「世界一豊かな国と住みやすい都市はどこか(上)」(山本紀久雄氏) | 清話会

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街角ウオッチング165号
世界一豊かな国と住みやすい都市はどこか(上) 

山本紀久雄氏(経営ゼミナール代表)


※「街角ウォッチング」過去の記事はこちら


この街角ウオッチング、8月の掲載後少しご無沙汰していましたが、その間に163回と164回でお伝えした「米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の関心事」、その内容が2013年9月17日に「In Post-Tsunami Japan, Homeowners Pull Away From Grid 」、日本語版では「自分たちで『電気』を作り始めた日本人」のタイトルで、当方に取材された内容がWSJに掲載されましたことを報告いたします。

今回は世界で一番「豊かな国」はどこで、一番「住みやすい都市」はどこかについてお伝えいしたい。

それは国でいうとデンマーク、都市でいうとデンマークの首都コペンハーゲンであるといわれている。

米コロンビア大学地球研究所が調査し発表した世界各国「幸せな国」ランキングは以下の通りで(2013年9月 CNN)デンマークが一位となっている。

上位10カ国は以下の通り。

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1.デンマーク
2.ノルウェー
3.スイス
4.オランダ
5.スウェーデン
6.カナダ
7.フィンランド
8.オーストリア
9.アイスランド
10.オーストラリア

この他の主要国では、米国17位、英国22位、ドイツ26位、日本43位。

幸福度が最も低い5カ国はルワンダ、ブルンジ、中央アフリカ、ベナン、トーゴと、アフリカのサハラ砂漠以南に集中している。

この他にも諸指標でデンマークという国は「豊かで」「もっとも住みやすく」「幸せな」国であるといわれている。

 実際にはどうなのか。それを確認したくデンマークとコペンハーゲンに行ってみた。
 まずはデンマーク全体の概要である。

①面積は約4.3万平方キロメートル(九州とほぼ同じ・除フェロー諸島及びグリーンランド)
②人口は約560万人(2013年デンマーク統計局)
③首都はコペンハーゲン(人口は約70万人、首都圏の人口は約120万人)(2012年末)
④言語はデンマーク語
⑤宗教は福音ルーテル派(国教)
 
このデンマーク、今でこそ世界有数の豊かな国家となったが、これは一朝一夕でできたわけではない。19世紀初頭のデンマークは、経済的に破綻し、領土も喪失して、実際に「貧しく、小さな国」であった。

 そこからデンマークの人々は立ち上がり、土地改良ほか、さまざまな改革と努力によって、今日の恵まれた国を築き上げてきたのである。

現在のデンマークの政権は、2011年9月の総選挙によって、10年に亘り政権を担当してきた自由党及び保守党による右派連立政権が敗北し、社会民主党を中心とする左派が勝利を収め、トーニング=シュミット社会民主党党首を首班(デンマーク初の女性首相)とする中道左派三党連立内閣が発足している。

通訳女性に聞くと、この政権は、移民には厳しく、自分の夫はデンマーク人だが、手続きが大変だったという。ただし、政権交代のたびに移民制度の内容が変わるので、今後のことは不明だが、今はEU以外の国からの移民は特に難しい。消費税は25%。同性婚は昨年認められた。

有名な文学者はアンデルセン、哲学者はキルケゴール、スポーツでは自転車競技、ヨット、カヌー、ハンドボールが強いという。

■コペンハーゲン

次にコペンハーゲンであるが、これはロンドンのライフスタイル誌「モノクル」が毎年、世界の都市のどこがもっとも暮らしやすいかを発表している。

一位はコペンハーゲンで、編集長のタイラー・ブリュレが選定基準を次のように語る。
「『本当に良い街』とは、一日の間にできる限り多くのことを気持ちよく体験させてくれる街のことだと、私は考えています。朝、子どもを学校に送り届け、買い物をし、仕事に出かける。そうしたことをスムーズにストレスなくできる街です」と。

このコペンハーゲンには、ベルギーのブリュッセル空港からSASスカンジナビア航空で入ったのが2013年5月18日(土)。

 ブリュッセルでは雨が降り、寒くて震えたので、ここより緯度が高いコペンハーゲンだから、もっと寒いだろうと予測し国際空港のカストロップ空港に着き、窓から外を見ると日光が燦々として26度もあるという。 
 ホテルでコペンハーゲンの地図をもらい、早速、街中を歩いてみた。日差しが熱い。ホテルで聞くと、今日は特別だといい、明日は雨だよとつけ加える。 

コペンハーゲンには1990年であるから、今から23年前に来ていて、当時の思い出を辿って、市庁舎の前に立つと何か騒々しくなっているような感じがする。

この市庁舎は1905年に完成した6代目にあたるもので、中世デンマーク様式と北イタリアのルネッサンス様式を取り入れた堂々たるたたずまいの建物。コペンハーゲンで最も高い105.6mの塔をもっており、コペンハーゲン市街を見渡すことのできる絶景スポットしても知られている。

だが、この街を一日半、歩いてみて、感じたのは「やはり変わっていない」ということ。最初に騒々しいと感じた理由は分かった。市庁舎前の広場がイベントを開催するらしく、多くの関係者が慌ただしく動いており、そのための資材がおかれていたことから、そのように感じたのである。

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←(チボリ公園入り口)

23年前、この街は、歩いて観光するにちょうどよい大きさだと思ったが、今回も同じ感覚を持つ。パリやニューヨークを歩いて動き回るのは厳しい。地下鉄やタクシーを使うことになるが、コペンハーゲンは地図を見ながらブラブラ歩くには絶好の街だと思う。

コペンハーゲンの人口は52万人。名前はデンマーク語の"Kjøbmandehavn"(商人たちの港)に由来し、 日本語では「コペンハーゲン」というが、これはドイツ語名をカタカナ表記したものであり、デンマーク語では「ケブンハウン」に近い。

 コペンハーゲンには、城、公共建物、美術館など歴史的な建造物がたくさんあるし、市役所前広場からストロイエ通り、この通りは市庁舎前広場とコンゲンス・ニュートーゥ広場を結ぶ通りであるが、フレデリクスバーウギャーゼ、ニューギャーゼ、ヴィメルスカフテ、エスターギャーゼの4つの通りで構成されている。

ストロイエとはデンマーク語で歩くこと。市民や観光客の目を楽しませてくれるこの通りは、その名にふさわしい歩行者天国。道の両側にはさまざまなショップやレストラン、カフェが並び、路地裏には、中世の香り漂う重厚な教会や色鮮やかな家屋が並んでおり、そぞろ歩きが楽しい。

通りの中ほどにギネス・ワールド・オブ・レコーズ博物館 がある。入口に世界一の背高のっぽの人の像が目印だからすぐわかる。中に入らなかったが、ギネスブックに載っているさまざまな記録がひとめでわかる博物館である。

ストロイエ通りの終点はコンゲンス・ニュートーゥで、ここに入ると自然にニューハンに足が向く。

ここはいつも大勢の男女が屯っていて、天気の良い日は足元にビール瓶を置いて会話に興じている。その傍らを、そのビール瓶目当ての男女が袋を持って歩いている。結構の人数が徘徊していて、気をつけないとまだ飲み残しがあるビール瓶が浚われる恐れがある。空きビール瓶を売ってお金に替える仕事であるが、何となく侘しく見え、これだけはコペンハーゲンの街並みのよさを傷つけていると感じる。

次の日の日曜日は朝から雨。昨日より12度低い14度。コートがいる。その雨の中、ホテルから歩いて地下鉄駅へ。乗車券はセブンイレブンで買う。一人24デンマーク・クローネDkk、1 Dkk =18円換算で1430円。結構高い。

人魚姫の像の駅、エスターボートにすぐに着く。駅から歩いて20分くらいかと、地図を広げていると親切にデンマーク人が教えてくれる。言われたように歩いて行き、公園内の道になったあたりから人が徐々に多くなっていき、その人々の回りをマラソンランナーが走っていく。今日はコペンハーゲンマラソンの日なのだ。

モロッコの選手が2時間17分台で優勝したらしいが、一日中街中はマラソンで大賑わいであった。

(次号に続く)




山本紀久雄--------------------------------------------------
1940年生まれ。中央大学卒。日仏合弁企業社長、資生堂事業部長を歴任。現在、㈲山本代表取締役として経営コンサルタント活動のほか、山岡鉄舟研究家として山岡鉄舟研究会を主宰。著書に『フランスを救った日本の牡蠣 』『笑う温泉、泣く温泉 』等がある。

(山岡鉄舟研究会)    http://www.tessyuu.jp/
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