70年代から80年代への猛烈な憧れを拗らせ生きている私にとって、レトロフューチャリズムに影響されたインテリアを無視する事は難しい。
ミッドセンチュリー、スペースエイジといった言葉は日常でも耳に入るが、どういった定義があるのだろうか。
調べてみると案外単純であった。「20世紀初頭に生きた人間が思い描いた未来」先人たちが思い描いた未来がどんなものであったかは当時の映画や美術作品に現れている。例えば『時計じかけのオレンジ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などがあるだろう。それぞれ70年代、80年代の作品であるが、両方とも近未来を舞台としており、色合いが鮮やかだ。
そして私が直接体験できるフューチャリズム、それはインテリアだ。シンプルなフォルムでありながらも実用性に欠け、鮮やかな色合いなのにどこか不安にさせるカラーバランスが何ともセクシーである…!!
長すぎる前置きはさておき、神保町にある古本屋でこのような雑誌を見つけた。
ECHOESというインテリア雑誌だ。まず表紙の平凡という言葉から遠く離れた空間の写真が目に付き、手に取った。
どうやらレニークラヴィッツの別荘のようだ。彼のファンではないが見た目がタイプなので名前は知っていたが、やはり天才の住む家は天才がデザインするのだろう。早速購入し拝読した。
悲愴感漂う灰色のコンクリートに挟まれた真っ赤に光り輝く空間。この豪邸の前をランニングする人はそのまま通り過ぎることが出来るだろうか。
この世界を創ったのは、マイケル・チシュというオートバイデザイナーらしい。彼はレースライダーであり、エンジニア、起業家でもあるマルチプレイヤーだ。マイケルはレニーのマイアミでの休暇のために、70年代のレトロと、21世紀のヒップを融合させた神空間を作り上げたのだ。
玄関を入ると目につく赤い自動ドア、プラスチックっぽい感じがたまらない上に日本人にも馴染みやすいデザインだ…ライトに照らされた白い側壁、よく見るとフェイクファーのようだ!感動した。床はステンレスのように見えるが、どんな素材なのだろう、近未来感をより一層引き立てている。赤、白、シルバーが調和する玄関トンネル。一足踏み入れた瞬間からまさに別世界、SF映画の主人公になったような気分になるだろう。
家の面積の半分を占めるというリビングルームとバー。同系色の天井と壁、床に囲まれた最高にクールな空間。目が痛いなんて言ってられない、家主に唯一無二の想像を促す特別な隠れ家だ。天井に均一に並ぶバブルミラーは、クッション素材でできた自由に動き回るエントランスウォールと対極的ながらもやはり統一感を感じられる。
たとえトんだとしてもこのような光景は思い浮かばないだろう。赤い絨毯とオレンジのラウンドソファがバブルミラーと天井のプレキシガラスに反射し、情熱的…には見えないところがまた不思議なところだ。パンチのある色合いに反し、無駄なものを省き、ソファ、チェア、テーブル、照明のみで完結させている。3次元的な動きをスパイス程度に取り入れた洗礼された空間になっている。
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