「失われた大陸」という言葉は、私たちの想像力をかき立てる神秘的な響きを持っています。これには大きく分けて、伝説上の大陸と、科学的に実在したと考えられている大陸の2種類があります。
1. 伝説上の失われた大陸
世界各地には、かつて栄華を極めた高度な文明が、一夜にして海中に没したという伝説や神話が数多く存在します。これらは、大洪水や地殻変動といった大規模な災害の記憶が元になっている可能性も指摘されています。
代表的な伝説上の大陸:
* アトランティス大陸:
* 古代ギリシャの哲学者プラトンが著書『ティマイオス』と『クリティアス』で言及したとされる伝説上の大陸です。ジブラルタル海峡の彼方に存在し、高度な文明を築いていたが、ゼウスの怒りに触れて一夜にして海中に没したとされています。
* その実在については、古くから多くの議論が交わされてきましたが、科学的な証拠は発見されていません。しかし、多くのフィクション作品の題材となり、人々の想像力を掻き立て続けています。
* ムー大陸:
* 19世紀にイギリスのジェームズ・チャーチワードが提唱した、太平洋に存在したとされる伝説上の大陸です。彼はインドの寺院で発見したとされる古文書を解読したと主張し、ムー大陸はアトランティス大陸よりもさらに古い高度な文明を持っていたとしました。
* しかし、その解読の信憑性や学術的な根拠は薄く、現在では伝説として扱われています。イースター島やポリネシアの島々をムー大陸の名残とする説もありましたが、決定的な証拠はありません。
* レムリア大陸:
* 19世紀にイギリスの動物学者フィリップ・スクレーターが、インド洋に生息するキツネザル(レムール)の分布を説明するために仮説として提唱したものです。インドとマダガスカル島を結ぶ架空の陸橋と考えられましたが、後に大陸移動説によって否定されました。
* しかし、神智学協会など神秘思想の世界では、ムー大陸と同様に古代の高度な文明が栄えた場所として、精神的な側面で語られることがあります。
* メガラニカ大陸(テラ・アウストラリス・インコグニタ):
* これは純粋な伝説とは少し異なり、大航海時代以前のヨーロッパで、地球の南半球にバランスをとるために広大な未発見の大陸が存在すると考えられていたものです。「知られざる南の大陸」という意味を持ちます。
* 後の探検によってオーストラリア大陸や南極大陸が発見され、その多くが解明されましたが、それ以前は神秘的な存在として多くの地図に描かれていました。
これらの伝説は、最終氷期終了時の海水準上昇(約100m以上)によって、かつての海岸線や沖積平野が水没した記憶が、口伝によって「失われた大陸」の伝説として残された可能性も指摘されています。
2. 科学的に実在したと考えられている大陸
プレートテクトニクス理論の発展により、地球の地殻は絶えず移動しており、過去には現在とは異なる大陸配置であったことが分かっています。この中で、「失われた大陸」と表現されるものがいくつか存在します。これらは、伝説とは異なり、地質学的な証拠に基づいてその存在が示唆されています。
* ジーランディア:
* 近年、特に注目されている「第8の大陸」とも呼ばれるものです。現在のニュージーランドやニューカレドニアを含む広大な陸塊で、その約94%が海面下に沈んでいます。地質学的特徴から、独立した大陸であると認識されています。
* 約8500万年前に、超大陸ゴンドワナから分裂し、大部分が海面下に没したと考えられています。
* 大アドリア大陸 (Greater Adria):
* 約1億2000万年前に、現在の南ヨーロッパの下に沈み込んだとされる大陸です。新しい研究によってその存在が明らかになりました。この大陸の最上層は、現在のアルプス山脈をはじめとするヨーロッパの山脈を形成したと考えられています。
* その深部は、現在ギリシャの地下約1500mにあるとされています。
* パンゲア大陸などの超大陸:
* これは「失われた大陸」というよりは「過去の超大陸」という表現が適切ですが、約3億年前から1億8000万年前まで存在したとされる巨大な単一大陸「パンゲア大陸」も、広義には「失われた大陸」と言えるかもしれません。パンゲアはその後分裂し、現在の大陸配置となりました。