「ストレス社会」と言われるように、誰しもストレスを感じながら生活していることと思います。適度なストレスは作業効率を上げますが過度のストレスは心身に問題をきたし、最近ではうつ病が社会問題にもなっています。しかしながら、同じ社会で生きながら意気揚々と生活している方々も多くいらっしゃいます。その違いは何なのか。そこに焦点を当てているのがこの本です。

 まず、本のタイトルにもなっている「レジリエンス」とは「精神的な回復力」を意味します。ストレスに弱い人、強い人の違いは、この「レジリエンス」が備わっているか否かによるそうです。ストレスに弱い人は、立ち直れないからそのまま潰れてしまう。失敗を恐れるあまり行動しない。まさしく今の私がそうです。やらなければならないこと、自分がやりたいことからさえも逃げていては、豊かな人生が送れるはずがありません。

 では、どうすればストレスに強くなれるのか。著者の体験を踏まえて具体的に説明されています。まずは、精神的な落ち込みから抜け出すこと。自分の中にある「思いこみ」を自覚して手懐けること。次に自信を科学的に身に付け、現在の自分の「強み」を発見すること。そして、逆境から意味を学び、成長すること。ここに書かれている内容はただの精神論ではありません。また、ネガティブを否定するわけでもありません。ネガティブな部分も含めてどう向き合っていけばよいのか、等身大の自分を冷静に見つめる手助けをしてくれる本であり、小さくても一歩を踏み出すために背中を押してくれる本です。

 「レジリエンス」は誰にでも鍛えられるものであり、また「強み」も誰にでもあるものだと強く断言されているところに何より勇気づけられました。一朝一夕で身につくものではないので根気がいるかもしれませんが、例えば「感謝日記をつける」など今日からでもすぐに取り組める内容も多いです。マイナスな「思いこみ」に束縛されるのは本当に辛いことです。いろいろ試して自分はこういう人間なんだと、もう無理だと思っている方もいるでしょう。ですが、諦める前にこの本を一読することをおすすめします。斯く言う私もまだ精神的落ち込みから抜け出す段階でもがいているところですが、誰にでもできるのだという言葉を信じ、何度でも読み返して「レジリエンス」を鍛えていきたいと思っています。

 先日、ストレスチェック制度が導入されましたが、うまく機能するかは兎も角あくまで対処療法にしかならないでしょう。潰れてしまう前に手を差し伸べることも重要ですが、これからは「レジリエンス」こそが社会に必要であり、根本的な対策として有効なのではないかと思われます。私のように悪循環から抜け出せずに困っている方はもちろん、特にこれから社会という壁にぶつかるお子さん、学生に読んでいただきたい一冊です。





世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方/久世 浩司

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