前回の姿勢制御のメカニズムその3

 

体性感覚①の続きになります。

 

 

体性感覚の伝導路について

 

まず 初めに

 

伝導路(神経回路)とは

 

身体の外部・内部の情報を

 

神経の本幹である

 

脊髄を経由し

 

脳や他の部位との間での

 

情報のやり取りをする際の

 

経路のことをいいます

 

簡単に例えると

 

機械や電化製品などの

 

電気回路や電車の

 

鉄道路線などの構図を

 

イメージして頂けたら

 

わかりやすいかと思います

 

そして 

 

伝導路に流れる身体情報を

 

伝達してくれる神経細胞を

 

「ニューロン」といいます

 

このニューロンには

 

大きく分けて3種類の

 

ニューロンがあり

 

 

外からの刺激を受け取る

感覚ニューロン

 

刺激を筋肉に伝える

運動ニューロン

 

ニューロン間での情報伝達をする

介在ニューロン

 

この介在ニューロンは

 

脳などの中枢神経系を形成しています

 

(脊髄とニューロンの図)  

 

これらのニューロンによって

 

情報が伝達される経路

 

伝導路には

 

「上行性(求心性)」と

 

「下行性(遠心性)」の

 

2種類に大別されます

 

上行性(求心性)

 

抹消の感覚器官で受けた刺激を

 

中枢まで伝える伝導路になり

 

感覚系になります

 

下行性(遠心性)

 

中枢から興奮を抹消に伝える

 

伝導路になり

 

運動系になります

 

 

今回の体性感覚は

 

感覚系の上行性(求心性)になります

(図を参照)

 

この上行性の体性感覚に関わる

 

神経伝導路には

 

①後索路系(内側毛帯路)
②脊髄視床路系(前側索経路)
③脊髄小脳路系

 

の3つの伝導路系と

 

・三叉神経伝導路

・脊髄網様体路

 

の2つの伝導路があります

 

これらの伝導路には

 

感覚受容器から大脳皮質に

 

情報が伝わるまでに

 

3種類のニューロン

 

かかわっており

 

このニューロンを

 

末梢から順に

 

・一次ニューロン

・二次ニューロン

・三次ニューロン

 

といいます

 

 

後索路系(内側毛帯路)

後索路は、触られた部位や物体の性状がわかるような精密な触圧覚(識別性 触圧覚)と意識にのぼる深部感覚(意識型 深部感覚)を伝える経路で、脊髄の後索を上行します。この後索路は、主に上肢と上半身からの神経線維である( 楔状束 )と、主に下肢と下半身からの神経線維である( 薄束 )からなります。感覚受容器としては、マイスネル小体やパチニ小体などが あります。

(後索路 下図を参照)

 

脊髄視床路系(前側索経路) 

脊髄視床路は、脊髄から発している感覚伝導路になり痛覚、温度覚、触覚、圧覚といった情報を視床に伝達します。脊髄視床路系には、前脊髄視床路と外側脊髄視床路の2つがあり、前脊髄視床路は、粗大な触圧覚(何かが触っているのは分かるが、何かは分からない はっきりしないといった大まかな感覚)に関与する伝導路で、外側脊髄視床路は、痛覚温度覚に関与する伝導路になり、痛みと情動の関係にも関わるといわれております。

(脊髄視床路 下図を参照)

 

脊髄小脳路系

脊髄小脳路系は、意識にのぼらない深部感覚(非意識型 深部感覚)を脊髄から直接、小脳に伝えます。感覚受容器としては、筋紡錘ゴルジ腱器官からの情報を伝えます。この脊髄小脳路系は、姿勢や運動などの調節に関係しているといわれており、身体が静止しているときや運動中の筋肉、腱、靱帯、関節包などの緊張の状態(収縮や伸展の状態)をたえまなく小脳に伝え、身体がどのような位置にあるかを随時モニタリングすることで、姿勢や運動の修正、調節、同側の体幹・下肢の伸筋群などの強化、などを行うとても重要な役割をしています。また、手や足から入ってくる小脳路を介した「無意識な感覚情報」は、網様体脊髄路や前庭脊髄路を活性させ姿勢の安定に働いてくれます。 

 

脊髄小脳路系には、以下のようなものがあります。

 

1. 前(腹側)脊髄小脳路

・下肢からの深部感覚を対側小脳虫部の皮質に伝える(交叉性)

(仙尾骨領域に由来する前(腹側)脊髄小脳路のごく一部は、下小脳脚(非交叉性)を経由して小脳に入るともいわれております。)

・下肢の全般的な感覚情報と活動情報の入力

 

2. 後(背側)脊髄小脳路

・下肢からの深部感覚を小脳中間部の皮質に伝える(非交叉性)

・下肢の深部感覚受容器から得た位置覚や正確な運動情報の入力

 

【 前(腹側)脊髄小脳路は、脊髄レベルでの運動情報を小脳に送り、実際に起こった運動のフィードバックを後(背側)脊髄小脳路を通じて小脳に送ることで「意図した運動」と「実際に起きた運動」の照合・修正を補助しているといわれています】

 

3. (副)楔状束小脳路

上肢からの深部感覚を小脳中間部の皮質に伝える(非交叉性)

 

4. 吻側脊髄小脳路

上肢からの深部感覚を小脳虫部の皮質に伝える(非交叉性)

 

(脊髄小脳路 下図を参照)  

 

三叉神経伝導路

三叉神経伝導路は、顔面部(耳より前の部分)の皮膚感覚(痛覚・温度覚・触圧覚)口腔や舌の感覚(一部味覚)を伝えます。これらの感覚は脳神経である三叉神経によって伝えられ、三叉神経核は主知覚核と脊髄路核に分かれます。

 

⚫︎三叉神経 主知覚核の経路

主知覚核は、識別力のある識別性触圧覚および顎の意識的な深部感覚受容(固有受容)に関する情報を伝える経路になります。これらの情報は、三叉神経節から橋へ入り、腹側三叉神経視床路(三叉神経毛帯)を通り、正中線を越えて対側の内側毛帯とともに上行し視床の反対側の後内側腹側核 (VPM)に伝え、その視床と同側の大脳皮質中心後回(感覚野)へと情報を伝えます。また、一部の情報(口腔情報など)は、同側の背側三叉神経視床路を通り同側の視床 (VPM)に伝え、同側の大脳皮質中心後回(感覚野)へと情報を伝えます。

 

⚫︎三叉神経 脊髄路核の経路

脊髄路核は、痛覚・温度覚・識別力のない触覚などに関する情報を伝える経路になります。これらの情報は、三叉神経節から橋へ入り、一度、三叉神経脊髄路を通って同則を下行し脊髄路核へ、その後 腹側三叉神経視床路(三叉神経毛帯)を通り対側の視床(VPM)に情報を伝え、その視床と同側の大脳皮質中心後回(感覚野)へと情報を伝えます。また、一部の情報は、三叉神経脊髄路を通らずにそのまま腹側三叉神経視床路(三叉神経毛帯)を通り対側の視床(VPM)に情報を伝え、その視床と同側の大脳皮質中心後回(感覚野)へと情報を伝えます。

「三叉神経脊髄路は一度脊髄まで下降して左右交差してから再度上行する」 という奇怪な走行をきたす脳神経の中でもかなり特殊な経路になります。

(図を参照)

  

 

脊髄網様体路

脊髄網様体路は、触覚、痛覚、温度覚などの情報を脳幹網様体に伝え、意識水準の維持・調節や姿勢の維持・歩行など自動運動の調節などに関与しています。また、内因性鎮痛反応、否定的感情、不安・怒り・恐怖が関連した情動行動などの誘発にも関与しおり、この脊髄網様体路は自律神経系の活動に大きく影響を及ぼすといわれています。

脊髄視床路の図を参照下さい

 

 

このように体性感覚には

 

多くの経路があり

 

感覚情報が 入ると

 

これらの伝導路を通り

 

主に視床や小脳へ向かいます

 

この視床と小脳は

 

心身共に関わる

 

とても大切な器官になります

 

 

視 床

視床とは、間脳の一部を占める部位で、脳のほぼ中央に位置しており、嗅覚を除く感覚情報(体性感覚、視覚、聴覚、味覚など)の感覚入力を大脳新皮質へ中継する重要な働きをしています。

また、視床にはたくさんの神経核が存在し、小脳、基底核、脊髄、延髄、橋からの情報を大脳皮質へと繋ぐ中継部としての役割も持っており、感覚情報の中継や運動機能の調節などの補助的な役割を担っています。そして、視床の数多く有る神経核のなかには、感覚に基づく情動や記憶(短期、長期、エピソード)、感情記憶、情動形成などや聴覚、空間認知などにも関わる神経核もあります。因みに視床には、120個の核があるとも言われています。下図の視床の神経核は、代表的な核になります。

(図を参照) 

 

小 脳

小脳とは、後頭葉(大脳)の下側、脳幹の後ろ側、後頭蓋窩に位置しており、深部感覚(筋、腱、関節受容器)や内耳からの平衡感覚(前庭覚)、大脳皮質、などからの情報を受けて、運動の強さや力の入れ具合、バランスなどを計算して調節をするなど運動の調節機能の役割をしています。また、小脳は、運動制御だけでなく、感覚識別、短期記憶(作業・作動記憶)、言語学習と記憶、意味的連想、注意力、情動の制御、意識的・無意識的な感情処理、高度な認識力など これら言語や思考などを含む高次認知機能にも関与しているといわれています。そのため、統合失調症(分裂病)、自閉症、ADHD、失読症、特定の言語障害などの疾患に、小脳が関係している可能性もあるともいわれており、これらの疾患では、個人差はあるものの運動障害も伴って持っていることが多いとも報告されているようです。また、小脳は、重要な機能を数多く担っている大脳の次に大きな脳でもあり、神経細胞の数では、大脳よりもはるかに多いといわれております。

このように重要で高度な機能をもった小脳は、機能的区分に基づいて3つに分類することができ、前庭小脳、脊髄小脳、大脳小脳の領域に区分されます。

 

1)前庭小脳(古小脳)前庭系

・片葉小節葉(小脳虫部に隣接する)

前庭小脳とは、主に視覚情報および頭部の動きに関する前庭感覚情報を処理します前庭小脳のプルキンエ細胞(小脳皮質における唯一の出力神経細胞)は、前庭神経核に直接投射してニューロンを抑制します。外側前庭神経核からは、内側および外側前庭脊髄路が発し、体幹の筋や四肢の伸筋(抗重力筋)の働きを調節します。また、前庭神経核の一部は外眼筋核に作用して前庭動眼反射や視運動性反 応を誘発します。前庭小脳は、眼球や頭部の運動、平衡感覚や体幹の抗重力筋の制御、調節に関わっています。

 

2)脊髄小脳(旧小脳)脊髄系

・小脳虫部および小脳虫部の傍の部分

脊髄小脳とは、主に三叉神経、視覚、聴覚系および体性感覚(脊髄後索・脊髄小脳路など)からの固有知覚に関する情報を受けとりますそして、室頂核を経由し大脳皮質および脳幹領域に出力し、体幹と四肢の近位筋群を制御します。また、脊髄小脳には感覚地図が存在し、身体部位の空間的位置データを受け取っています。そのため脊髄小脳は、運動の最中に、身体のある部位がどこへ動くかを予測することで、固有受容入力信号の詳細な調節を行うことができます。脊髄小脳は、静止時および運動の実行中の姿勢維持や四肢の運動の協調、体幹運動の制御・調節に関わっています。

 

3)大脳小脳(新小脳)大脳皮質系

・小脳半球の側面部分

大脳小脳とは、主に大脳皮質(特に頭頂葉)から送られてくる情報(実際に起こった感覚ではなく、大脳皮質の運動前野で作られた運動プログラムのコピー情報)を橋核を経由して受けとりますそして、脊髄小脳路を通して伝達されてきた筋骨格からの無意識的な感覚情報と運動前野で作られた運動プログラムのコピー情報を照らし合わせて運動の予測を立て誤差補正した情報を視床外側腹側核に出力し、出力された情報は、一次運動野及び運動前野に投射されます。大脳小脳は、運動を実行する前の運動の計画や実行に関わっています。また、大脳小脳は、学習、記憶、認知機能などにも関与しているといわれています。大脳小脳は、橋核を介して連絡しているため別名「橋小脳」とも呼ばれてもいます。

 

(図を参照) 

 

また、小脳は、3つの小脳脚で脳幹とつながっており、身体に存在している感覚受容器からの情報を小脳脚を介して受け取っています。3つの小脳脚は、上小脳脚(結合腕)・中小脳脚(橋腕)・下小脳脚(索状体)と呼ばれており、上小脳脚は中脳と、中小脳脚は橋と、下小脳脚は延髄と結合しています。

 

 上小脳脚:中脳との連結路

・前脊髄小脳路(求心性)

・小脳視床路、小脳赤核路、小脳前庭路(遠心性)

 

中小脳脚:橋との連結路

・皮質橋小脳路(求心性のみ)

 

下小脳脚:延髄、脊髄との連結路

・後脊髄小脳路、前庭小脳路、オリーブ小脳路、網様体小脳路(求心性)

・室頂延髄路、小脳網様体路、小脳オリーブ路(遠心性)

 

(図を参照) 

 

 

このように体性感覚には

 

多くの伝導路があり

 

身体を動かしているときは勿論

 

身体を動かさなくても

 

ただ 触れたり

 

触れられるだけでも

 

常にこれらの伝導路を通して

 

体性感覚情報は

 

脳に伝えられており

 

姿勢の維持や

 

感覚情報だけではなく

 

感情などにも

 

関わっているため

 

とても大切な

 

伝導路になります

 

 

このように体性感覚は

 

脳と密接な関係にある為

 

自分や他の方の身体に

 

優しく触れたり

 

触れられることで

 

脳が 喜んだり

 

活性化してくれます 

 

身体が疲れている時などは

 

ご自身の身体に

 

感謝の氣持ちを込めて

 

さすってあげるだけでも

 

身体が 楽になりますので

 

試してみて下さい

 

 

また 伝導路は

 

身体の不具合が

 

どこで どのように

 

起こっているのかを

 

知る為の重要な

 

手掛かりにもなる

 

とても大切な神経回路になります

 

 

次回は この体性感覚の続きで

 

大脳皮質中心後回

 

一次体性感覚野などについて

 

書いていきたいと思っております。

 

皆様のお役に少しでも立てれば幸いです。

 

【お読み頂きまして ありがとうございました】