まずは時系列を説明します。

この夫婦は不妊治療を行いようやく子を授かることができました。

しかし、妊娠前から些細なこと口論を繰り返していました、夫は離婚すると決めた状態で何故か不妊治療には協力していたのです。

これが、この先で大きな争いの種になるとは思ってもいなかったのでしょうか・・・？

子を妊娠し、その後の生活は仲が良かったり喧嘩をしたりの繰り返しであったが、ある時、夫が”冷静になるためにも一度、実家に帰ってくれないか”と提案し、一時的なものという話であったため妻は承諾し実家へ帰省した。

しかし、実は夫は一時的なものとは考えておらず、離婚を前提とした別居をすることを目的に、騙し妊娠している妻を実家に帰したのでした。

その後、夫から離婚要望書ならぬ妻への否定かつ中傷が書かれた書面が届きました。

内容を要約すれば、全て妻が悪い、妻を愛してはいない、そして妻の母親が語った子どもの為になら親は何でもするという発言は脅迫であり、殺されると思った。というものであった。また、妻の実家に行った際は苦痛であり、妻母から殺されると感じていたというのである。

この書面については、当所のヒアリングにおいて夫本人が離婚する際の書面はこれぐらい書いて当然だと思いかいたが、妻が悪いように曲解し書いたと答えた。その際の両者同席の面談においても、妻の前で書面の経緯について話した際もそのように答えていた。

両者性格の歪みに気付き、今後どのようにするのかという選択において話し合いを行った。

夫は”子供には会わなくてもいい”　"養育費は払う"　”望んだ子供ではない”　”子に愛情は無い”と答えた。

これを聞いた妻が”我が子を何だと思っている”　”別れようと決めていてなんで不妊治療に同意した”　と語った。

この会話を聞いて私は、妊娠はさせるが相手には言わずに自分は離婚の準備を進める、夫婦間において、これほど無責任で非人道的行為は他にはない。そう感じました。

妻が、せめて子供に父親を教えてあげたい、離婚するにしても父親として子供に接して欲しい、捨てられたと（辛い思い）は思わせたくないと語った。

この話し合いは平行線で終わり、次回、両家面談に移行となった。

両家面談当日、時間通りに両家が現れた。

ミーティングルームに案内し、時系列の説明を私が行い、両者の意見と両家両親の意見の交換を行うに至った。

その際、夫側の父親は、謝罪しやり直したいという話ならばまだ分かるが、息子が無責任だ等の話なのでは婚姻継続はできないので離婚した方がいいと答えた。夫側母親に意見を尋ねたら同意であるとのことであった。

妻側母親が確かに、同居中に妻が夫に対し強い口調で物を言ったり共有財産の一部を使った（被服費や雑貨の購入）かもしれない、しかし、愛する妻が必要な物を購入したことが理由で離婚することを決めて妊娠させ突然、離婚を言い渡すというのは常識的に理解できない、また、自分の子供に対し、望んだ子供ではないなどという事を言うものではない、子供に謝れと荒げた。

妻は夫が我が子を大切に思って欲しい、このまま離婚したら子供は父親から愛されていないと感じ育つであろう、そんなのは可哀想すぎると考え夫に対し、自分の子供が可愛いと思わないの？望んだ子供じゃないって本当なの？と何度も尋ねるが、夫は望んだ子供ではない、愛情は無いと答えた。また、夫が作成した離婚要望書に書かれた内容については、離婚するために曲解したことを認めた。

この、一方的に妻に非があるという内容が曲解であると認めたことで妻は、夫が最低限度の父親としての認識と今後、継続的な面会交流を行えることを約束してくれれば離婚も同意するとのニュアンスで返答した。

終わり間際、夫側母親が、仕事もあるし私たち（両親）はいないとダメなんですか？と質問した。

私はいた方が穏便に話が出来るのではないでしょうかと返答したが、ハッキリ言えば、息子がこのような非情な行為を行い無責任にも我が子を捨てようとしているのだから、せめて親ぐらいは親らしく真摯に受け止め、誠意をもって対応しなければならないのではないでしょうか？と言いたいところでした。

この回での両家面談は時間に達し2回目の両家面談に突入した。

前回の話の流れで行けば、夫が最低限度の父親としての認識と今後、継続的な面会交流を行えることを約束してくれれば離婚も同意すれば話は10分程度で終わると思われた。

しかし、夫は前回の発言を撤回し、あの書面に書いたことは本心であると答えた。

普通に考えて自ら離婚できないような、紛争になるような発言をする姿に驚きを隠せなかった。

何故、今回で話がまとまるのに、夫は終わらせようとしないのか？不思議でならなかった。

妻が、前回はあの書面（夫作成の離婚要望書）は本心ではないという話だったので、私も考え離婚に応じなければとならないかと考えていたが、あなたがそういうならば離婚には応じませんと言った。

また、夫が語った”親は子のためにならば何でもやる”の言葉は脅迫で殺されると本当に思った。との発言に対し妻側母親が”あなたはうちに遊びに来てご飯を食べて笑顔でいたのに、本当に殺されると思っていたの？”　”殺されると思いながらあなたはご飯を食べれるの？”と言った。

夫は”はい、そうでうね”（殺されると思いながらご飯を食べれる）　”あの時は本当に殺されると思いました”と答えた。

妻側母親は呆れる口調であなたという人がどんな人かよく分かりましたと言った。

夫側母親は前方一点を見つめ不満そうな表情で終始無言であった。

結局、この回は夫自らが振り出しに戻してしまい、妻の要望である3か月ほど冷静に考える期間を置くこととなりました。

このようなケースでは”人の心や命の大切さ、人の人生、痛みについて気付かせ”なければ、こういう人（夫）は変わらないのです。

実録：子を捨てる親たち（２）