無断欠勤です

 

これまでの放浪生活では雇用側の関係者が必ず寝泊まりする所に居たので

無断で休む事は出来ませんでした

ですが此処では寮は一般的なアパートで派遣会社の担当や関係者は居ません

 

昼頃に目を覚まし終日ボケーっと過ごしていました

何故か担当者も部屋に来る事も無く夜を迎えました

不思議には思いましたが課長が派遣会社に連絡していない可能性が考えられました

 

工場から派遣会社に連絡が無く派遣の担当が工場に足を運ばなければ勤務の出欠は

判りませんもちろんタイムカードが有りましたので後日には明らかに成りますが

 

もう休んでしまったので考えても無駄だと思い明日はどうするか悩みました

子供じみた言い分で休んだ訳ですから出勤するのも抵抗が有ります

かと言ってこのまま荷物をまとめて出て行くのも勿体なく思えました

 

翌朝出勤時間に起き工場へと向かいました

グループの集合場所に行くと班長が笑いながら肩を叩いて朝の挨拶をかけて来ます

照れくさくも予想以外の和やかな雰囲気に少し安堵しました

 

やがて課長が来て自分を見ましたが笑っておはようと言ってくれました

朝礼が終わり課長の元に行き無断欠勤の事を誤りました

困ったもんだと言って苦笑いを浮かべ事務所に戻って行きました

 

グループのメンバーは特に会話は有りませんでしたが自分の代わりに成った社員に

ごめんねと謝り休憩時間にコーヒーを差し出します

時々会話していた社員でしたので笑って許してくれました

 

通常通りの仕事が終わり工場の公衆電話で派遣の担当に連絡をしました

案の定課長からも連絡が無く欠勤は知らなかったと言う事でした

次回は連絡をお願いしますと注意されますが声は少し笑っていた様に聞こえました

 

そして数日が過ぎ又給料日が来ました

何度繰り返したのかと月日を数えて見ますが意味は無い様に思えます

変わる事無く土日にパチンコ屋へと向かいました

 

放浪が始まってから随分に成りますが本当に勝つ機会が少なかったと思います

何も反省する事も勝つ為の努力もしないので当然と言えば当然なのですが

 

数年を繰り返せば嫌に成るのではと思われるかも知れませんが

人は嫌な事は余り思い出しませんが良い思いは直ぐに脳裏に過ぎってしまいます

依存者が現金を手にした瞬間は良い思いが脳裏を支配し快楽へと導くのです

 

あんなに寒かった此の地の冬は終わりを告げる強い風が吹き抜けて行きます

自転車で走る道路もすっかり春の景色に変わろうとしていました

変わらないのは何も考えず一時の快楽に身を投じる自分だけです

 

行っては負けて日払いで生活し次の給料日を只々待って仕事をする毎日

放浪が始まった時に初めて仕事をさせてくれた会社以外は普通とは縁遠い所でした

 

退院後に自分の今後を考える最後の機会に逃げ出す事を選び再び放浪して

偶然見つけた派遣の仕事の待遇の良さに考える事を放棄し惰性で生活してました

 

普通と呼ばれる環境で人並みに対応して貰い自身も勘違いをしていました

勘違いと慣れで仕事を休んだり無断欠勤までしてしまいます

此れからの人生など一欠けらも考えていませんでした