温かい飲み物が恋しい季節です。コーヒーはミルク入りが好きな私が喫茶店でよく選ぶのは「カフェオレ」か「カフェラテ」。でも、よく思います。「オレとラテって、どう違うの?」。コーヒーに限らず、いろんな飲み物にも広がる「オレ」「ラテ」。違いの基本を学んだ上で、実際に街で飲み歩いてみました。(朝日新聞校閲センター・広瀬隆之/ことばマガジン)
カフェオレ(cafe au lait)はフランス語で「lait」は牛乳、カフェラテ(caffe latte)はイタリア語(造語)で「latte」が牛乳。要はどちらもミルク入りコーヒー――。ここまでは比較的知られています。
でも、根本的な違いは製法にあるらしいと知り、全日本コーヒー協会(東京都)に詳しくうかがいました。やはりよく聞かれる質問だそうです。
歴史的には、カフェオレはドリップしたレギュラーコーヒーに鍋で温めたミルクを半々ほどの割合で注いだもの。一方、カフェラテは、エスプレッソマシンを使ったコーヒーに蒸気で温めたミルクを注いだもので、上部の泡立ちが特徴です。
エスプレッソは、ひいた豆にマシンで圧力をかけて瞬間的に抽出します。ドリップコーヒーよりも味わいが濃厚で、カフェラテも味がカフェオレより濃くなるのが普通のようです。豆もそれぞれに適した種類があるといいます。
では、街中のカフェではどう提供されているのでしょう。東京・新宿かいわいのカフェチェーン店をハシゴしてみました。
まずはタリーズコーヒー。「カフェラテ」がありました。泡立ちが高くてエスプレッソ感が強く、コーヒーの味がしっかり出ていました。他に、プロントやサンマルクカフェもメニュー名では「ラテ」だけ。巷のチェーン店では「ラテ」の優勢を感じます。
そんな中、シャノアールの系列チェーン店のカフェ・ベローチェで、「カフェオーレ」「カフェラテ」の両方がメニューにあるのを見つけました。一緒に注文して比べました。
オーレの見た目はコーヒーとミルクが混ざった薄茶色ですが、味はコーヒーが勝ってコーヒー牛乳のような感じではありません。一方、カフェラテは泡立ちがしっかりしていて、そのせいか、カップがオーレよりやや大きめ。泡の奥のコーヒーの味わいが濃厚でした。
スターバックスにも両方ありました。ラテに当たる商品名は「スターバックス ラテ」、オレは「カフェ ミスト」。スターバックスコーヒージャパンのホームページの商品紹介では、「ミスト」にもスチームミルクを使うとあります。ミストは「霧」ではなく「misto」のつづりで、イタリア語で「ミックス」を指す語です。
ラテの方がミルクの甘さが強めで、ミストは使われる豆の特徴が伝わってきます。見た目では違いに気づけません。どちらも最後に、泡立てたミルクを載せているからのようです。
メニューに両方あるのは、同社広報部によると「抽出方法が異なるため、幅広い楽しみ方として両方提供できることが良い」との考えからだそうです。
「カフェオレ」しかないチェーン店はあるのでしょうか? 喫茶室ルノアールがそうでした。「カフェ・オーレ」を注文すると、まさにミルクコーヒーと見える品が出てきました。ミルクの味が強めながらコーヒーの味もほど良く伝わります。店員に伺うと、専用の豆を使ったドリップアイスコーヒーを温めて、ミルクをたっぷり入れているそうです。
「ティーオレ」「抹茶オレ」「いちごラテ」「フルーツラテ」……。スーパーやコンビニには、コーヒー以外にも「オレ」や「ラテ」が付いた様々な飲料が並びます。ラテと付いていても、缶やカップ、紙パックの商品だと中身からエスプレッソ感は伝わりません。
全日本コーヒー協会にオレやラテの名の広がりについて感想を伺うと、「まあ商品名ですからね……」。ですが代わりに興味深い話を教えてくださいました。
カフェオレというと日本では、「フランスでの一般的な飲み方で、家庭の朝食の際の定番」という説明が多くされます。けれど、欧州では近年、エスプレッソマシンの普及が進み、「オレ」発祥のフランスも例外ではありません。家庭でもエスプレッソにミルクを注ぐ飲み方が広まっているといいます。
フランス料理文化センター(東京都)にも伺いました。あるフランス人シェフによると、今もカフェオレは家庭で飲まれている一方、エスプレッソマシンもクリスマスの贈り物などで人気。飲食店では基本的にエスプレッソで、ミルク入りは、イタリア語のカプチーノ(エスプレッソに泡立てたミルクを入れたもの)とは呼ぶものの、カフェラテとは一般的に言わないそうです。
オレとラテの区別はあまり気にせず、どちらもミルク入りだと捉えておくだけでいいのかもしれません。こだわりたい方は、喫茶店で「このカフェラテ、エスプレッソだけに泡立ちがいいですね」などと通を気取って声かけしてみてはいかがでしょうか。
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