冬の水辺は北から渡ってきた水鳥たちで大賑わい。セグウェイの講習中に上空から新たな群れが舞い降りてくることも。12月に入ってボート乗り場が平日お休みになってから、それまでボート乗り入れ禁止エリアに固まっていた用心深い面々も、思い思いの場所でゆったりくつろいでいます。

シベリア生まれのグループと並んで、大きな群れを作っているのがおなじみのカルガモです。日本で繁殖し、一年中見かけるカモですが、夏の間「水鳥の池」にいたのは10羽前後でした。雪に閉ざされた北海道や東北地方などから、安全なねぐらと餌場を求めて南下してきたカルガモが加わり、いまや40羽前後の大所帯になっています。その中に、ちょっと他のカルガモと雰囲気が違う個体がいました。

 

ヨシの陰で休むカルガモの群れ。おや、右端のカモの様子が・・・?

 

実はこの子、図鑑を調べても載っていません。マガモとカルガモの間に生まれたハイブリッドなんです。ちなみにバードウォッチャー間での通称は「マルガモ」。全体的にはカルガモに似た色合いですが、黄色いくちばしやこげ茶色の胸、ちょっぴりカールした尾羽はマガモの雄の特徴です。本人(本鳥?)はいつもカルガモの群れと行動しており、自分をカルガモだと思っている様子。カモの仲間は生まれてすぐ見た相手を親=仲間と認識するのと、子育てを雌だけが行う習性から推測するに、きっとお母さんがカルガモだったのでしょうね。

 

ふつうのカルガモ

カルガモとマガモの子、「マルガモ」

 

カモの仲間では、時折こうした異種同士のつがいから生まれた子が見られます。あまり多い例ではなく、また子どもたちは繁殖能力を持たないことがほとんどだと言われています。特に雄の場合は、これから厳冬期にかけて盛り上がる雌への集団求愛で、外見上不利になってしまいがち。そもそも同じ種類だと認識されなければ、婚活パーティーにエントリーすることさえできないわけです。

なかなかシビアな運命を背負ったマルガモ君ですが、「仲間」のカルガモたちと昼寝している光景は平和そのもの。よくテレビなどでほほえましい光景として見かけるカルガモ一家のお引っ越し、母鳥の後ろをピヨピヨとついてまわる10羽前後の雛のうち、ひとり立ちするまでに成長できるのは2~3羽いればいい方。全滅も珍しくありません。

自分が生き延びることさえ大変な自然界で、きちんとおとなになって暮らしているだけでも、このマルガモ君はかなりの幸運の持ち主です。カモの仲間がたどってきた進化の歴史と、有性生殖が持つあらゆる可能性の一端を垣間見せてくれるこの子の未来が、少しでも穏やかなものであってくれればと願います。(篠原)