依は数学と体育の成績は10段階中10でした。

依は数学が、とりわけ数学の先生が大好きでした。

定期テストと小テストはいつも満点でした。

数学において満点以外を取ったことはありませんでした。

しかし他の教科はお世辞にもいいものとは言えなく、赤点がちらほらあり、赤点でなかった教科もギリギリのラインを回避しているような点でした。

故に、依の成績は総合的に見て決してよくありませんでした。

しかし、模試の成績となると数学は勿論のこと、国語や英語もほぼトップの成績を取っていたのです。

そんな彼女はいつも笑っていました。自らおかしなことをして皆を笑わせていました。

休み時間は大きな声で笑って、歌って、授業中は喋るか寝るかの二択でした。

とにかく、明るくて能天気で何も考えてなさそうで、なぜか模試だけ点数の取る子として皆には認識されていました。

私もそう認識していました。

彼女が死ぬまでそう思っていた子も少なくなかったのではないかと思います。

 

依は、高校一年生の一学期早々から「うち、何が何でも欠席しない!皆勤賞取る!風邪でもインフルでも絶対学校来る!」と、宣言していました。

そしてその宣言は、一年で最も長い2学期の終わりの数日前まで破られることはありませんでした。

 

あれは確か、12月18日のことでした。

依は学校に来ませんでした。先生にどうしたのか聞いてましたが「連絡はない。」の一点張りでした。

風邪をひいても学校に来る、と、宣言した彼女は今まで本当に風邪を引いても学校に来ていたので私は何かあったに違いない。

そう思いました。

その時はまだ、依と私は一番仲の良い友達というわけではありませんでした。

クラスの中で属すグループも違いました。

ただ、その割にはよく話したし、お互いのことを”これ”といって定義はできないけれど何かが確実に2人の間にはある、そんな関係でした。

だから、と言ったら誤解を招くかもしれませんが、私は彼女が心配で気がかりでその日はずっと落ち着かなかったのを今でも覚えています。

 

しかし、私の心配とは裏腹に依は次の日へらへらしながらいつも通り(に、見える)の笑顔で学校に来ました。

なので、私の根拠のない心配はどこかへと飛んで行ってしまいました。

いや、正確に、正直に言うと、私はその根拠の無い心配をどこかへ飛ばしたのです。

遠くへ遠くへ、もう見えないような所へ投げ飛ばしたのです。

「なーに休んでんさあ、風邪?」

何でこんな事言ってしまったんだろう。何で根拠が無いからって、心配するのをやめたんだろう。今からじゃ遅いのに、そのとき聞かなきゃだめだったのに。

あの時聞いてれば、依は今も生きていたかもしれないのに。

「うんそー!もー最悪!休まないって決めてたのにさあー!40度も出ちゃったんだもん。もはや意識なかったよねっ!あははっ!」

 

「、?」

 

ほんの少しだった。けど、彼女の言葉は確実に私に中に『、?』という違和感を残した。

なのに、なのに、なのに、なのに、なのに、なのに!!

それ以上は踏みこまなかった。その理由に”依だから”というのがあったかもしれない、いやあった。

依を馬鹿にしてたわけじゃない、軽視してたわけでもない、のに。

その理由は今の私にも分からない。わけがない。

 

次の日、依はまた、学校を休んだ。先生に連絡もなしに。