赤道を横切る | ALL-THE-CRAP 日々の貴重なガラクタ達

赤道を横切る

私の祖父、三巻俊夫は、1936年(昭和11年)の10月から11月にかけて45日間の南洋視察旅行をしています。貨客船鳳山丸を仕立て、参加者80名の団長として、現在のベトナム、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピンを巡る旅でした。大変な筆まめであった祖父は、その旅行記を翌1937年の7月に台湾新聞社から『赤道を横切る』と題して出版しています。

昭和11年という時代を今いちど思い返せば、二・二六事件が起こり、社会が不穏な動きを見せ始めた年です。それから5年後には太平洋戦争に突入し、9年後には敗戦をむかえることになります。祖父は大学卒業から40年、台湾の発展に身を捧げ、自ら栄達を遂げましたが、名誉も地位も富もすべてを失って、日本に引き揚げることになるのです。

今、『赤道を横切る』を読み返せば、大らかで楽天的でユーモアと余裕に充ちていることに驚きすら感じます。9年後に自らを襲う過酷な運命など知る由もなく。

そこに人間の強さと儚さを知りますし、それから80年を経た平成の浮世に、不気味な相関図が見え隠れするのです。

これから、『赤道を横切る』を読み進めていきたいと思います。