2024 年、2025 年と MLB で2連覇を果たしたロサンゼルス・ドジャース。
特に 2025 年は、地区優勝はしたものの他地区の優勝チームより勝率が低かったので、ポストシーズンはワイルドカードゲームから始まりました。
私が日本人だから贔屓目はありますが、3人の日本人選手はいずれもロースターに入り(マイナーで燻っていなかった)、それぞれ連覇に大きく貢献しました。
シーズン序盤で先発ローテーションを期待されていた佐々木は制球が定まらずマイナーに落とされますが、終盤からポストシーズンにかけてブルペンピッチャーとして覚醒しました。
大谷はリーグチャンピオンシリーズで「いまいちばん合理的な野球をやっているチーム」とイチローにいわしめたブリュワーズを相手に、1試合で「投手として 10 奪三振・打者として3本塁打」という漫画でも描けない活躍をしました。
そして高橋はワールドシリーズ4勝のうち3勝(うち1完投)を挙げて、日本人では松井秀喜に続く2人目(投手としては初)のシリーズ MVP に輝きました。
1番・大谷、2番・ベッツ、3番・フリーマンの MVP トリオによる打線は対戦相手に恐怖を与えました。勝負を避けて出塁させたらいきなり無死満塁です。またこの3人には守備にも定評があります。ピッチャーの大谷、ショートのベッツ、ファーストのフリーマンは守備がうまく、特に外野からコンバートされたベッツのうまさが光ります。
現在 MLB で唯一の国外チームであるトロント・ブルージェイズとのワールドシリーズは、さながら「ドジャース対カナダ」の様相を呈していました。その死闘ともいえる激戦を制して連覇を果たしたドジャースですが、決して満足はしていないようです。
ポストシーズンで FA(フリーエージェント)の目玉といわれたカイル・タッカー外野手とクローザーのエドウィン・ディアス投手をどちらも獲得しただけでなく、先発投手のさらなる補強としてタリク・スクーバル投手(サイ・ヤング賞2年連続受賞)をトレードで獲得しようとしています。
ここまでなら「金のある球団は羨ましい」で片付くかもしれません。
しかし一見ドジャースと無関係に見える「ある出来事」が、もしかして関係があるのかもと憶測を呼んでいます。
シンシナティ・レッズの若手有力選手であるエリー・デラクルーズ内野手が、球団の提示した「10 年で2億 2,500 万ドル」の契約を、拒否したのです。
体が資本で長くても 40 代で引退するスポーツ選手にとって、長期契約は喉から手が出るほど魅力的です。たとえ怪我や病気で長期離脱してもクビにされず収入が保証されます。そして2億ドルといえば祖国ドミニカに帰れば一生裕福に暮らせるどころか、おそらく街ひとつ買えます。そしてこの金額は、レッズが球団設立されて現在に至るまでの最高額です。
もちろん貨幣価値の変動があるので昔の契約と単純比較はできません。しかし 24 歳のデラクルーズにその額を提示したのは、「選手としての全盛期にうちの球団で長く活躍してほしい」強い要望だといえます。
しかしデラクルーズはそれを蹴った。背後にはどのような思惑があるのでしょうか。
彼が FA の権利を得るのは 2029 年のシーズン終了後。28 歳になる彼はまさにこれから全盛期を迎えるベストの年齢でしょう。彼はショートとサードを守れます。そしてドジャースのショートのベッツは 2029 年に 37 歳、サードのキケ・ヘルナンデスは 38 歳。まだ活躍できるとはいえ、チームの世代交代のためターゲットになり始めるでしょう。
そう、デラクルーズは FA でドジャース内野陣の後釜の座を狙っているのです。
ではなぜドジャースなのか。確かに現在のレッズはワールドシリーズを常に狙えるほどの戦力ではありません。逆にいえば突出した選手が不在の中でデラクルーズが長く活躍すれば、チームの主力として引退後も名前が残るでしょう。それでも彼はドジャースに行きたい。
理由は簡単です。「大谷翔平と同じチームでプレイしたい」からです。
実はデラクルーズは大谷の大ファンで尊敬していて、とにかく大谷と関わりたくてしかたがないのです。
ドジャースとレッズの試合で大谷がツーベースを打って二塁にくると、彼は試合中にも大谷に近寄って話しかけます。それだけのために日本語も勉強しているといいます。
もちろん大谷も 2029 年にはキャリアの終盤を迎えます。それでもいい、1年でもいいから大谷とプレイをしたい。彼にとってそれは長期契約や金や名声をも上回る、純粋な「特別な選手への憧れ」です。
かつて金にものをいわせて選手を引き抜いて5連覇を果たしたニューヨーク・ヤンキースは「金満球団、守銭奴の選手たち、悪魔の軍団」といわれました。
いまドジャースは確かに金はありますが、選手のほうから「行きたい、入れてほしい」と願う球団なのです。
2029 年、彼らがどうなっているのかは、わかりません。
特に2回の手術と長期リハビリを経験した大谷は、すでに DH に専念しているかもしれません。
そしてデラクルーズも大谷も、現在の活躍が続いている保証はありません。
果たしてデラクルーズの夢は、実現するのでしょうか。
そして前期高齢者の私は、顛末を見届けられるのでしょうか。
いまは、誰にもわかりません。