先日、電車に乗っていたら、

車内放送で「絵金祭開催」のニュースが流れていた。

そんな時期かと思うと同時に、

〝絵金〟がニュースになるんだと

映像を見ながら懐かしさを覚えた。

幕末の土佐に生まれた絵師・金蔵（1812～1876）。

赤岡の「絵金蔵」で販売している、

『絵金読本』

表紙は赤岡町本町二区所蔵の「二月堂良弁杉の由来」

７月の土日には高知県・赤岡で、彼の残した芝居絵大屏風が

夏祭りの宵に軒先に並べられる。

今年は２０日、２１日の土日に、とのことだった。

赤岡町本町一区所蔵「蘆屋道満大内鑑　保名内　葛の葉子別れ」

ゼミで柳田國男の「能と力者」を読んで、

駕籠舁きの話題からふと絵金を思い出したばかり。

時々、須留田八幡宮（するだはちまんぐう）

の祭礼で出される絵金の屏風絵も話題になる。

（こちらは毎年７月１４、１５日開催）

そこでこの時期にぜひ読んでいただきたいのが

山本ひろ子先生の近著『摩多羅神』（２０２２、春秋社）に収録の

「摩多羅神紀行――服部幸雄『宿神論』の向こうへ」

（初出は２００９年『文学』岩波書店）。

服部幸雄先生と出会われた８０年代、

山本先生は叡山と日吉社に没頭していた。という冒頭の話題は、

この春に日吉山王祭に出かけたわたしたちにとってはタイムリー。

４０年を経て、先生の体験を後追いしている。

そして摩多羅神さんについて述べられたあと、

「赤岡のシュクジさま」

「赤岡へ――絵金と芝居小屋」

の節で、絵金、赤岡について語られる。

『隅田川続俤（すみだがわごにちのおもかげ）』法界坊

叡山から日吉社、十禅師、ジャンジョコさん。

一方では塩を運んだ〝塩の道〟で繋がる物部と赤岡……。

ご自身の体験を振り返りエッセイ風に書かれた、

『摩多羅神』の中では〝異色〟の章で読みやすいけれど、

単語一つとっても、大切な、そして深い言葉がちりばめられている。

夏祭りの中の芝居小屋は、招魂と鎮魂の庭だ。服部幸雄さんを始め芸能史の先達たちが、桟敷にずらりと居並ぶ姿を幻視しながら、私は、赤岡芸能座の幕を開けることにしよう。

（山本ひろ子『摩多羅神』第四章　摩多羅神紀行）

本章はこのように締めくくられる。

が、後日談――

山本先生が開催した「弁天座　真夏の特別興行／あかおか芸能の市」が縁で、『黒い翁』・乾武俊先生が山本ひろ子先生の前に登場されることとなる。

参考文献

近森敏夫著『絵金読本』（2006、香南市商工水産課発行）（図版も同書より転載）

山本ひろ子著『摩多羅神』（2022、春秋社）　　　　　

〝絵金〟から『摩多羅神』へ――夏の読書案内