天才だと思う人に出会ったことある?

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 掌編・『アインシュタイン』
 
 
 今時に珍しい、諄朴で閑雅な人柄、古風な文体と風趣に富んだ作品で知られる、純文学作家の古木・寒巌《こぼく・かんがん》氏は、月一度の締め切りで、あーでもないこーでもないと、アイデアを取捨選択していた。
 
 「ううむ…編”輯”者の薫ちゃんとのやり取りもマンネリだし…最近は自分がどこにも出かけないからか知らんが、来客もほとんど来ない。庭木の風情や妻との会話も書き尽くした。素人芸の下手な俳句ばかり並べるのも気がさすし…」
 
 いっその事、掌編を一つ書いてみてもいいかもしれない。注釈なしでいきなりフィクションを載せれば、新鮮かな?
 
 雑誌の発売日が6月30日。暦をめくると「アインシュタイン記念日」だった。
 
 「ああ、例の、『二十世紀で最もエレガントな頭脳』の持ち主だった人か。あまり知らんが?ドイツ人だっけ?マンハッタン計画に加わっていて…戦後に日本に謝罪に来たっけな。だけど、相対性何やらと核兵器とどうつながるんだろうかな?」
 
 根っからの文系で科学音痴の古木氏には荷が重い話題だった。彼は数学や理科の授業には、昼寝をしているか、架空の恋人にポエムや恋文を書いているのが常だったのだ。そういう恋愛詩を書き散らしている古いノートを反古の中から見つけて、慌てて燃やして、黒い灰まで粉々の微塵に踏みにじったことがあった。
 
 「予備知識がなさすぎる」ので、ネットで調べると、彼にとっては新奇な、次のような記述があった…
 
 
<続く>