青林舎の今

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2004年4月開塾の、伊集院の小さな学習塾です。
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前回、大学の授業料、特に国立大学の授業料が、物価上昇に比べて、

とんでもない値上がりをしたことを確認した。

今回は、そのいきさつについて考えてみよう。

 

まず、大学進学率について。

大学進学率は、1960年ごろまで、あまり変化がなく10%前後だったが、

その後、大きく変化する。

1960年・・・10.3%

1968年・・・19.2%

1970年・・・23.6%

1972年・・・29.8%

1976年・・・38.6%

この後は、あまり変化なく、

1993年・・・40.9%

1999年・・・49.1%

2010年・・・56.8%  (以上「年次統計」より)

 

1960年から1976年の十数年で、大学進学率は実に、10%から40%になったのである。

つまり、10人に1人が大学生だったのが、4人になったわけだ。

時は、高度経済成長期、

ベビーブーム世代、およびその後輩たちがこぞって大学に入った。

豊かになりつつあった親たちが、よりよい給料が得られるように子供たちを大学に行かせた。

子を思う親心だ。

ジイも、自分の親に頭が上がらない。

 

また、ジイは、

この辺鄙な塾まで、しかも仕事で疲れた体に鞭打って、

塾生を送り迎えしてくださる保護者の方にも頭が上がらない。

感謝!!!

 

招かれざる客。

塾生を保護者の方の車まで送って、

玄関に戻ると、お客さん。

玄関灯に集まる虫に誘われて、やって来たお方。

他に、ヤモリ夫婦、イモリも。

そのうち、彼らの画像もアップしよう。

 

 

さて、大学進学率が伸び続けた結果、大学生の国公立、私立の内訳は、

1960年に40:60だったのが、70年には25:75になった。

国立大生に比べて、私立大生が増えたのだ。

現在(2017年)が、26:74だから、1970年以降はあまり変化していないことになる。

 

そして、私立大生が増え続けるのに合わせて、1960年代には私立大学の学費値上げが続いた。

 

   私立文系の授業料の国立に対する倍率

    1950年・・・2.3倍

    1960年・・・3.8倍

    1970年・・・6.4倍

   私立理系の授業料の国立に対する倍率

    1967年・・・8.1倍

    1970年・・・8.2倍 

   (いずれも「年次統計」より、私立理系のデータは1967年からしか出ていない)

 

その結果、国立と私立の学費格差が大きくなった。

現在(2016年)は私立文系、理系はそれぞれ、国立の1.4倍、2.1倍だから、

70年は、国立に比べ、いかに私立大学の学費が高かったか、わかる。

 

そこで、世の中はどう動いたか。

日本では、「私立大学の授業料を下げよう」という方向にはならない。

 

一部の学校を除いて、私立の学校は当然利益を追求する。

最近の「モリ、カケ」を思い出してほしい。

経営者の利益を確保して、授業料を下げるには、国家財政からの支出が不可欠だ。

 

授業料は下げずに、さらなる利益を追求するためにも、国家財政からの支出が必要だ。

「モリ、カケ」は裏の支出だけど…

 

現在、私立高校授業料の家計負担が少し安くなっているのは、支出金のおかげだ。

これは、もう前に述べた(大学の授業料について考えよう!(1))。

2010年、民主党政権の時に高校無料化に前進したが、

残念ながら、その後の政権によって所得制限が入った。

その政権のお友達が「モリ、カケ」だ。

そして、OECD30か国中最下位という状態は不変である。

 

さて、そうすると、日本では必然的にどうなるのか。

1960年代から、国立大学の授業料値上げの動きが出てくるのである。

私立大学の授業料値上げに対しては、批判はあっても、値下げ要求にはならない。

「まあ、無理だ。」というあきらめ。

「需要と供給の関係だ。」という達観。

「国立大学が安すぎる。」という妬み。

 

我が国の国民性の悪い一面。

 

そして、1972年4月、国立大学の学費は一挙に3倍に値上げ。

ジイは3年生だったので、影響は被らなかったけど、

我が事として考え、世の行く末を案じる想像力だけは持っていた。

だから、忘れられない出来事になった。

 

つまり、国立大学と私立大学の授業料格差を埋めるために、国立大学のほうが値上げされたのだ。

 

では、格差は縮まったのか。

そうはならなかった。

国立の値上げに合わせて、私立も値上げした。

「国立大学が安すぎる。」という妬みは、何も生まない。

むしろ、逆に作用した。

 

           私立の授業料と、国立に対する倍率、金額差(「年次統計」より)

             私立文系                  私立理系           国立

                  授業料、 倍率、  金額差       授業料、 倍率、  金額差      授業料

  1970年・・・ 76,400円、6.4倍、  64,400円      98,400円、8.2倍、 86,400円    12,000円

  1980年・・・304,000円、1.7倍、124,000円    407,800円、2.3倍、227,800円       180,000円

  1990年・・・468,320円、1.4倍、128,720円    677,940円、2.0倍、338,340円       339,600円

  2000年・・・660,480円、1.4倍、181,680円    928,730円、1.9倍、449,930円       478,800円

  2010年・・・722,751円、1.3倍、186,951円    999,934円、1.9倍、464,134円       535,800円

  2016年・・・750,122円、1.4倍、214,322円   1,100,963円、2.1倍、565,163円       535,800円

 

皆さんはもうわかったと思う。

私立の学費の国立に対する倍率だけ見ていてはいけないのだ。

倍率だけだと、格差が縮まったかのような錯覚に陥るが、

金額差は一貫して増え続けている。

 

2016年の国立との金額差の、1970年に対する倍率は、

私立文系でこそ3.3倍と健闘しているが、

私立理系では、何と6.5倍である。

前回見た、3.5倍という物価上昇を考慮しても、

私立と国立の金額差は縮まってはいないことが分かる。

それどころか、むしろ、理系の格差は拡大の一途をたどっている。

 

また、国立の学費の値上げだけ見ていてもいけない。

国立の学費値上げは、私立の学費値上げをカモフラージュする効果を果たしたのだ。

まるで、どこかの高級官僚の目くらましの文章。

「国立大学が安すぎる。」という妬みは、あざ笑いにもてなされる。

「兵農分離」を持ち出すまでもなく、我が国の民は分断され続けてきた。

 

そこで、ここからまた考えなくてはいけない。

なぜ、こうなってしまったのか?

曲がり角はどこにあったのか?

 

次回に乞う、ご期待。

                     ジイ ねこ

 

国立大学の授業料が1970年から2017年にかけて、

年間12,000円から535,800円になったことは何回も述べた。

 

つまり、44.65倍。

 

そこで、大学進学率、サラリーマンの年収、大卒初任給、鹿児島県の法定最低賃金、消費者物価指数と

比較してみよう。

それぞれの項目については、前回の「大学の授業料について考えよう!(3)」を見てほしい。

また、それぞれの金額やパーセントの後ろの①~④の数字は前回のクイズの正解選択肢である。

 

消費者物価指数とは、

家計消費の費用が物価の変動によって、どう変化したかを指数で示したものである。

家計消費の各品目のウエイトは、総務省統計局実施の家計調査の結果等に基づく。

したがって、最近の交通・通信費の割合増加等も一応考慮されている。

簡単に言うと、

各家庭の目で見て、物価がどれだけ上下したのかを推し量ることができる数値である。

ここでは、1970年を1としてみた。

消費者物価指数の変動は、ガベージニュース(Garbagenews)より引用した。

(garbageって、「生ごみ」とか、「無駄話」、「不要データ」という意味だけど、「有意義なデータ」だなあ。)

 

                       1970年              2017年        その間の変化(倍率)

国立大学の授業料         12,000円             535,800円           44.7倍

私立文系の 〃            76,400円        750,122円(2016年)        9.8倍

 〃  理系の 〃                 98,400円         1,100,963円( 〃 )      11.2倍

大学進学率               23.6%②         55.1%(2013年)④       2.3倍

サラリーマンの年収        871,900円②  4,733,600円(2012年) ④           5.4倍

大卒初任給               39,900円②           201,800円( 〃 ) ④           5.1倍

鹿児島県の最低賃金   261円(1977年)①           737円(2018年)②     2.8倍

消費者物価指数          1                             3.5                         3.5倍

 

さて、これを見て、皆さんはどう考えるだろうか。

もう、ジイが言うまでもないよなあ。

 

招かれざる客。

ある日の黄昏時の自然観察園。

チビタが注視するので、見ると、野ウサギではないか。

帰郷した折には、時々見かけたのだけど、

最近は訪れなくなっていたお方。

 

 

ひとしきり、食べると、去っていった。

この後も、数回やって来て、小学生が喜んでいた。

こんな客なら大歓迎だ。

古い言い方だけど、ジイはウサギ年生まれ。

今年は良い年になるといいなあ。

今、彼(彼女?)はどうしているんだろう?

野良猫やイタチ、タヌキに食われていないといいけどなあ。

 

 

さて、言うまでもないことだけど、

それでも、言わせてもらおう。

他の数値に比べて、国立大学の授業料の値上がりはひどすぎる!

 

そこで、消費者物価指数の変動に合わせて授業料が変化したとして、試算してみよう。

つまり、物価変動と同じ程度だったら、現在の授業料はいくらになったはずか、ということ。

  国立大学  42,578円(月  3,548円)

  私立文系  306,299円(月25,525円)

   〃 理系  349,138円(月29,095円)  

 

この金額なら、今の君たちはアルバイトで稼げる。

大学生で、月にアルバイト料が5万円という人は珍しくないだろう。

国立大学だったら、1月の授業料は1日で稼げる。

 

ところが、現在の実際の授業料は、

  国立大学   535,800円(月44,650円)

  私立文系   750,122円(月62,510円)

   〃  理系  1,100,963円(月91,747円)

  

これはかなりハードな金額だ。

入学金、教材費、下宿代、交通費等々を考慮すると、大学に行くのは大変だ。

アルバイトだけでは賄えない。

あまり豊かではない家庭の場合は、やりくりに苦労することになる。

 

日本はそういう国になってしまった。

 

もう一度、昔の大学進学事情を振り返ってみよう。

 

ジイは、高校でも大学でも奨学金を借りた。

みんな貧しかったけど、ジイは、まあ親孝行だったわけだ。

もう昔の話で、金額ははっきりとは覚えていないけど、

高校で月3,000円、大学で月8,000円(確か半額程度が返済不要、つまり給付型)。

 

昔は給付型の奨学金もあった。

もちろん、完全な給付型ではなくて、

卒業後、まじめに返済して、借りた額の半額程度に達したら、

申請すると残額は返済免除になるというもの。

「ちゃんと返したら、半分はおまけしよう。」というわけだから、

当時の政府は、学生を厚遇してくれたし、度量もあった。

それだけに、最近のせこさとレベルの低さは目に余る。

 

大学の授業料が月1,000円で、奨学金が月8,000円。

大学の寮費が朝夕の食事代も含めて5,000円。

 

ジイたちは、生活費も含めて、アルバイトで十分賄うことが出来た。

競馬場の警備の仕事で、1日で1万円というアルバイトもあった。

しかも、学生にしては豪華な昼飯付き。

家庭教師も、週1回で月1万円前後はもらえたんじゃないかなあ。

だから、アルバイトに忙殺されることはなかった。

自由な時間が多かったので、飽きるほど本が読めた。

本当の勉強ができた。

 

今の大学生はかわいそうだ。

考える暇がない。

本当の勉強をする時間がない。

 

ちなみに、ジイが1975年にコンピュータ・ソフトの会社に就職したとき、

本給は、たしか月45,000円ぐらいだったと記憶している。

コンピュータは、アメリカの会社からのレンタルだったので、夜も動かし続けていた。

そのせいで、月の残業時間100時間は当たり前で、

残業手当や休日出勤手当が、本給と同じぐらいだった。

不平不満を抱えながら、疲労困憊を若さで乗り切らざるを得なかった。

そんな時代だった。

 

しかし、今よりも明るかった。

みんな未来を信じていた。

 

その未来が、どうしてこうなってしまったのだろう。

 

次回は、「なぜ、大学の授業料がこんなに値上がりしたのか」について

考えることにしよう。

 

                                 ジイ ねこ

 

前回の質問への回答のコメントはゼロだった。

まあ、人気のない塾の、ジイのブログだから仕方がない。

気落ちしないで、前回の「大学の授業料について考えよう(2)」の答えを発表しよう。

 

①12,000円!

 

何と、月1,000円。

ウソだろう! という声が聞こえるようだけど、本当の話なのだ。

 

1970年ごろまでほぼ横ばいで、それ以降急激にアップした。

現在は前回も記したように、535,800円だ。

44.65倍!

 

なぜ? どうして?

 

1970年(昭和45年)に大学1年生だったジイは、痛みと共に思い出す。

1972年、ジイが3年生になる時に、この年の入学生から一挙に3倍に値上げされた。

 

国立大学の授業料の年変化を記してみよう。(「年次統計」より)

   年      年額(円)

1950(昭和25)   3,600

  +2年

1952( 〃 27)     6,000

  +4年

1956( 〃 31)     9,000

  +7年

1963( 〃 38)    12,000

  +9年

1972( 〃 47)    36,000

  +4年

1976( 〃 51)  96,000

  +2年

1978( 〃 53)   144,000

  +2年

1980( 〃 55)  180,000

  +2年

1982( 〃 57)   216,000

  +2年

1984( 〃  59)   234,000

  +1年

1985( 〃 60)   252,000 

  +2年

1987( 〃  62)   300,000

  +2年

1989(平成 1)  337,800

  +1年

1990( 〃  2)   339,600

  +1年

1991( 〃  3)  375,600

  +2年

1993( 〃   5)   411,600

  +2年

1995( 〃   7)   447,600

  +2年

1997( 〃  9)   469,200

  +2年

1999( 〃  11)   478,800

  +2年

2001( 〃 13)   492,300

  +1年

2002( 〃  14)   496,800

  +1年

2003( 〃  15)   514,800

  +1年

2004( 〃  16)   520,800

  +2年

2006( 〃 18)   535,800

  +11年

2017( 〃 29)     〃

 

1970年代前半までは、大きな変化はなく、値上げの間隔も4~9年だったが、

その後、1~2年おきに値上げされていることが分かる。

 

535,800円になってからは、何と12年間値上げなし。

善政のおかげだろうか?

 

ジイはひねくれものなので、そうは思わない。

値上げを重ねた結果、

前々回見たように、日本はOECD加盟国30か国中、ダントツで授業料が高くなってしまった。

29番目の韓国と比べても国立大学の授業料は2倍以上。

 

先進国を標榜する日本としては、いくら何でも恥ずかしい数値だ。

政権党も、新公約に盛り込まざるを得なかったというのが正直なところだろう。

 

このように、国立大学の授業料は値上げを続けてきたわけだが、

この値上げは、妥当なものなのだろうか?

 

大きな変化が起きた1970年代から現在にかけて、

日本社会の諸変化との比較を通じて考えてみよう。

「年次統計」より引用した。

 

大学進学率は?(1970年)・・・大学・短大に進学した人数÷3年前の中学卒業者数

①11.8%  ②23.6%  ③35.4%  ④55.1%

 

  では、現在は?(2013年)

  ①11.8%  ②23.6%  ③35.4%  ④55.1%

 

サラリーマンの年収は?(1970年)・・・手当も含む、税金を引かれる前の金額。

                       従業員10人以上の企業、役所。

①435,950円  ②871,900円  ③1,462,850円  ④2,053,800円

 

  現在は?(2012年)

  ①1,898,800円  ②2,208,800円  ③3,353,800円  ④4,733,600円

 

大卒初任給は?(1970年)

①19,950円  ②39,900円  ③64,600円  ④89,300円

 

  現在は?(2012年)  

  ①89,300円  ②129,300円  ③169,800円  ④201,800円

 

法律で定めた、鹿児島県の最低賃金(時給)は?(1977年)

①261円  ②361円  ③461円  ⑤561円

 

  現在は(2018年)

  ①637円  ②737円  ③837円  ④937円

 

今度こそ、コメント欄で応募してください。

 

次回は、これらの値と大学授業料の変化とを比べて考えてみよう。

 

                    ジイ ねこ

前回、大学の授業料をめぐって、世界旅行に出かけた。

「アメリカの授業料は日本よりずっと高い」という評判は、真実ではないことが分かった。

アメリカの州立大学は、日本の国立大学よりも30万円も安い!

給付型奨学金もある!
 

流布されている情報は何なのだろうか?

私立大学だったり、給付型奨学金を受けられなかったりという場合のことを言っているのだろうか?

それにしても、日本より30万円も安く、しかも給付型奨学金を受けるチャンスはあるわけだから、

日本よりずっといい。

 

しかも、高校は授業料無料!

日本人は騙されているのではないだろうか?

 

今回は、タイムトラベルに出かけよう。

ジイがうら若き紅顔の美少年であったころに。

 

時は1970年(昭和45年)、

ジイは、束縛から逃れられるという、ただその一点の理由から東京へと旅立った。

 

束縛とは、家族であり、郷里の共同体であった。

(ごめんね、ご両親様、共同体の皆様。)

 

さて、その時、国立大学の授業料はいくらだったと思う?

現在の授業料は前回書いたように、535,800円だ。

 

①12,000円  ②36,000円  ③120,000円  ④360,000円

 

正解発表は次回!

今回ばかりはコメントで、応募してほしいなあ!

 

                      ジイねこ

 

2017年10月の総選挙で政権党が次のような公約を打ち出した。

ジイには、唐突で、違和感がぬぐえない公約だったが、

一部の保護者の方や卒業生には受けたようだ。

皆さん、覚えていらっしゃるだろうか。

 

「教育の無償化・充実強化」

 

よく読むと、

 

「『人づくり革命』を進めるため、

 再来年(2019年)10月に消費税率を10%に引き上げた際の増収分の使いみちを見直し、

 子育て世帯へ投資を集中することで、『全世代型社会保障』にかじを切る。

 具体的な使いみちとしては、2020年度までに、3歳から5歳までのすべての子どもの

 幼稚園や保育園の費用を無償化し、

 所得の低い家庭の子どもに限定して高等教育の無償化を図るため、

 給付型奨学金(ジイ注:返済不要という意味)や授業料の減免措置を大幅に拡充する。」

(「高等教育」とは、簡単に言うと大学、短大、高専、専門学校のこと)

 

つまり、正確な意味では、「教育の無償化・充実強化」ではない。

「所得の低い家庭の子どもに限定しての高等教育の無償化」であり、

しかも、「無償化を図る」のであり、

当面はそれは、「給付型奨学金や授業料の減免措置を大幅に拡充する」だけである。

 

そして、それらも、消費税10%という条件付きである。

「低所得家庭は、消費税アップで生活に苦しむことと引き換えに、

  子どもが給付型奨学金を受けたり、授業料の減免措置を受けることができる」

ということだ。

残念ながら、「生活必需品は無税」とは言っていない。

 

中高所得家庭は「高等教育の無償化」とは無縁である。

 

「教育の無償化・充実強化」というキャッチコピーのみが独り歩きしたのだ。

耳障りの良い言葉は政治家の常とう手段とはいえ、これはあまりにもひどいではないか。

 

さて、今年度の予算ではどうなったか?

近年の非課税世帯の大学進学者は1学年約6万人 ⇔ 18年度給付型奨学金を受給は約2万人

                                   国公立自宅生2万円

                                     〃 下宿生3万円

                                   私立   自宅生3万円

                                     〃  下宿生4万円

非課税世帯の三分の一の大学生のみだ。

しかも国公立自宅生で年24万。

これでは学費は賄えない。(後で述べるが、初年度、国公立が80万前後、私立は150万前後)

貸与の奨学金(返さねばならない)併用でも無理。

したがってアルバイトをするしかない。

これが現状。

公約の2020年はもうすぐだが・・・

 

ついでに、保育についてみてみると、

認可保育所落選で、待機児童(認可保育所に入れなかった児童)となった0~2歳児は、

17年4月は2万6000人(厚生労働省発表) ⇔ 18年4月は3万5000人(共同通信調査)

対象や集計方法が異なるため、単純比較はできないらしいが、良くなっているとは言えないだろう。

 

そして、政府が2020年に向けて、「低所得家庭の高等教育無償化」の制度設計を始めた。

住民税非課税世帯(年収250万円未満)の子どもの大学授業料は国立は免除私立は一定額支給

ただし、高校の成績なども考慮という条件がある。

大学に入学できても、高校の成績が悪かったら、ダメ!

なんでこんな条件が付くの?

おかしくない?

 

短大、専門学校については不明だ。

数が多いから、給付型奨学金が出ることになっても、厳しい条件がつき、

差別選別されるのは間違いない。

 

大学についても、実は、他にも条件が付いている。

そして、それは「大学の自治」にかかわる重大なことである。

 

「低所得家庭の高等教育無償化」の対象となる大学は、

企業等での実務経験のある教員の配置、

外部人材の理事への起用、

成績評価の厳格な管理、

財務・経営情報の開示等が条件。

 

公費を投入する以上、大学の経営状況の開示など一部納得できるものもあるが、

教育内容に関わるものが多い。

教育の中身の改革と、学生への支援とは別問題である。

 

大学に対して、国家が介入したらどうなるか?

 

日本では、国家介入の例は枚挙にいとまがない。

 

政府が、国家公務員の人事を支配したため、国家公務員が矜持を失い、

「モリ・カケ」が生まれたと言われて久しい。

 

マスコミはすでに牙を抜かれて久しい。

広告料や許認可権を通じて支配の網の目が張り巡らされた。

政府の「ちょうちん持ち」と化した新聞社やTV局もある。

 

裁判官も検察官も人事を通じて支配されている。

検察庁は、「モリ」に関して財務省の文書改ざんを不起訴とした。

 

また、政権党は所属の国会議員に、「1000人党員を獲得せよ」というノルマを課し、

ベスト10とワースト10を公表するとともに、目標1000人に足りなかった2割の議員に、

不足1人につき2000円の罰金を科したらしい。(最下位は100人台。)(2018.5.29毎日新聞)

 

かわいそうに、政権党の国会議員の方々も締め付けられているようだ。

同じ政党の仲間にこの仕打ち。

最下位の100人台しか獲得しなかった議員にエールを送りたいのはジイだけだろうか。

すごい世の中になったものだなあ。

 

まるで、「国家非常事態宣言」下にある国みたいだ。

 

こんなことを政府は考えているのだ。

 

招かれざる客。

「梅の木の上で、昼寝かな?」と思っていたら、

なんと、小鳥を待ち伏せしていたのだった。

 

猫は小鳥が好きだねえ。

失敗に終わり、その後はやって来ていない。

 

チビタちゃんという箱入り娘がいるので、

最近、いろいろな野良が出没しているようだ。

 

 

公約への違和感から、だいぶ政府批判になってしまったが、

本題の大学の授業料について考えてみよう。

 

日本での入学初年度に必要な学費の目安(2017年度)

          入学金 授業料 施設費他 合計

国立大       28万  54万   ――     82万

公立大(地域内)24万  54万   ――     78万

      (地域外)40万  54万   ――     94万

私立大(文系)   26万  74万   23万     123万

      (理系)  27万  104万     33万     164万

      (薬)      36万  146万  30万      212万

 

     参考程度に、合計額

     公立大(地域外)医学部 123万(授業料は54万、6年だから+270万)

     私立大       〃   729万(   〃    269万、   〃  +1345万)

 

大学の初年度納付金の国際比較(文科省「教育指標の国際比較」2006年)

日本      私立 130.5万

          国立   81.7万

アメリカ  州立    50.0万

イギリス  国立    22.9万

フランス 国立      1.9万(登録料)

フィンランド  国立     0

 

これでは、おおざっぱなので、

OECD(経済協力開発機構)加盟30か国について、高校授業料も含めた比較をしてみよう。

(国会図書館収集資料)

 

*フランスやとフィンランドと同程度の国が14か国

  (高校授業料無償化、大学授業料無償化、給付型奨学金あり)

 ・フランス、フィンランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、ギリシャ、

  ハンガリー、ポーランド、チェコ、アイルランド、スロバキア、ルクセンブルク、

  ドイツ、アイスランド(国立大以外は入学金必要)

 

*高校授業料無償化、大学は無償ではないが給付型奨学金がある国が11か国

 ・オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、オランダ、ニュージーランド、

  スペイン、トルコ、イギリス、アメリカ、スイス(一部州は高校授業料有料)

 

*高校授業料無償化、大学有料、給付型奨学金なしの国が1か国

 ・メキシコ

 

*高校授業料有料、大学有料、給付型奨学金ありの国が2か国

 ・イタリア(国立大授業料12万)、ポルトガル

 

*高校授業料有料、大学有料、給付型奨学金なしの国が2か国

 ・韓国(大学授業料は国公立8.4~24万、私立22.1~85.6万)

  日本(            〃       53.58万、 〃   83.48万)

 

どうだろうか?

日本は、30か国中最下位!

 

30カ国のうち、授業料が無料なのは、高校26カ国、大学14カ国。

日本は2010年にようやく高校無料化へ前進したが、2014年から所得制限が入った。

 

そして、なんと次のような国もある。

・ギリシャ……保護者と別に居住し、所得水準が一定以下の場合、手当を支給

・ポーランド……経済的困難な学生に家賃手当支給

・ドイツ……大学生は地下鉄の定期券が無料

・カナダ…… 〃  医療費がすべて無料。

 

日本では、ギリシャの国家財政や経済について、からかい気味の報道が多いが、

どちらの国民のほうが幸せなのだろうか?

 

高校、大学の授業料や給付型奨学金についての国際比較については、

色々な考えがあり、諸説がインターネット上にもあふれている。

 

「日本は、国民負担率(社会保険料と租税合計額の国民所得に対する比率)が

 低いのだから仕方がない」

と今回のジイの説を否定するものもある。

 

しかし、よく見ると、日本の国民負担率は42.5%で、イギリスの45.9%とさほどの違いはない。

イギリスは多数の難民受け入れ国だ。

しかも、消費税率10%になれば、日本は国民負担率が低いとは言えなくなる。

 

ドイツの52.5%やスウェーデンの56.0%とはかなり違うが、

生活必需品への課税の有無など、消費税の仕組み等も考慮しなくてはいけない。

 

結局、「どういう社会を目指すのか」ということに行き着くかもしれない。

 

まだまだ、考える必要がありそうだ。

 

                       ジイ ねこ