時のおくりもの 2 | 読書記録

時のおくりもの 2

 この時計が止まるとき、自分の恋は終わる。


 丸いガラスのテーブルの上には、メール作成画面に「さようなら」と打たれて、後はただ送信されるのを待っている携帯電話がある。
 時計が止まったら、それを送信するつもりで、真里子はいるのだ。
 ふと、腕時計に、ぽたりと一滴のなまあたたかい水滴が落ちた。
「いやだ。いやだよ……」
 小、中学校の時は周りのみんなに冷やかされ、デートというデートは数えるほど。高校は、真里子は一緒がよかったが、そうはいかなかった。彼はスポーツで有名な男子校に行ってしまった。
 それでもはじめは連絡を取り合っていたのだが、互いの学校生活の違いにより、ほどなくしてそれも途絶えた。
 最近はたまに、寄ったコンビニで見つけた雑誌に彼が紹介されているのを見たりはする。が、彼の活躍が、彼自身からではなく、雑誌を通して真里子に知れる、それがたまらなく悲しかった。
 どれだけ嫌いになろうと思ったか。だが、真里子は彼が部活に励んで楽しそうに笑っている姿が、夢を追っている姿が好きで、好きでたまらなかった。
 ……終わりにする。
 そうしないと、これ以上、続いているのかさえわからない関係を続けていけば、心がぼろぼろになってしまうのは目に見えている。
 この時計が、止まれば、終わりにできる。もう、傷つかずに、すむ。期待もしないで――
 でもどうしても、こんなに追い詰められた状況にあってさえ、真里子の心の奥底には、期待する気持ちがあった。クリスマスの奇跡が、起きてくれはしないかという。
 そんなことを考えるのはよさなくては。
「10、9、8……」
 なかなかとまらないでいる時計がもどかしく、真里子は試しにカウントダウンをはじめた。
「6、5、4、さ……」
 だが、怖くなってそれもやめてしまった。

続く