「社員力を高める」---新年の想い(澤田良雄氏) | 清話会

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髭講師の研修日誌(14)
「社員力を高める」---新年の想い

澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役)

◆出講先三社に診る

トップの新年メッセージを拝読・拝聴すると、人材育成を強化するとの文言が目につく。年初から出講した企業各社でもその機運が顕著である。

いくつか紹介しよう。
H県の和菓子、洋菓子メーカS社では、「私たちは食文化の向上を通して豊かで平和な社会の実現に貢献します」「食を通してお客様に夢や感動を与え、この地域を豊かにしていく使命があります。まず、私たちがこの多種多様な食の楽しみ方を実感していかねばなりません。そしてその良さを伝える力を養うことも必要となります。最後は「人」で決まります。様々な仕事に興味を持ち、チャレンジして「人」の力でこの厳しい時代を生き抜いて生きましょう」とI社長。

S社は70周年を迎えると共に、新工場が本格的稼働の現況である。新人事制度も整備され、若手社員層には多能化も柱立てている。今回も部門長とパートナーを組み、常にネクストステージを目指す内容を組み立て支援した。受講社員の心意気も高く、今日までの活躍ぶりに新たに変えていく楽しさを期しての研修となった。

また全社員60名が胸に「笑顔バッジ」をつけた印刷関連業のD社の研修も楽しかった。D社は営業主体であるが、製造・管理部門も加わり、各地から集合しての全社員研修である。既に多様な研修を重ねてきており、笑顔バッチにふさわしい社員気質と社内文化が気持ちよい。

新年心新たに「基本を再確認」する。その第一弾としての話力向上に着目し、笑顔で学ぶ話し方の内容とした。演習も取り入れ、緊張と、終えた瞬間の笑顔が素敵だ。ちなみにA社長は学生時代落研で鍛えた人、従って笑いを引き出す話力は見事である。ここでも小生と共に支援し合っての実施であった。

基本に着目では「5S活動を徹底し、魅せる会社を実現しましょう!」と年頭所感で明言したのは建設工具のトップメーカーS社のH社長。全社あげて会社の品質を高め、より魅力ある会社づくりを・・ということである。社内での見える化は既に進んでいる。ならば、外に向けてその良さを発信していく事が大事。それは「魅せ方」です。と断言するH社長の想いである。そのためには社員のやる気、社員が成長や喜びを体感できる職場環境づくりで躍動すること、従って人財育成力のアップを……との表明である。早速、メイン工場幹部からの要請で、5S活動KAIZEN研修をスタートした。
 
まさに変化の時、その先取りと対応する力は「学ぶ力」如何である。学ぶ力は今出来ないことをできるにする肥やしであるからだ。まさに「変える力」である。
読者諸氏の企業はいかがであろうか。
 
新年「新たな想い」は、今出来てない状態での仮説。それを実現していくプロセスでは、どうしても改革することが必須。その改革力は新たな発想・智恵が要求される。その素は新たな学びの賜である。育成とは人材(今ある力)を人財(新たな結果を創る)に育ていかす事である。
心新たに社員力アップ(人財育成)について着目してみよう。

◆本気で考えてみる。でなければ競争力は衰える


「企業は人なり」わかっている。「うちも教育したいんだが…」「でも」との声は良く聞く。多分「具体的にどう実施したら良いのか」「費用がかかる。今予算がない」「うちの社員はレベルが低いから他社の人とじゃ恥ずかしい」など、不安と面倒と、どこかに「今更」「無理しなくても何とかなってきた」の人材育成投資(時間・経済)に対する軽視が有るのだろう。

現実に企業を取り巻く環境は厳しい。だから、そこまで手が回らない。少し忙しくなって来た、時間が勿体ない。まさに一理ある。しかし、現状までの企業総能力(社員各位の能力を総合化)では厳しい環境に競争力を高めた「新たな強さづくり」はできない。なぜなら、社員の専門力を高める、そして対人関係力を高める事せずして、新たな知恵を働かせてのランクアップした活躍は不可能であるからだ。

今までの経験値(経験してきた能力)だけで事が打開できるならこんな楽なことはない。経験則を生かして、新たな改革事例を社員各位がそれぞれの役割・立場で創り出し、その累積した分だけ、企業の強さが他に勝っていくからである。新・初・独(自)・難(題)のキーワードがそこにある。

◆挨拶でも徹底すれば社員力は高まる

ならばどうする。「当社の財産は人材なり、社員が成長した分だけ当社が成長する」とトップが提言している企業の研修を担当して来た。C社は社員数250人、大手製油所の設備管理を業として、「本日安全」「最高品質」「鍛えよう自分と仲間」をスローガンに掲げて、厳しい業界での信頼と安心を、顧客様に提供し続ける企業体質づくりに、本腰入れている企業である。 

ここ5年、管理者、リーダー、社員クラスの全社員の研修に携わってきたが、確実にその社員力(立場、役割)の進化が顕著である。それは、トップ幹部の評価と実際の研修の場での実態感からでも診られる。
 
例えば、挨拶でも研修から、全社活動のAAA活動(トリプルA・圧倒的・挨拶で・安全確保の意)に展開し、親会社との連絡会では、「親会社を越えた活気ある集団となった。外部関係者からの評判もすこぶる高い」と称賛されたとのことだ。まさに親の面子を子が高めた事となる。従って安全、品質の数字もより良く変化しているとのことだ。まさに社員の成長は我が社の成長の提言どおりである。
 
諸処の育成内容を修得する必然性はもちろんだが身近な事に焦点を当て、本腰入れて育成する事は多くの実効を産み出す波及力がある。

頭書でのお菓子メーカS社では『当たり前のことを徹底する』との幹部講話があった。建設工具メーカS社の「5S活動の徹底…」、印刷関連会社D社の「笑顔」も、解っている、できることである。でも最高実践が習慣化されているかの切り口で取り組み、その向上による波及効果が各自、各署の必要なる能力の確保と高度化に繋がるとの読みである。

◆どんな社員に育てたい、それは13条件だ!
 
そこで、現在「社員力」としてどのような人材条件を考えるか、以下13項目を提案してみる。なお、業種、職種、立場によって具体的な理解に落とし込んでいただければ幸である。

① 挨拶人間で常に周囲にオーラを醸し出せる人材
② 高い専門力を持ち、一目置かれる存在感を示せる人材
③ 常にCS(顧客感動)を高める顧客目線で、自らの活躍施策を発想でき人材
④ 上位者の示す方針に対して、累積的改革を個性を生かして推進できる人材
⑤ 上位者の指示事項を、当事者意識で取り組み、主体的判断と責任感を持った人材
⑥ 新鮮な情報、知識を探索し、取り巻く環境の変化に柔軟に対処できる人材
⑦ 事業家マインドを持ち、人、モノ、金の最適活用で付加価値を生む事のできる人材
⑧ 異文化を受容し、国際的に適合できるグローバル感覚を持ち合わせた人材
⑨ 部下、後輩を生かし、育て、目標を必達できるマネジメント力を持った人材
⑩ 関わる人の信頼に基づく協力関係を築く、リーダーシップを持ち合わせた人材
⑪ 倫理観を強化し、絶対的にトラブル発生のない組織作りのできる人材
⑫ 企業(店)のブランドを背負って、自ら評判を高めるセールス力を生かせる人材
⑬「何を、どうする」の必要スキルを要し、常に自己啓発力を持ち合わせた人材

 
確認であるが、以上の項目の前提は、各社員が企業の理念、行動指針、ビジョン、年度目標をきちんと理解していることである。なぜなら当社の企業人であるからだ----ということになろう。御社の社員各位の十分さはいかがであろうか。

十分、不十分いずれにしても、何ら手だてをせずに社員の成長は難しい。専門知識でも常に幅の広さ、深さの探求、そして新鮮さのキーワードはより高める必要ありだ。こういうときだからこそ「企業は人なり」の実を生み出す人材育成にあえて取り組む必要があろう。

◆すぐ取り組める育成の機会づくり
 
各団体の要請で出講する機会も多い。各社が会員となっているサービス機関である。
セミナー受講料は安価である。無料もある。本気で育成しようとするならこの権利を利用しない手はない。思い切って受講させれば良い。留守しても決して組織としての仕事の停滞はない。必ず周囲が補う。そこには秘めた能力が発揮され、思わぬ協力関係の強さも醸成される。だからこそ受講後の学んできたことの実践意識の高揚にも繋がる。

特に上司クラスが留守になる事は、カバーする後輩の次期に向けた育成の機会でもある。本気で育成を考えればその施策は随所にある。日々の業務活動や機会活用を敢えて小企業向けにいくつか記してみよう。

①トップが仕掛ける=一言の掛け(ねぎらい・感謝)の言葉)、会話・会食での談義、ミーテングの機会も生かせる。勿論言行一致の率先力が示範教材となる事は周知の通り。トップから学ぶ姿勢が第一である。

②朝礼利用=基本動作での挨拶、声だし、業務の情報提供での褒め、アドバイスは参加者共通の教材となる。視野を拡大する機会としての活用は「職場の教養」(倫理研究所発行・日ごとのコラム内容が良い)が最適である。実施に対しての無料指導もある。

③目標管理的仕事の推進=目標はできてない状態、できるにするためには学ぶ事による変える行使が不可欠、上司からの指導支援、本人の自己啓発実践が必須状況となる。OJTの実践がここにある。

④任せる事=仕事の割り当てに思い切ること。責任感から学ぶ勢いが増幅する。訊きに来る指導機会は最高の指導効果を生む。達成感は更なる自信の高まりとなる。それには上司の支援が肝心。「やったーの喜びを創る責任が任せた上司にある」からだ。

⑤報連相の機会活用=受けるだけではない。報告ではそのプロセスの努力に目をかけ褒めと、もっとこうすると良かったかなーの示唆は、効果あり。相談は不安、不解だから来る。求める学びは最高の効果あり。案外、忙しがる上司がこの機会を軽視する。部下から寄ってくる報連相は減少する。

等がある。しかも、社外講師の活用も前記の加入期間への相談により、予算対応OK、あるいは補助金活用も利用できるも事を付記しておこう。

「いつやるの」「今でしょう」。「やりたい」「やろうと思っている」「やるように頑張ってみます」こんな楽な言葉ない。なぜなら何も実践していないからである。

本日、出講した経済団体での若手社員研修の終講(4回コース)の結びの言葉を反芻し、本稿の結びとする。



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◇澤田良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の㈱HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
  http://www.hope-s.com/
 


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