の中で、著者の宮坂日出美さんが叫んだ以下の言葉が私には印象的でした。

『私たち祝福二世は、「ニュータイプ」なんかではない。「原罪がない」なんてとんでもない。普通の脳みそや、普通の精神、人並みの良心しか持ち合わせていない、ありきたりの存在にすぎないのだ。たとえ教義上どんな定義になっていようが、実際にはそうではないことは、「祝福二世」と呼ばれる当の私自身がよくわかっている。』

こういう心境を抱く祝福二世は少なくないと思います。

幼い頃から親からこう言われ続けたのでしょう。

あなたは神の子だ、

普通の子とは違うんだ、

神の子らしく生きなさい。

しかし思春期を迎えると、

自分は周りの友達と何が違うんだ。

自分にも憎しみや怒りや嫉妬がある。

神の子って、なんなんだ、

自分はいったい何者なんだ。

成人する頃には

これが自分の人生なのか、

他に生きる道は無いのか。

これは祝福二世がいつか直面する場面だと思います。

そういう時に宮坂さんは、『神との対話』という書籍に出合ったようです。

そして、この出会いが統一教会からの離教の第一歩になったと書いています。

ひと言でいえば、統一教会の教えに固執する理由がないということに気づいたそうです。その時の気持ちを書籍から一部、転記します。

『いくつかのきっかけから、統一教会の信者でありつづけることに対して私は疑問を抱きはじめていたのだが、この本を読むことで、少なくとも以下のことには得心がいった。---「統一教会が正しいか間違っているかを検証し、間違っていれば離脱する」というプロセスは必要ない。

間違っているかどうかではなく、自分にふさわしいかどうかが大事なのだ。何を信じるかは「自分に合うかどうか」で決めていい。たとえ統一教会側が「あなたに合うか合わないかの問題ではない。絶対に正しいのだから離脱してはいけない」と言ってきたとしてもだ。

この『神との対話』という本は、このようにして、統一教会の教えから私を解放してくれた。それに盲従する必要はないし、離脱したければ離脱して構わないのだとこの本が思わせてくれた。』

二世（一世もだが）は他にも『シルバーバーチの霊訓』などスピリチュアル系の書籍に影響を受けているという事は知っていましたが、私自身はそういう方面はあまり興味がないので、これまでその種の本を読んだことがありませんでした。

ただ今回は『神との対話』の何が、そこまで宮坂さんに影響を与えたのか、そこに深く興味を持ったのでこの本を読んでみることにしました。『神との対話』は三巻で構成されていますが、まずは第一巻をamazonから購入しました。

著者はニール・ドナルド・ウォルシュという全く無名の人です。自分の人生の不満を手紙で神にぶつけていたらある日、自動筆記という形で神様から応答があったというものです。

思った通りうさん臭い話だと思いましたが、ここで（16メージ目）本を閉じるのはまだ早いだろうと思い、もう少し読み続けることにしました。

読んでみると意外に統一原理の創造原理と重なる部分が多いと感じました。「神との対話」に登場する神（以後、対話の神）は人間を創造した目的をこのように語っています。

『あらゆる生命の目的はひとつしかない。あなたがた、そして生きとし生けるものすべての目的は、できる限りの栄光を体験する、ということだ。話したり、考えたり、行動したりするのもみな、この目的のためだ。魂がすることはほかになく、魂が望むこともほかにはない。

この目的のすばらしいところは、決して終わりがないことだ。終わりとは限界であり、神の目的にはそんな境界線はない。できる限りの栄光を体験できたら、その瞬間にもっと偉大な栄光を想像するだろう。栄光を体験すればするほど、もっと大きな栄光の可能性が開けるし、その可能性が開ければ、あなたはさらに栄光を体験できるようになる。』

堕落前のアダムとエバに対して神様はそのように語っていたのではないかと私は思います。人間の責任分担についても統一原理とかなり近いものがあります。対話の神は次のように語っています。

『人生の環境や条件を創造したり、しなかったりすることは、神の働きではない。神は神の姿をかたどり、神に似せてあなたがたを創造した。残りは、神が与えた力によってあなたがたが創造したのだ。神は人生というプロセスと生命そのものを創造した。だが神はあなたがたが自由に選べる選択肢を、人生を好きなように生きる力を与えた。

その意味では、あなたがたの意思は、あなたに対する神の意志でもある。

あなたの生き方はあなたの生き方であって、わたしはそれを良いだの悪いだのと判断したりしない。』

これは人間の責任分担には神も介入できないという統一原理に似ています。

しかし統一原理との決定的な違いがありました。それは統一原理では原罪とサタンが存在するのに対し、対話の神は人間には原罪は無いし、この世にはサタンはいないということです。対話の神は悪魔、サタンについて次のように語っています。

『神は、愛が存在するためには──そして純粋な愛である自分を知るためには──対照となるものが存在しなければならないことを知っていた。正反対のものが存在する必要があった。そこで、神は偉大なる極──愛の絶対的対極にあるもの、愛ではないあらゆるもの──を創りあげた。それが現在、「不安」と呼ばれるものだ。不安が存在した瞬間、愛もまた、体験しうるものとして存在しはじめた。愛とその対極、この二元性が、人間のさまざまな神話で言われる悪の誕生、アダムの堕落、悪魔の反抗などである。あなたがたは、純粋な愛を人格化して神と呼び、恐るべき不安や恐怖を人格化して悪魔と呼んだ。地上のある者は、この出来事を中心とした神話を完成させようとして、天使軍と悪の戦士、善の力と悪の力、光と闇の戦いのシナリオをつけ加えた。』

悪の誕生、アダムの堕落は、不安や恐怖の感情から人間が作った神話だと言う。

そうすると私（仙台五郎）にも疑問が湧きます。

では人間の悪なる感情はどこから来たのか。

対話の神はそれも愛の中に含まれると説きます。

なんともこの妙な説には首をかしげます。

愛について対話の神は、愛を色に例えこのように言っています。

『完璧な愛とは色のなかの完璧な白のようなものだ。多くのひとは白とは色がないことだと考えているが、そうではない。あらゆる色を含んでいるのが白だ。白は存在するあらゆる色が合体したものだ。

だから、愛とは感情—憎しみ、怒り、情欲、嫉妬、羨望など—がないことではなく、あらゆる感情の総和だ。あらゆるものの集合、すべてである。』

憎しみ、怒り、情欲などは堕落により生じたものではなく、始めから神様が愛と一緒に人間に与えたものだという。それは愛を知ってほしいためだという。そして愛によって憎しみ、怒り、情欲などの負の感情は包み込めると言う。

うーーん、そうか、わかる気がする。

憎しみ、怒りがあるから私は愛を知ることができるんだ。敵対する相手の怒りにも神は宿っているんだ。誰の、どの感情にも神は宿っているんだ。

そう思えば、どんな相手でも最後には分かち合えるかもしれない。

これを理解した時に、私はなんて素敵な神様だろうと思いました。そして自分にはこういう考え方の方が合うと思いました。

こういう考えは、悪の感情は人類始祖の堕落によって偶発的に生じたとする統一原理とは相容れない。しかし対話の神は人間の判断に良いだの悪いのだの判断しないという。

ならば私も統一原理が間違っていると言うのはやめよう。自分を堕落人間だと思って自己否定しながら生きることに幸福感を感じる人はそういう生き方をすればいい。それもりっぱな生き方だ。

だが私はそういう生き方に幸福感を感じなかった。

だから私は統一教会をやめたのだ。

自分の体験からくる確信を信じる。

統一教会で過ごした１４年間もいい経験だった。

今は誰の許可も得ずに全て自分の判断で生きている。

それで自分の人生は充実している。

それが私にとってふさわしい生き方なのだ。

宮坂さんが言った、

『間違っているかどうかではなく、自分にふさわしいかどうかが大事なのだ。何を信じるかは「自分に合うかどうか」で決めていい。』

ということがようやくわかってきた。

対話の神は、人間の創造目的を非常にわかりやすく語ってくれます。

ゆえに自然とこういう気持ちが湧いてきます。

私は神から与えられた創造力をいかんなく発揮すればいいのだ。

そのために新たに自分を発見する必要はない。

誰かの救済を待つ必要もない。

すでに私にはその力があるのだ。

あとはなりたい自分になるだけだ。

なんとも言えない勇気と希望を与えてくえる神様です。

宮坂さんによると『神との対話』は祝福二世の間では結構読まれているようです。

この書籍を読んだ祝福二世は、本当の神の子とはこういうことだったのかと気づいたのでのはないでしょうか。

この『神との対話』という書籍は、原罪もない、サタンもいないということですので、分派を含む家庭連合にとって危険極まりないな書物です。

では家庭連合の現役信者からみて本当に危険な書物なのか。

面白い（と言っては失礼だが）ことに、これを全巻熟読して、自分の信仰に生かしている方がおられます。

そのお方は、このブログ村ではお馴染みの「まるくまーる（旧・教育部長の講義日記）」のkitasendoさんです。

驚くことに連載になっています。ブログに入り、「神との対話」でブログ内検索をすると全ての内容が出てくるようです。

全て読んでみましたが、教養があるだけでなく、自分の宗教と教えの内容が違っていても良いものは取り入れようとする姿勢に頭が下がります。

どの記事もすばらしいのですが、その中でも特に私が納得した３つを紹介させていただきます。（クリックでジャンプします）

神は「善の神」か

観察する神

神の真実に対する誤り

私はこれから第二巻、第三巻を読んでいきます。

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41. 祝福二世を解放した『神との対話』