姿勢反射 (Postural Reflex) とは

 

身体の姿勢や運動中の平衡を保とうと

 

調整、維持したりする無意識の

 

反射(反応)のことをいいます。

 

姿勢反射は原則として

 

脳幹、脊髄のレベルで現れ

 

中脳の参加によって

 

統合されていきますが

  

大脳皮質も

 

関与する場合があります。

 

生後2ヶ月までの新生児では

 

脊髄や脳幹などの神経発達が

 

主になる原始的な反射運動

 

原始反射が活発になりますが

 

生後2・3か月頃になると

 

中枢神経系の随意運動や

 

思考などを司る大脳皮質や

 

姿勢保持、眼球運動などを

 

司る脳領域が発達することで

 

原始反射は徐々に抑制されていき

 

姿勢反射が出現し始めます

 

そして中脳や小脳の発達が進むことで 

 

さらに原始反射が抑制されていき

 

赤ちゃんが 自分の意志で

 

寝返りなどをする運動

 

随意運動などができるように

 

なる時期の生後

 

5か月頃になると

 

姿勢反射と原始反射の

 

パフォーマンスが逆転し

 

高度な姿勢反射に

 

取って代わっていきます。

 

姿勢反射は 原始反射と

 

混合して述べられている

 

場合もありますが 

 

原始反射と違い

 

基本的には獲得したら

 

消失することはない

 

とされています。

 

また 原始反射が何かの原因で

 

抑制が起こらずにいると

 

この姿勢反射への発達が遅れ

 

脳の発達も遅れてしまうことになります。 

 

そして 姿勢反射がきちんと

 

発達しなかった場合は

 

脳が体の防御などのための

 

高度な姿勢反射を

 

うまく使用することができず

 

後退した反射、原始反射を

 

使用するようになってしまうため 

 

脳の発達は妨げられてしまいます。

 

姿勢反射がきちんと

 

発達していない場合の症状例として

・物事や環境に適応できない。

・問題解決に既存の概念を応用できない。

・相互関係が良く分からない。

・並行的な考え方ができない。

・段階的な考え方ができない。

・ たくさんの情報を処理できない。

などの

 

高等教育には不可欠な資質が

 

欠けてしまう場合がありますので

 

姿勢反射はとても重要な

 

反射(反応)になります。

 

このように姿勢反射が遅れている

 

または欠損しているということは

 

脳の発達が未成熟という

 

サインにもなります。

 

 

姿勢反射の代表的なもとして

 

 

中脳レベルの姿勢反射

 

◯立ち直り反射(反応)

立ち直り反射は姿勢が崩れた時に正常な位置に姿勢を戻そうと働く反射です。寝返りや四つ這い移動、お座りの安定性に重要な役割を果たします。立ち直り反射は視覚性・迷路性・頸筋性・体性に分けることができます。

 

1)視覚性

⚪︎視覚性立ち直り反射(反応)

(optical righting reflex(reaction) : ORR)

乳児の体を前後や左右に傾けても視覚刺激の誘発による視覚からの情報で頭部は垂直にして直立姿勢で保とうとする反射です。お座りができるころから見られ、座らせて前後や左右に傾けると頭を垂直にして立ち直ろうとします。(大脳皮質レベルとする場合もある)

・腹臥位と背臥位:生後3ヵ月位に出現

・座位と立位:生後5~6ヵ月位に出現

~腹臥位、座位、立位ともに生涯継続 

 

2)迷路性

⚪︎迷路性立ち直り反射(反応)

(labyrinthine righting reflex(reaction) : LRR)

目隠しをして視覚からの情報をなくしても視覚性立ち直り反射(反応)と同様に乳児の体を前後や左右に傾けると迷路(耳石)の働きによる前庭機能からの情報で頭部を垂直に戻す反射のことを言います。

・腹臥位と背臥位:生後3~5ヵ月位に出現

・座位と立位:生後6~7ヵ月位に出現

~腹臥位、座位、立位ともに5歳位まで(生涯継続するとすることもある)

 

 3)頸筋性(頸の立ち直り反応)

⚪︎体に作用する頸の立ち直り反射(反応) 

(neck righting reflex(reaction) on the body : NOB)

頸部と体感がねじれている場合に頸筋群の固有感覚受容器が刺激されて、頚部の位置を起点に頚部・胸部・腰部・骨盤がその方向に丸太様に全体的に回転し体幹の回旋しねじれを解消する反射です。体を頭と同じ方向に保持するのに役立ちます。

・生後4~6ヵ月位に出現し、5歳位まで 

 

4)体 性

⚪︎体の立ち直り反射(反応)

(body righting reflex(reaction))

 

1)頭に作用する体の立ち直り反射(反応)

(body righting reflex(reaction) on the head:BOH)

体の一部が支持面に触れることで、固有感覚受容器、触覚受容器からの刺激によって、頭部の位置を正常位にする。

・生後4~6ヵ月位に出現し、5歳位まで 

 

2)体に作用する体の立ち直り反射(反応)

(body righting reflex(reaction) on the body:BOB)

頸部と体幹がねじれている場合に頚部の立ち直り反射の逆で体幹の骨盤を起点に骨盤・腰部・胸部・頸部の順に回旋しねじれを解消する。

・生後4~6ヵ月位に出現し、5歳位まで 

 

 ◯ランドー(ランドウ)反射(反応)

(Landau reflex(reaction))

乳児をうつぶせの状態で腹部を抱えて水平にすると、頭を挙げて水平を保とうとし頭を下げると腰を曲げてハイハイをするような恰好をする反射(反応)。また、ランドー反射は緊張性迷路反射(TLR)を抑制する反射で、筋肉を強くし、視覚と平衡感覚の同調をさせるために発達していきます。

・生後約6ヵ月位に出現し、18ヵ月位まで 

 

◯両棲類反射(両棲動物的反応) 

(Amphibian reflex(reaction))

両生類反射は、片側の骨盤を上げると、同じ側の腕、股関節、膝が自動的に屈曲する反射(反応)で、この反射は、まずうつぶせの状態(お腹)で、次に仰向けの状態(背中)で発達します。

両生類反射は、非対称性緊張性頸反射(ATNR)の統合が ある程度進み、腕や脚の動きが頭の位置 に依存しなくなったときに初めて発達しはじめます。子供が横這いを覚える前に両生類反射を発達させる必要があり、この反射は子供が足を曲げたり、手と膝で立ち上がったりするのを助けます。両生類反射の発達は脊髄ガラント反射を統合するのに役立ち、この反射が発達しない場合、脊髄ガラント反射、場合によっては ATNR反射が統合されていないことを意味することがあります。両生類反射が発達していない成人は、しばしば下半身が不器用になり、脚に緊張を感じるようになります。

・生後4~6ヶ月に出現し生涯継続 

 

大脳皮質レベルの姿勢反射

 

◯傾斜反応(tilting reaction)

地面(支持面)が傾斜、不安定で身体の軸を崩すほどの状態の際に傾きとは逆の方向に身体が立ち直ろうとする反応で臥位、座位、四つん這い、立位があります。

 

・臥 位:腹臥位・背臥位で傾斜台を一方向に傾けると傾斜の上側の手足を伸ばし、床面を抑えようとする。体幹と頭部は上側へ回旋し、顔面を上側へ向ける。下側の肢は体重支持のために筋緊張の増強が起こる。腹臥位で傾斜反応が出現すると肘を伸展して両手に体重を負荷できるようになる。約7~8 ヵ月位で発現し、生涯継続

 

・座 位:椅子に腰掛け傾斜台を一方向に傾けると傾斜の下側の上肢が外転、伸展し、体幹と頭部は上側へ回旋し、下側の下肢は外転し体幹の支持面を広げようとする。支持なしで座位がとれるようになるには背臥位と座位での傾斜反応が必要になる。約7~8 ヵ月位で発現し、生涯継続

 

・四つん這い:四つん這いで傾斜台を一方向に傾けると傾斜の下側の上、下肢が体重支持のために筋緊張の増強が起こり外転、伸展する。四つ這いでの移動ができるためには、座位でのバランスが十分とれ、四つ這い位での傾斜反応が出始める必要がある。約9~12ヵ月位で発現し、生涯継続

 

・立 位:傾斜台を一方向に傾けると傾斜の下側の下肢が伸展し、体重を支えるのに十分な筋緊張を示し、上側の下肢は股、膝で屈曲し、上側の骨盤の上昇が起こり、体幹と頭部が上側へ回旋する。歩行のためには、四つ這いでの傾斜反応が完全に出現し、立位での傾斜反応が必要である。また、走ることができるためには、立位での傾斜反応が完全になることが必要である。約12 ヵ月位で発現し、生涯継続

 

◯パラシュート反応(保護伸展反応 )

( parachute reaction)(腕と手に関する姿勢反射) 

乳児の両脇を持った状態で体を水平に保ち急に頭を下げるか もしくは座位で前方・側方・後方に倒すと手を広げて体を支えようとする姿勢反応です。パラシュート反応は転んだときとっさに手が出せるようになるための基礎となります。

・前方:6~7 ヵ月位で発現し、生涯継続

・側方:7~8ヵ月位で発現し、生涯継続

・後方:9~10ヵ月位で発現し、生涯継続

 

◯ホッピング反応

( Hopping reaction)(足に関する姿勢反射)

立位における傾斜反応で 立位にした乳児を支え前後左右に傾け倒そうとすると倒れないように足を踏み出し平衡を保とうとする姿勢反応です。伝い歩きが今現在できていなくてもホッピング反応が現われているともうすぐ伝い歩きができる状態だと判断することもできます。約15~18ヵ月位で発現し、生涯継続

 

◯ステッピング反応(足踏み反応)

(Stepping reaction)

両足に体重をかけ立位保持にした乳児を前後左右の一方向から押す(又は引く)と、左右の場合は一方の足が押された側に交叉して体重を支え、前後では、押された側に一歩足を踏み出し体重の移動をスムーズにする反応。つかまり立ち、つたい歩きができるようになるころより出現し始め、歩行がころばないでできるようになる。18ヵ月ごろに前後・左右ともに完成し、生涯継続 

 

◯背屈反応

(dorsiflexion reaction)

子どもの腋窩を後方から支えて、後方へ体を傾斜させると、足関節が背屈し体を垂直に保とうとする反応。約10~12 ヵ月位に発現し、生涯継続

 

◯シーソー反応

(see-saw reaction)

子どもを立位にし、同則の片足・片手とを握り、握った足を床から持ち上げ、片足で立たせる。

握った手を前方に引き、さらに側方へ引くと、平衡を保つために、力を入れて踏ん張り姿勢を保とうとする反応。約15 ヵ月位に発現し、生涯継続 

 

姿勢反射(反応)の反射(反応)名は 日本と海外 又は 専門医等で呼名が 異なる場合があります。また、同様に姿勢反射(反応)の発生期間なども若干異なる場合がありますので、あくまでも目安として参考にして下さい。また子供の発達のペースには個性などの違いもあり 早い遅いがあって当然ですので、あまり神経質になったり氣にし過ぎてしまうと お子さんにとってよくない影響を与えてしまう可能性もありますので 氣をつけてください。優しく見守ってあげることも大切です。

 

 

以上のような姿勢反射(反応)が

 

たくさんありますが

 

姿勢反射(反応)が出現

 

発達するためには

 

原始反射の発達統合が

 

重要な鍵になってきます。

 

 

次回は今回と重なる部分があるかもしれませんが

 

もう少し詳しく姿勢反射(反応)について

 

解説をしていきたいと思っております。

 

皆様のお役に少しでも立てれば幸いです。

 

【お読み頂きまして ありがとうございました】