佐藤征一のSugarCafe 〜放送出来ない、記事に出来ない、は.な.し.〜

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元アナウンサー・佐藤征一が2015年4月からスポーツニッポン(九州版)で連載中のコラムです。ウェブ独自の記事も!

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なんと情けない!

先日、急にお腹が痛みだした。

トイレに駆け込んだのはいいが、何だか変な予感。

あ!後ろポケットに入れていた携帯電話が、なんと

………………………

携帯も、そして中に入っていた全ての情報が消え去った。

しばし愕然、例えようのない衝撃、何とも言えない喪失感が頭を駆けめぐる。


どのくらい経っただろう!ようやく我を取り戻す。

そうだ!神が与えてくれたアドバイスか!

全てをリセット~人生のやり直し~と考えればと。

そうだ!まだ、紙で拭いてなかった。

お腹の痛みは、何時しか消えていた。

秋の爽やかな空気を一杯に吸った後、バスに乗った。

20人程だろうか?車内は私を含め高齢の人ばかり。

独特の臭いが、漂う。

そう、様々な人生を送ってきた人達の、それぞれの臭いだ。

生理現象故しかたない。
勿論私にもあるだろう。自分では気が付かないだけだ。

次々に降りていくそれぞれの人に、思いをはせる。

私を除いて殆どの人が降り立った後のあるバス停。

20人程の小学生が一斉に乗車してきた。

たちまち、甘い匂いが鼻をつく。

やがてこの子らも、私達と同じ歩みを送る事だろう。

新聞で、70歳定年、年金受給の繰り下げも目にする。

少子高齢化、将来の日本は……
頭をよぎる。


最後に一句

  匂い立つ 若さ悲しき 秋の夕
末は博士か大臣か。

私の小さい頃、ことあるごとに使われてきた言葉を、新聞のコラムで目にした。

ふと、机に目をやると、家蜘蛛の姿。

連想ゲームではないが(そういうタイトルのテレビ番組が、その昔あった)私の脳裏に
虫も殺さぬ良い男の文字が浮かんだ。

いずれ、歌舞伎の世界の言い回しだろう。

昔は蜘蛛の姿を見ると、すぐさま踏みつけて殺したものだ。

いつ頃だっただろうか?

天井から糸を垂らして降りて来て、床を一生懸命飛び跳ね、歩く姿を見ていると、何とはなく、生き物の哀れ、愛おしさを感じ、我々人間の世界の様を垣間見てるかんじを覚えてきた。

私のこの歳からくる感情かも知れない。

以来、一度も踏みつけた事はない。

そのせいか、私の部屋にはあちこち家蜘蛛の姿がある。


芥川龍之介の蜘蛛の糸ではないが、地獄に落ちた私に、救いの糸を垂らしてくれるかな?

そんな訳ないか…(笑)



最後に一句

  生命は尊きなかれ水や澄む
夕方のあるテレビ放送、男女の局アナペアが、(この男性アナは昔から余り良いイメージがない)スタジオに座り、レポーターが、都内に世界各地からの珍しい木々が、即売されていると、中継していた。

見ると、なる程見たことのない物ばかり。
世界広しの実感を味わう。

レポーターは、勿論「珍しい、お高い」と言う口調で、伝えていた。

さて、お値段はと、言うことでカメラが値段表にズーム。

20~30数万円。


それを目にしたスタジオの男性アナ「普通に買えるじゃない」の一言。

え~?と思ったのは私だけではあるまい。

ごく小さな穴から日光を見る事が出来るように、小さな事柄、言葉が、その人の性格を浮き彫りにする。
イギリスの医師で作家のサミュエル・スマイルズの言葉だ。

同じ道を歩んできた私、改めて過去を反省すると共に、残り少ない人生、せめて謙虚に生きようと心に誓った出来事であった。


最後に一句

それぞれの 人生観や 秋に入る

三十年まえの、写真が出てきた。

現役時代、フジテレビ系列の女子アナ育成講師で、静岡に行った時撮ったものだ。

フジテレビ、関西テレビ、東海テレビ、仙台放送の講師陣、一番手前が私で、その後ろに特別講師で来て貰った、槇大輔君がいる。

槇君と私は、今から50年程まえ、大学時代東京のアナウンス学校に通った時、同じクラスに在籍していた仲。

その縁もあって、いま、私も講師陣の一人に名を連ねている、福岡のアナウンス養成学校「アソシエMCスクール」の講師をして貰っている。

毎日のように全国放送で声が流れてくる槇大輔君に久し振り、今度の日曜日に、会える。

お互いこの歳になると、「会えるときにあっておかないと」が、共通の合い言葉。

生徒の中には、来年就職組もいるわけでインターン参加の資料作成に汗を流して頑張っている姿をみて、受験スタイルはちがってはいるが、しばし、50年程前の我が姿を重ね合わせる日々が、続いている。

最後に一句

大いなる 若き日の夢 昇り月