それは11月の寒い日のことだった。既に日は落ちて、家々の灯りもおちる時間。一人の男がおぼつかない足取りで、闇の中を歩いていた。男は時折地面にうずくまっては立ち上がり、またうずくまっては立ち上がりを繰り返しながら、ゆっくり、着実に歩いていく。男は誰にともなく呟く。
「寒い…」
言葉は白い息と共に闇の中へ消えた。
「マジで言ってんすかw」
「もう無理ですってばwww」
「すみませーん、唐揚げひとつー!」
ほんの数時間前、宴が開かれていた。久しぶりの酒に文字通り酔いしれた男は、時間も仕事も、壊れた携帯のことも、何もかもを忘れて最大限その時間を楽しんでいた。勧められるままに杯を預けては一気に煽り、その様はまさに酒池肉林。
さて、結果は見ての通り無残なものである。二次会にと店を移ったは良いものの、体は悲鳴をあげている。朦朧とする意識の中、腹の底からこみ上げる何かと必死に戦いながらどうにか乾杯は乗り切ったものの、その後すぐに御手洗いへと駆け込むやいなや激しく嘔吐。ついには席へ戻ることも適わず、気がつけば店の外だった。仲間に背中をさすられながら二度めの嘔吐の後、押し込まれるようにしてタクシーに乗せられた。
「どこまで?」
その問いに必死の思いで自宅の住所を告げようとするも、頭が働かない。気がつけば見知らぬ土地に立っていた。
季節は秋。北の大地の秋の夜は、手足が痺れるほどの冷気に満ちていた。男はぐるぐると回る視界の中、眠気の誘惑に襲われながら、しかしその冷気によってどうにか意識を保つ。
「寒い…」
何度となくそう呟いては歩き、うずくまり、また歩き…。
次に男が気付いたのは、吐瀉物にまみれた、自分の布団の中だった。どこを歩いたのかも覚えてはいなかったが、とにかく、家へ帰れた事実に安堵して、男は眠りについた。
Xperia arcからの投稿
「寒い…」
言葉は白い息と共に闇の中へ消えた。
「マジで言ってんすかw」
「もう無理ですってばwww」
「すみませーん、唐揚げひとつー!」
ほんの数時間前、宴が開かれていた。久しぶりの酒に文字通り酔いしれた男は、時間も仕事も、壊れた携帯のことも、何もかもを忘れて最大限その時間を楽しんでいた。勧められるままに杯を預けては一気に煽り、その様はまさに酒池肉林。
さて、結果は見ての通り無残なものである。二次会にと店を移ったは良いものの、体は悲鳴をあげている。朦朧とする意識の中、腹の底からこみ上げる何かと必死に戦いながらどうにか乾杯は乗り切ったものの、その後すぐに御手洗いへと駆け込むやいなや激しく嘔吐。ついには席へ戻ることも適わず、気がつけば店の外だった。仲間に背中をさすられながら二度めの嘔吐の後、押し込まれるようにしてタクシーに乗せられた。
「どこまで?」
その問いに必死の思いで自宅の住所を告げようとするも、頭が働かない。気がつけば見知らぬ土地に立っていた。
季節は秋。北の大地の秋の夜は、手足が痺れるほどの冷気に満ちていた。男はぐるぐると回る視界の中、眠気の誘惑に襲われながら、しかしその冷気によってどうにか意識を保つ。
「寒い…」
何度となくそう呟いては歩き、うずくまり、また歩き…。
次に男が気付いたのは、吐瀉物にまみれた、自分の布団の中だった。どこを歩いたのかも覚えてはいなかったが、とにかく、家へ帰れた事実に安堵して、男は眠りについた。
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