望美「私は船……希望の船」


真奈「ハァ? い、いきなりなに?」


望美「わからない?」


真奈「わかるわけないじゃん……ていうか、あんた常に理解不能だし。わかりあうことは諦めてる」


望美「そう簡単に望みを捨ててはいけない」


真奈「…………」


望美「望みを捨ててはいけない」


真奈「……それ、もしかしてダジャレ?」


望美「フヒ」


真奈「ヘンな笑い声で悦に浸るのやめろ。船だかなんだか知らないけど、ただの危ないヤツにしか見えないから、人前でやらないようにしなさいよ」


望美「もう手遅れ。優と亜矢と泉と……」


真奈「……じゃあ、あたしを巻きこむな」


望美「今夜、松戸の古ヶ崎からヒミツの船が出る。あんたみたいな恋に行き詰まった連中を集めて一夜限りのギャンブルクルーズよ」


真奈「……誰が行き詰まってるって」


望美「勝つことがすべてだ。勝たなきゃ――」


真奈「あーあーあー。みなまで言うな。映画見てきたわけね。わかりやすすぎ」


望美「見てない。だから声かけた」


真奈「連れてけっておねだりかよ!」


望美「むしろ私という船に乗りこんでれっつぱーてぃ」


真奈「意味わかんないし。どうやってあんたの中に入るのよ。ミクロの決死圏じゃあるまいし」


望美「古」


真奈「う、うるさいッ」


望美「女子が全員ラクエル・ウェルチばりのコスチュームを着るというのも悪くないけどそれ違う」


望美「エスポワールは希望という意味なんだって咲が言ってた。希望、それは望み。つまり、私は希望の船、エスポワール号」


真奈「解説された上でなおこの言葉を贈ってあげる。理・解・不・能。だいたい古ヶ崎じゃ江戸川だし。なんでそこだけリアルにローカルなわけ?」


望美「屋形船で川下りしながら東京湾に着くまでじゃんけん大会。勝った者が咲をげっと。負けたら裸踊りの上、地下王国送り」


真奈「マジで乗りこんで東京湾に沈めるぞ……」


望美「参加確定、と」


真奈「待て。別に行き詰まってないから」


望美「真奈は素直な気持ちを言えない病。診断、どん詰まり」


真奈「クッ……!」


望美「反論がない。図星のようだ。どう? 人生、逆転してみる?」



秋 史恭@脚本(;´Д`)