書評:『アジアビジネス 成功への道』 平沢健一著  | 清話会

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書評: 『アジアビジネス 成功への道』
平沢健一著  
産業能率大学出版部  2016年6月30日
 
副題:「グローバルからグローバル・アジアの時代へ」  
帯の言葉:「グローバル・アジアビジネス成功の秘訣」


著者の平沢健一氏は、「米国、欧州、中国の現地法人経営に20年間携わり、56カ国をビジネスで回ってきた」という強者である。

本書は、「大きく変わり始めているアジア」に進出しようとしている日本人ビジネスマンへの、平沢氏のアドバイスの書である。

本書の中には、平沢氏の各国での貴重な体験談が語り尽くされており、たいへん参考になる。ことに第3章には、平沢氏の米国、欧州、中国での実体験が生々しく書き込まれている。

それを読んで私は、むしろ本書の題名は、「日本人ビジネスマンの海外奮戦記」と銘打った方がよかったのではないかと思った。なによりも、平沢氏の強みは英語を始めとして、各国語を赴任地で習得して、それを営業活動に活かしたということであり、本書には、英語や現地語の平沢氏独特の習得法が伝授してある。とても私には、マネのできない芸当である。

平沢氏は日本人離れした、いわば戦術の大家でもある。私はまったくの語学オンチだったので、自らの持つ縫製技術を武器に各国で戦ってきたが、どうしてもその行動範囲は限定されたものに終わってしまった。平沢氏の努力や胆力には、脱帽である。

ちなみに第1章は、アジアビジネスの今後を俯瞰したものであり、いわば戦略編である。また第2章は、アジアでビジネスに携わっている人たちの寄稿や平沢氏のインタビュー記事である。私もバングラデシュに関する一文を載せさせていただいている。

第4章には、アジアでのビジネスにおける交渉術を、中国、インド、インドネシア、ベトナムなどの各国別に書き込んである。なかでも、「中国人とインド人が商売すると両方とも全く信用していないから、信用できる人間を仲介させたらよい。それは真面目で正直で契約も守る“日本人”だ」という指摘は、面白い。

第5章では、「グローバル・アジアビジネスで勝ち抜くための処方箋」として、多くの名言が書かれている。第4・5の両章は、いわば戦術編である。

平沢氏は、「中国の大手国有企業も変わってき始めています。日本と中国だけを知っている日本人を中国へ送り込む時代ではありません。世界を知っている人を送る時代です。同様にアジア・新興国も破天荒なスピードでグローバル時代に突入しています。皆、目が輝いています。実力を一気につけ、自信を持ち始めてきた中国人、韓国人、ASEANの人たち、そしてインド人、これからのアジアビジネスはよほどしっかりやらないと負け戦になってしまいます」と書いている。

この意見に異論はないが、戦略的に考えるならば、現在は、「中国のバブル経済崩壊後のアジアの大混乱」に備えることが必要な時期である。中国の進めるAIIBや「一帯一路」政策についても、それを過大評価することなく、そのウラを読み抜き、対処していくことが肝要である。



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清話会  評者: 小島正憲氏 (㈱小島衣料オーナー )

1947年生まれ。 同志社大学卒業後、小島衣料入社。 80年小島衣料代表取締役就任。2003年中小企業家同友会上海倶楽部副代表に就任。現代兵法経営研究会主宰。06年 中国吉林省琿春市・敦化 市「経済顧問」に就任。香港美朋有限公司董事長、中小企業家同友会上海倶楽部代表、中国黒龍江省牡丹江市「経済顧問」等を経ながら現職。中国政府 外国人専門家賞「友誼賞」、中部ニュービジネス協議会「アントレプレナー賞」受賞等国内外の表彰多数。



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