「がさごそ……ぺた…… がさごそ……ぺた……」 | |
「望美ちゃん、なにしてるの?」 | |
「『se・きらら』に熨斗つけてる」 | |
「え? ……な、なんで?」 | |
「? ……贈答品?」 | |
「贈答品とは、ちょっと違うような……」 | |
「まぁ、つけちゃいけないっていうことはないけど、リボンとかの方が、合うんじゃないかなぁ……とか。熨斗なんてわたしたちの世代じゃ普通思いつかないよね」 | |
「そんなこたぁない。優も私も、何度も何度もサブリミナルされている」 | |
「えっ!? ど、どこで!? わたし全然気づいてない……と思うけど」 | |
「常人には気づけないからこそサブリミナル」 | |
「お、おおぉ……」 | |
「まずはこれを見てくれ」 | |
「見た、けど……? え? オープニングテーマだよね」 | |
「……優はニブチン?」 | |
「あぅ……解説お願いします……」 | |
「ここ。1分15秒。 『se・きららをあなたにあげるよ』」 | |
「ふんふん」 | |
「そしてここ。この1分23秒」 | |
「うん。これが?」 | |
「『はじめて熨斗』」 | |
「? ……あ、いや、えーと、 これは『はじめてのシーン』って……」 | |
「『はじめて熨斗』」 | |
「うっ……そ、そうなんだ」 | |
「今こそ、我が人生における 『はじめて熨斗』の時」 | |
「『重なりだした未来』とは、これを受け取る人たちと私たちの未来が重なることを意味していたんだよ!!」 | |
「なっ、なんだってェー!!」 | |
「解説終了。作業再開」 | |
「がさごそ……ぺた…… がさごそ……ぺた……」 | |
「なにごともなかったかのように……さすが望美ちゃん」 | |
「がさごそ……ぺた…… がさごそ……ぺた……」 | |
「…………わ、わたしも、やっていい?」 | |
「優は熨斗つけるのはじめて?」 | |
「前に、ちょこっと手伝いでやったことが」 | |
「残念。経験済みに用はなかった」 | |
「なんか誤解されそうで ひどいよ望美ちゃんっ!」 | |
「? ……誤解? なにが?」 | |
「だ、だから、その……経験済みなんて言ったら、お、男の子と……とか想像が膨らむ人が……」 | |
「そんな妄想が膨らむのは優くらいだと思う」 | |
「うぐ……望美ちゃんのいじわる」 | |
「ならば、その道で未経験者であると私に宣言できたら、特別に手伝わせてあげる」 | |
「ッ――!? な、なんという理不尽な恩着せ……」 | |
「さぁ、どうする」 | |
「み、みみ…… みみみみみけーけんッ!!」 |
秋 史恭@脚本(*´Д`)