ぶどう畑のひとり言 -5ページ目

8月の概況

いつの間にか8月は駆け足で通り過ぎてしまいました。


季節の声はセミからコオロギへと知らずのうちに移り変わり、ここ数日はあまり聞きたくもない雨の音がしとしとと。


今日も朝から雨。

久しぶりにブログを更新してみました。


7月の開花期以降の畑の状態を、ざっと俯瞰してみます。


開花の時期は、昨年同様まずまずの天候に恵まれ順調に推移しました。


タプ・コプの主力品種、ソーヴィニョン・ブラン、ピノ・ノワールはともに結実良好で、その後に続く干ばつ気味の気候も手伝って、病気の兆候がほとんどない、珍しく安定した後半戦のスタートでした。


そして8月。

お盆までは順調そのもの。


本州では40℃越え連発という信じがたい状況はこちらではほとんど当てはまらず、30℃の真夏日を観測したのは2度ほど。降雨、気温ともに不快を感じることはなく、気になることと言えばブドウトリバとスズメガが少し悪さをした程度でしょうか。


ただこれも薬を撒いたり神経を病むような状況ではなかったので、淡々と虫を取り、時には寛容な精神で「君たちも大変だね」と半ば見守りつつ8月前半を過ごしました。


ところが8月下旬に入り、北海道らしい「お盆を過ぎれば秋」の空気が久しぶりに訪れたと喜んだのも束の間、一転して9月に入ったここまで、雨、雨、雨の不順な天候が続いているのです。


降水量データを見るとそれはより明らかに。

モセウシ農場のある栗沢町のデータによると・・・


7月前半 降雨日:3日間 雨量:15mm

7月後半 降雨日:3日間 雨量:19.5mm

8月前半 降雨日:4日間 雨量:38.5mm

8月後半 降雨日:13日間 雨量:154.5mm


数字だけ見ると、4半期後半の追い込みがすごい。

特に、8月後半16日間中、13日も雨が降っているのはあまり穏やかではない状況です。



とはいえ、平年と比べてその数字が特別異常かと言えばそうでもなく。

むしろ、7月の降水量の少なさが特異だったようで、その反動が少し来ただけのことかもしれません。


モセウシ農場、ピノ・ノワールのベレーゾン定点観測。


上が8月28日、下が4日後の9月1日の様子。


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ぶどう畑のひとり言

下の房に、ぼんやりと色がつき始めました。

よく見ると、上の房も肩の辺りがピンク色に染まりつつあります。


太陽がほとんど出ないからか、ベレーゾンの推移がいつもよりも遅く感じられます。ただ、夜温が下がってきたのは好材料。


遅くともこのままのペースで無事に9月を乗り切ってくれれば。

収穫まであと1ヵ月半、まだまだ気の抜けない日々が続きます。









花時期の終わりに

すっかり夏の朝です。


子供の頃、夏休みに海でキャンプをして、早起きのテントから外に出るとこんな感じで。風もなく、少しもやがかかったような、今日はそんな朝でした。


ぶどう畑では、一年のうちでも大きなヤマ場の一つ「花の時期」を、どうにかほぼつつがなく終えようとしているところです。


今日か明日で消えてしまう花の残り香をさかいに、ぶどうはいよいよ結実以降の後半戦を迎えることになります。


今年これまでの前半戦は、タプ・コプとモセウシでくっきりと明暗が分かれました。



ぶどう畑のひとり言


植え付けから6年を迎えたタプ・コプは、感覚的に畑のバランスが取れてきた言えばよいのか、ほとんど大きなトラブルもなくここまできています。


特に虫の被害に関しては、カスミカメもスカシクロバもコガネムシも全てが「それなりに」活動をしているものの、全ては許容の範囲に収まるようになっています。


彼らと拮抗する他の昆虫類の繁殖や、草を含めた土壌環境のバランスがそのようにさせているのかもしれません。


もちろん油断は禁物ですが、後半戦もその感覚を維持しながら淡々と進んでほしいものです。


一方、モセウシの畑は・・・。


ひとこと、カスミカメに完敗です(涙)


この畑は相変わらず草が生えない環境で、一度害虫が発生するや取り付くものはぶどうしかない、そんな状況が続いています。


なんとか本来の植生を回復すべく、地道な努力を続けなければないません。



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例えばこんな感じに、畑の周辺で刈った草を集めて敷いてみるなど・・・。


今日も暑い一日になりそうです。




干ばつ

今年植えた苗木たちが苦しんでいる。


とうとう夢にまで出てうなされるようになった。


ぶどうに限らず、人間でいえばまだ赤ちゃんにあたる「苗」は、極端に乾燥に弱い。まだ大地に根を張る前の、表現がおかしいかもしれないけど、へその緒につながった状態で、一人では生きるための養水分を受け取ることができないような。


そんな無垢のぶどうの苗木たちが、春の寒気から一転して訪れた干ばつにさらされ、苦しんでいる。



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苗木の植え付けを終えたのが5月15日。

そして、その日から昨日までの25日間の降水量は、栗沢で散発的にわずか11mm。ここ数年の干ばつ傾向と比較しても、かなり深刻な数字だと思う。


対策は、当たり前のように水をやること。


ただ、どうやってそれをするか。


元来ぶどうは乾燥に強い植物。だから、ぶどうに「水をやる」という概念は育てる側には普段あまりないし、特に設備の面で必要な備えがほとんどない。


10本20本ならともかく、今年植えた苗木の本数は、2つの畑を合わせて約2,000本・・・。


でも、やるしかないな。



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なにこの寒さ

朝起きるたびに、おいおいまた今日もかいと思う。


なかなか気温が上がらない。

晩秋を思わせる曇天と、行ったことはないけどきっとロシアってこんな感じなんだろうなと感覚を飛躍させてしまいそうな、底冷えのする寒さ。


いや、先入観でロシアの寒さを語ってはいけないと、一応世界の気温を調べてみました。


独断と偏見による、世界の寒そうな国と地域の5月3日の予想最高気温。


・ロシア モスクワ 18℃

・ロシア ハバロフスク 12℃

・アイスランド レイキャビク 7℃

・ノルウェー オスロ 4℃

・岩見沢市栗沢町 5℃


以上、どうでも良い情報でした。オスロ、ありがとう。


とにかく、4月の雪解け以降ずっとこんな調子なのです。


畑仕事もそんな天気と連動するように、ずるずると遅れがちで。

気温が低いと朝のスタートも遅いし、夕方も耐えられなくて早上がりの傾向になってしまいます。テンションの低い状態でぶどうに向き合うのは、お互いのために良くないものです。



ぶどう畑のひとり言


通常であれば今の時期は、眠りから覚めたぶどうの樹を1本1本針金に樹形を整えながら麻ひもでくくりつける、「結果枝の誘引」と呼ばれる作業を延々としているところ。


ただ、樹が濡れているし指先も冷たくなるので、5月1日は気分を変えてタプ・コプの畑で苗木の植え付けをしました。ここは、昨年就農した私の弟が管理をする区画で、主にピノ・グリの畑になる予定です。


今日も朝からしとしとと冷たい雨が。


うーん、気分が乗らないなあ・・・。


春の雑用もろもろ

「この時期、畑ではどんな作業をしてるんですか?」


この仕事をしていてたまに聞かれる質問の一つがこれです。


たいていはわかりやすいように「ぶどうの枝を針金に麻ひもでくくりつけてます。」とか、「ぶどうを支えるための柱を立ててます。」とか答えるものの、実際のところはほとんど回答が明確にならない、いわゆる「雑用」をしている時間も相当にあるものです。


雪解けが進むこの時期は、そんな雑用のオンパレード。


そんな日の目を見ない雑用の数々を、この2週間の作業日誌から一挙公開します。


4月8日 モセウシ作業開始 隅柱ワイヤー補修 実家のハウス張り手伝い

9日 物置解体と片付け ぶどう苗用の番線切断

10日 3年目の区画に番線の張り渡し チェーンの切断

11日 番線へのチェーン取り付け 物置解体続き

12日 物置解体続き 自宅周辺の雑木伐採

13日 雑木伐採続き 水田の水路の泥かき

14日 トラクター、チェーンソーの整備

15日 倉庫の屋根補修 3年目の区画の剪定

16日 剪定続き

17日 剪定続き 結果枝の誘引固定

18日 剪定と誘引終了 倉庫周辺のガレキ片付け

19日 ワイナリー作業

20日 隅柱の補強柱立て

21日 補強柱立て続き 補強柱の加工


・・・


こんな感じで、農家の仕事はいつ終わるともなく果てしなく続きます・・・



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4月21日の作業の様子。


比較的明瞭だけど、人に説明しずらい仕事の一つです。


ぶどうの体を支える要石とも言える、写真右端に立つ隅柱(すみばしら)を補強するための柱を立てるシーン・・・。うーん、言葉にするとやはりわかずらい。


写真は、「オーガー」と呼ばれるエンジン付きの穴あけ機で、下穴を掘っている様子。



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そして、「掛け矢」と呼ばれるハンマーを使い、ひたすら柱を叩きこむ!

大学までずっと剣道一筋に生きてきた私には得意な作業のはずですが、このあと叩きすぎて掛け矢の柄が折れてしまいました・・・(涙)



ぶどう畑のひとり言


で、結果的にこんな感じ。

後半はちょっとした大工仕事のようでもあります。


タプコプの仕事が始まる前にこれ含めて懸案事項の雑用もろもろを全部終わらせたかったものの、彼の地にもようやく春が訪れたとの便りが。


いざいよいよ今日からタプコプの畑へ!

第2のシーズンの開幕です。