真奈「……はぁ」
――あんまん食べたい。
望美「へい、らっしゃい」
真奈「…………」
望美「へい、らっしゃい」
なぜ、秋山望美がここに……。
真奈「ていうか、ここどこ?」
望美「なかむらや?」
真奈「いや、外歩いてたし」
望美「空を見あげて色っぽい吐息と共にあんまん食べたいと」
真奈「人の心読むんじゃない!」
望美「恥ずかしがらなくてもいいよ? あんまんはみんな食べたい」
そういう問題じゃない……。
真奈「ていうかどっから蒸し器持ってきたのよ」
望美2「なかむらや?」
望美3「小料理屋ッ」
望美4「カイ屋!」
真奈「グル●プ魂かよ!」
望美「通じた……あなたが華左衛門か」
真奈「……グーで殴ってもいい?」
望美「それが照れ隠しの表明であるのなら受けとめるに吝かでない私がいる」
真奈「……もういい。あんまん食わせろ」
望美2「あい」
望美3「あい」
望美4「あい」
だからなんで増えるのよ……。
望美「さぁ、選びなさい。真奈の求めるあんまんは三つの中に一つしかない。残り二つはカリーまん」
真奈「別にカリーまんなんて食べたくない。心の声を聞いたなら普通にあんまんだけ用意しろ」
望美「キミはなかむらやのカリーまんを食べたことがあるか? なければ食べてから文句を言いたまへ」
真奈「寺山修司っぽく言っても食べたいのはあんまん」
望美「あたったら食べさせてあげる。さぁ選びたまへ」
真奈「クッ……」
三つの中華まんがズズイと差しだされた。望美が四人いるというこの悩ましい現実を……現実? いや、夢か。現実にしてはあまりにもおかしいところが多すぎる。夢なら納得……いや、納得はいかないけど。
真奈「これ」
望美4「くぱぁ……」
望美「残念。カリーまんだった」
真奈「じゃあこれ!」
望美3「くぱぁ……」
望美「残念。カリーまんだった」
真奈「うぅっ……じゃあこれっ!!」
望美2「…………」
望美「総あたりはあてたことにならないと思う」
真奈「っっ……なんなのよ! ただイヤガラセに来ただけか!?」
望美「そんなことない。日ごろの感謝をこめてあんまんを持ってきたというのに……」
真奈「あんまん! あんまん! もうあんまん食べないと気がすまないッ」
望美「はぁ……仕方ない。今日がなんの日か言えたらあんまんあげる」
真奈「今日? ……9月8日……」
望美2「く……」
真奈「く……?」
望美2「ぱぁ……」
真奈「え……まさか……くぱぁの、日?」
望美「ハイ正解」
望美2「くぱぁ♪」
望美3「くぱぁ♪」
望美4「くぱぁ♪」
(;´Д`)
秋 史恭@脚本