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‪岩手県立中央病院　医師　森康記‬

‪　2019年10月12日、台風19号は猛烈な勢いで日本列島を覆い、そして各地に未曾有な被害を及ぼしました。中村先生の住んでいる千葉県は今回の台風で最大級の被害に遭ってしまい生活の拠点となっている君津市も例外ではありませんでした。当初はマスコミからの被害の情報も少なく中村篤史先生の発信するSNSで断片的に状況を知るのみでした。中村先生の情報で生活の基盤であるライフラインが断たれている事、避難生活が長くなりそうな事、いつ復旧するか全く目処が立たない事を知りました。そして私はいつしか東日本大震災の当時の事を思い浮かべていました。通院していた患者さんの何人かは津波で亡くなり、医療者側としても人の死とは何とあっけないものかと無常観に打ちひしがれたのを覚えています。‬

‪　しかし、中村先生はすぐに動き出しました。それは格闘技で培われた天性のフットワークの軽さ、人から代償を求めない世話好きの性格、優れたリーダシップの賜物でしょう。ちなみに中村先生に実際にお会いすると分かると思いますが、人を惹きつける何かオーラのようものを持っており、人の話をよく聞いてくださり、お話していてとても心地良いお方です。‬

‪　中村先生は台風被害後に何の物資が不足しているか、停電、断水、どこの信号が復旧したなど実際に自分の足と目で役に立つ情報を得てSNSで発信していました。それは本当に純粋なボランティアであり頭が下がりました。そしてついにボランティアの人たちを結合させて大きなグループを作成し市役所などの行政を動かすまでになったのです。‬

‪　何より中村先生は大震災で津波被害の大きかった岩手県釜石市の出身です。私も同じ岩手県人として震災の後のライフラインが無い生活の辛さ、精神的ダメージは経験して理解しているつもりでした。しかし時間とともにそれは薄れていき、いつしか思い出したくない事として脳内に蓋をしていたような気がします。‬

‪ 本書は近い将来起こるであろうと言われている地震や津波、毎年やってくる大型台風、寒波や雪害の被害も人ごとではない事、一人一人が備える事柄や被害に遭いそうになったら個人レベルでどう動くべきかを教えてくれる必読の書なのです。‬

令和元年、未曾有の大規模広域災害を受けて