小田原市庁舎に、「交通インフラ開発室」が設置され、そのメンバーが集まりました。
小田原市としては初めての交通インフラ整備、事業化を進める部署です。
メンバーは以下です。
公共インフラ開発室 曽根室長、成田(企画から)、佐々岡(社会保障から)
水上(上下水道事業から)
大坂教授(アドバイザー)
以前、西湘信用金庫の経営企画部企画課の人が曽根室長を訪ねました。
実は彼らは、グランドデザインを構築していました。その模様をまた後日、曽根室長に説明に来るのですが、彼らが内部で調査研究している様子をかいつまんで記載してみます。
登場人物は西湘南信用金庫 調査企画部の以下の3人。
佐伯(さえき)直哉/調査企画部・副部長
三輪(みわ)俊介(35)/調査役
井上(いのうえ)美沙(29)/企画担当
ブレーンストーミングを重ねながら企画をまとめていました。
佐伯氏はPCの「小田原市公共交通再構築案(素案)」ファイルを見ながら、
「さて。市からの打診は“非公式”とはいえ内容は重い。公共交通の再構築に、我々がどこまで関与できるか。今日はその整理をしたい。」
三輪は頷き、手元のタブレットを操作する。
「まず、現状の交通需要です。高齢化率はすでに30%を超え、特に早川・板橋・久野の丘陵地帯では“移動困難者”が増えています。既存のバス事業者は運転士不足で減便傾向。このままでは、5年以内に“交通空白地帯”が拡大します。」
井上さんは、
「市の財政では、単独でのインフラ再構築は不可能です。国の補助金を使うにしても、民間資本の参画が前提になります。市としては“第三セクター方式”を検討しているようです。」
佐伯は腕を組み、少し考え込む。
「つまり、市は“我々に声をかけざるを得ない”状況ということか。」
「はい。地域金融が動かないと、この規模の再構築は成立しません。ただし、我々が出資する以上、投資としての合理性が必要です。」
井上が資料をめくりながら口を開く。
「そこで、電化交通――トロリーバスやEVバスの導入が鍵になります。国の脱炭素補助金が使えますし、地域エネルギー会社との連携で“電力供給事業”として収益化できます。」
「電力と交通の連携か。ほうとくエネルギーや湘南電力が乗ってくれば、話は早いな。」
「観光面でもメリットがあります。小田原城、早川漁港、箱根口を結ぶ“観光動線”を強化すれば、乗客数の底上げが期待できます。」
「それこそ大昔は電力会社が余る電力の使い先として電鉄会社を作った、と、本で読んだことがあった。その再来か?」
「観光協会やホテル組合も巻き込めます。第三セクターの“地元枠”として出資してもらう形です。」
佐伯は資料を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。
「……なるほど。地域経済の衰退を止めるための“実業投資”として、筋は通っている。
我々が動く理由は十分にある。」
「ただし、リスクもあります。利用者数が伸びなければ、リース料収入が安定しません。」
「そのために、上下分離方式を採用します。インフラは第三セクターが保有し、運行は民間に委託。我々はインフラ部分への投資で安定収益を確保できます。」
「……よし。この方向で“企画案”をまとめよう。市長との非公式会合に間に合うよう、三日以内に初稿を出す。」
「了解です。」
このように、会議は進み、企画書が構築されます。
<つづく>
ここに記載の、金融機関や個人は、実際に存在するものではありません。
