任天堂IR: 2012年度Q4。新たな任天堂の幕開けか | みらいマニアックス !

任天堂IR: 2012年度Q4。新たな任天堂の幕開けか

最もエキサイティングだったのは「代表取締役及び取締役の異動に関するお知らせ」だ。
内容は(1)専務二名・常務二名が退任、(2)新設された役職に5名が就任、(3)常務一名が就任というものだ。

NS: 公式  代表取締役及び取締役の異動に関するお知らせ


任天堂の現在のボードは、社長、専務4名、常務2名、取締役2名の構成となっている。

ここから専務2名、常務2名が退任すると、上級の役員で残るのは岩田氏(社長)、宮本氏(ソフト系担当)、竹田氏(ハード系担当)の3名のみになる。そこに新たに5名が取締役に昇格、1名が常務に昇格する。全面刷新と言えるほどの大鉈だ。

任天堂の役員メンバーはIT企業としては平均年齢が高かったが、今回新任となる取締役4名は部長級/副部長級からの昇格であり、役員の平均年齢は大幅に若返る。
改革のスローモーさ、新技術へのキャッチアップの遅れに悩まされていた任天堂にとって、大きなプラスになることだろう。


さらに面白いのが常務人事だ。

新たに常務として経営統括本部長に就任する君島氏は、NoAの現CEOだ。君島氏はNoAのCEOから本社ボードに転属し、岩田氏、宮本氏、竹田氏といった任天堂の生ける伝説に次ぐNo4になる。

ちなみに、空位になるNoAのCEOは、岩田氏が兼任するそうだ。

NS: Gamechup  Satoru Iwata becomes Nintendo of America CEO


この人事により、任天堂の北米シフトが強まることが予想される。

(1)日本の掣肘が減ることでNoAのパワーが強まり、独自性もまた強くなる
(2)北米の現状をよく知る日本人が重要なポジションを取ることで、任天堂の意志決定が北米にシフトする

北米出身のKazこと平井氏がパワーを持つことでソニーは大きく変わったが、これと似たようなことが、任天堂でも起こる可能性がある。
北米をよく知る君島氏とNoAのFils-Aime氏という旧知の二人が、ガッチリとタッグを組んで北米シフトを引くわけだ。北米での低迷に戦く任天堂が、戦局打開の秘策として取る体制なのかもしれない。


さらにこの人事は、任天堂内部で起こっている変化を示している可能性がある。
つまり、岩田氏を含む現ボードの総辞任は既に規定路線だったのではないかということだ。

前四半期に、岩田氏は営業益1,000億円をコミットした。達成できない場合は辞任という宣言と受け取れる。

だが目標の達成は容易ではない。

ざっと見るだけでも、来年度の販売目標がこの1,000億円という目標ありきで作られていることが色濃く伺えるし、それは逆に目標達成の難しさを浮き彫りにしている。岩田氏が来年度一杯で辞任する可能性は、決して低くはない。

では岩田氏が辞任した際、現在の役員は留任しただろうか?

その可能性もないとは言えないが、岩田氏とともに辞任する可能性の方がむしろ高かった。任天堂役員会は、いずれにせよ来年度末までに全面的に刷新されることになっていたはずだ。

今回の人事は、現在の役員の辞任を前提とし、入替えを段階的に行ったものなのではないだろうか。
唐突だった営業益1,000億円コミットの宣言も、来年度の岩田氏の辞任と役員会の刷新が規定路線であったと仮定すれば、それほど違和感があるものではない。


上の推測が正しければ、今回常務に昇格した君島氏は、再来年度には任天堂の新たな社長となるはずだ。
はたして、どうなるだろうか?