激動期に勝つ“良い会社”をつくるために 第52回
仕事のトラブル 急ぎの仕事が多すぎる…(3)
今成淳一氏(アイオー総合研究所所長)
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■前回までのあらすじ
営業課のB課長は、C部長に依頼された企画書づくりを失念してしまい、部長から「できているか」と聞かれて慌てて対応しました。
その仕事を請けた日はトラブルがあり、慌ただしい時でしたが、それにしてもどうして仕事を請けたことを忘れてしまったのか分かりませんでした。
一方、B課長を育てるためという目的もあって仕事を任せたC部長は、しばらくしてB課長を呼び出しました。今回の問題をどのように解決したかを聞きたかったのです。
C部長に呼び出されたB課長は、仕事を失念しないために手を打ったことを報告しました。
それを聞いたC部長は、報告の内容には理解を示したものの、「他に問題はなかったか?」とB課長に聞いたのでした。
しかし、B課長には思い当たることはありませんでした。
一方、B課長の部下であるD氏は、「いつかはこんな事が起こるのではないか思っていた」と言う同僚の言葉に驚きました。
自分と同僚とではB課長に対する思いが大分違うようでした。
■B課長とC部長の会話
(C部長)なるほど、よく分かった。仕事の記録とトラブルについての対応はそれでよいと思う。他には問題はなかったかな。
(B課長)他の問題ですか? 特に無いと思いますが。……。
(C部長)そうかな? 私にはそうは思えないのだが…。
(B課長)どういうことですか?
(C部長)確かにあの日は急なトラブルがあって、その対応で慌ただしかったのは分かる。その結果、仕事を失念してしまったということも、分からないことではない。誰でもミスすることはあるからね。
そして君は、あの日起こったトラブルが今後起こらないように手を打った。さらに、仕事を失念したということについても、仕事の記録の取り方について改善した。もちろん、それは正しいと思う。
しかし私には、もう一つ問題があるように思えてならないんだ。
それは、君が忙しすぎるということだよ。
君は、自分の仕事をきちんとマネジメントできていると思うかい?
(B課長)えっ。それは…。
C部長に言われて、B課長も自分で感じていたことを思い出しました。以前、友人に聞きたかったことも、そのことでした。
しかし友人からは、その答えを得ることはできませんでした。
(B課長)それは私も感じていたことです。しかし、それについてはまだ手を打てていません。
(C部長)そうか。それでどうしようと考えているのかな?
(B課長)…。
(C部長)まず、自分がどうして忙しいのかを知ることだ。現状分析だな。そのためには、まず現状を把握しなければならない。
しばらくの間、自分が時間をどう使っているかを記録してみなさい。そして、その時間の使い方、どのような仕事をしているのか、について分析をしてみることだ。
B課長は、C部長の言葉に納得しながらも、それで現在の忙しさが解消できるのか、については疑問が残りました。しかし、C部長の指示には従わなくてはなりません。
■B課長の部下D氏と同僚の会話
(同僚)だって、これまでは何でも相談しに行けばよかっただろう。仕事はうまくいくし課長も喜ぶ。自分の評価もよくなるし。いいことだらけだった。だけど、これからはそうはいかなくなるかもね。
(D氏)そんなことを考えていたのか。
(同僚)当然だよ。君だって、何かと言えば課長に相談していたじゃないか。実際、課長の営業力はすごいからね。おかげで楽に仕事が進んだろう。
(D氏)それはそうだけど。
でも、自分が楽をするために課長に相談していたんじゃないさ。
(同僚)じゃあ、君はどうして課長に仕事を助けてもらっていたんだい?
(D氏)それは、課長が「自分では解決できそうにないときや困ったときには何でも相談してきなさい」と言ってくれたからだよ。決して自分が楽になるためじゃない。
(同僚)同じことさ。結果として君は楽になり、課長は忙しくなる。
それに、理由は本当にそれだけかい?
(D氏)どういうこと?
(同僚)そもそも、今みたいに皆が課長に助けてもらうようになったのは君が原因じゃないか。
(D氏)ええっ。
(同僚)それも知らなかったのか?
(D氏)まったく。
(同僚)確かに、以前から課長は相談してくるように、皆に話をしていたけど、初めは誰も相談なんかしなかったろう?
(D氏)確かに。だから課長も寂しそうだった。
(同僚)それはどうしてだか分かるかい?
それは、そんな言葉を真に受けて相談しにいったら「そんなことも自分でできないのか」と言われるに決まっているからさ。
その結果、人事評価が悪くなるに決まっている。
(D氏)そんな。課長はそんなことはしないよ。
(同僚)それは分かっている。それが分かったのは、君が課長に相談したからだよ。
課長は、相談しに行った君に対して叱るどころか仲良く話すようになった。
周りから見ていると、君が課長に気に入られて行くのが本当によく分かったよ。
(D氏)別に、僕が課長に気に入られているわけじゃないよ。
(同僚)それは君の言い分さ。周りからはそうは見えない。
だから皆が課長に相談に行くようになったのさ。
誰でも上司から気に入られたいからね。
~次回に続きます~
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■今成淳一(アイオー総合研究所所長)
1959年生まれ。電子部品メーカーで技術職として勤務後、経営コンサルティング会社役員を経て99年独立。経営コンサルティング歴25年。「ドラッカー教授のマネジメントを実際の経営に活かすことで、企業の課題解決と体質改善を図る」ことを主体に取り組む。
「差し迫った課題を解決するだけでなく、“良い会社をつくる”ことを目指す」内容と分かりやすい解説が、多くの経営者から支持を得ている。清話会メールニュースにて、「激動期に勝つ“良い会社”をつくるために」を好評連載中。