「人民元の国際通貨化について」(真田幸光氏) | 清話会

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「人民元の国際通貨化について」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)


基軸通貨となることは、
「世界のモノやサービスの世界的な経済的価値判断基準となる」
ことを意味し、その為には、先ずは、その通貨が国際金融社会で、国際化され、それが市場で認知されなければなりません。
 
基軸通貨として認知されると、その結果として、
「世界の主要なモノやサービスの価格の建値がその基軸通貨建てで、提示される可能性は高まる」
といった現象が見られます。
 
そして、その主要なモノやサービスの価格の建値がその基軸通貨で提示されていくと、通常は、決済もその基軸通貨建てでなされていくこととなり、この結果として、国際的な金融決済を行っている金融機関は、
「決済通貨としての基軸通貨を自らの資産の中に組み入れていくことが不可欠となる」
という状況となります。
 
その資金は、決済資金でありますから、不足しているときには直ぐに調達しなくてはならず、余剰となった時には直ぐに運用するべき資金となります。
 
そうした視点から考えると、国際的な決済活動を行おうとする金融機関は、決済資金の運用、調達が最もし易いところ、即ち、国際決済資金が最もたくさんある、基軸通貨を発行している国に、これらの資金を置くことになります。
 
すると、その決済資金の為に基軸通貨発行国に置かれた資金は、
「基軸通貨発行国の法治を受ける」
こととなり、基軸通貨国の法に基づいて、資金口座の検査を受けたり、場合によっては、資産凍結などの管理・監督をも受ける可能性があります。
 
そして、これまで、そうした役割を果たしてきている基軸通貨は米ドルであり、よって、国際的な活動をする金融機関は国際決済資金の多くを米国内に置き、結果として、そうした資金は米国の法治を受け、時に米国当局のモニタリングを受け、或いは制裁を受けることもあるのであります。
 
資金洗浄のチェックなどは正にこうしたシステムの中で、現状、米国を中心に行われているのが実態であります。
 
ところで、私は、こうした基軸通貨を持つ国が、自国の法律によって、他国の金融機関までも管理・監督することに対する不満が積っていると感じています。
 
米国に管理・監督されることを嫌がる国として、中国本土が挙げられ、従って、中国本土は人民元の国際化を段階的に進め、昨年はとうとう、国際通貨基金の出資金の構成通貨(SDR)の一つに人民元をはめ込むことに成功し、その段階を更に進めています。
 
一方、EU離脱で注目される英国は、ここ数年、英国の主要な金融機関が米国の国内法によって英国の金融機関が資金洗浄のチェックミスを背景として米国政府から莫大なる罰金を徴求されていることに対して、強い不快感を示しておりました。
 
私には、こうした状況にあって、英国が人民元のSDR入りを容認したとの見方をしていますが、今後は更に、英国自身が、
「ロンドン市場での人民元の国際化」
を容認、人民元の国際取引を拡大していくことをサポートする可能性もあると一応想定しておくべきではないかと考えています。
 
英国の中央銀行と中国本土の中央銀行の連携が強まりつつある中、
「人民元の国際化」
についても大いに注意を払っていきたいところであります。



真田幸光------------------------------------------------------------
清話会 1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・東京三菱銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している

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