7月8日(月)神楽坂Mashrecords「言の葉と修羅ー音楽が生まれるところ」
に出演して下さる踊る犬コロさんを曲のどこがすごいのかも含めてご紹介します。

 

アコギ&ボーカルにエレキギターでロックのグルーブ感を顕現させる
すご腕のお2人。パワーボイスの隼人さんと感情部分を美麗なストラトの音色で表現するめぐみさんのエモーショナルな演奏に圧倒された方も多いでしょう。

このお2人の名曲の中から「葬祭」という曲をご紹介します。

 


この曲は大切な人が亡くなった悲しみに暮れながら夜の街をさまよう人の心模様がデリケートに描かれている名曲で、間奏にアイルランド伝統音楽のフレーズが織り込まれているバラッドです。
冒頭の「帰り道など忘れたよ」という歌詞では大切な人の死に悲しみに暮れる主人公が夜の街に現れ、聞く人はその彷徨をともにするロードムービーのような構成。
曲が進行していくにつれ、心模様が徐々に変化していき、最後の「帰り道など忘れたよ」では、天に召された人にとっての祝祭であると感じるほどに癒され、命の流転の壮大さをも感じさせる終幕になっています。
タイトルも「葬送=祝祭」ということを納得するまでの物語と読み取れます。

この曲は初めて聞いたときにアイリッシュトラッドのフレーズが入っていることもあり、ジョイスの「ダブリン市民」や「フィネガンズ・ウェイク」が描く夜のダブリンを再現したようで衝撃を受けたのですが、ポーグスのシェイン・マガウアンさんが亡くたった時の葬送の模様の動画に心を打たれて作られたとのこと。
キリスト教では死んだ日は天に迎えられる祝祭日であり、アイルランドの民間伝承では死んだ人間はティル・ナ・ノグへ行き、そこで楽しく暮らす十いうことになっているので、死は本人にとっては祝祭であるという基本観念があります。
けれども実際は残された人間にとってはそうもいかない。酒で悲しみを紛らわしながらさまようことになるのですが、そうして夜の街をさまよううちにそれが祝祭であると、悲しみが癒されていく瞬間が見事です。

実は作曲者のハヤトさんはアイルランドに行ったことはないそうで、アイルランドの伝承もご存じないかもしれません。けれども葬送の動画からアイルランドの精神世界の核を射たような曲が作れてしまう感受性と創造力に驚かされます。
さらにこの曲のすごいところは「帰り道など忘れたよ」と同じ言葉を繰り返しながら、最初と最後で感情が全く違っていて、それによって聞く者に救済を感じさせてしまうところです。いや、すごいですね。
これはやはり名酒JEMSONをゆっくりと飲みながら聞いて欲しい!
(この記事は加筆しました)