セコンドアウト! -210ページ目

母ちゃんが騙された!<2>

母ちゃんが騙された!<1>からのつづき

 詳しい話を母ちゃんに聞いてみると、夜、突然実家の電話が鳴ったのだが、ディスプレイに表示された電話番号は見知らぬ番号だったらしい。そこで苗字を名乗らずに電話に出たところ、
 「Jだけど、体調がものすごく悪くて病院に行ってきたんだ」
 と、きちんと私の名前を名乗った上、この手の電話の常套句である「体調が悪い」なることを言ってきたらしい。

 出鼻で実の息子の名前を名乗られた母ちゃんは、「体調が悪い」というキーワードにテンパってしまい、電話の相手を完全に私だと思い、「大丈夫なの?」と聞いたという。すると“ニセJ”はとにかく体調が悪くて、トイレに入ったときに朦朧としていたため、ケータイをトイレに落として壊してしまったと告げ、ひとまずドコモのケータイを契約してきたと言ったらしい。

 まぁ本物の私は滅多にケータイを持ってトイレに入らないし、そもそもiPhoneを使っているのでドコモではなくソフトバンクなのだが、テンパッてる母ちゃんがそういったことに気付くこともなく、「病院には行ったの?」と聞いたらしい。
 すると“ニセJ”はとりあえず病院には行ったが、特別大きな病気になったわけでない。でもまだ体調が悪いので、明日改めて精密検査を受けるみたいなことを言ったらしい。これを聞いた母ちゃんは、息子が貧乏なことを知っているため(すまん、母ちゃん!)、ケータイを買ったり、病院に行ったり、さらに精密検査を受けて入院なんて可能性も考えて、「お金は大丈夫なの?」と自らナイスパスを出してしまったという。

 それが作戦なのか、夜だったからなのかどうかは分からないが、“ニセJ”は「じゃあ銀行に行ってすぐ振り込んで」的なことは言わず、とりあえず明日病院に行ってからまた連絡すると言って電話を切ったらしい。
 その際、“ニセJ”はケータイを水没させてしまったため、母ちゃんのケータイ番号が分からないと言い、まんまと母ちゃんからケータイ番号を聞き出したそうだ。わずか数分の電話で個人情報をそこそこ引き出しやがった!

 電話を切ったあと、母ちゃんは実家からさほど遠くないこともあり、私の家に行ったほうがいいかとかいろいろ考えたらしいが、本人が「大きな病気ではないし、明日精密検査を受ける」と言っているので、ひとまず様子を見ると判断したらしい。この辺、犯人側はなかなか巧妙というか絶妙だ。

 何よりこの手の振り込め詐欺にいまだに引っかかる人がいる理由がよく分かる。電話越しとはいえ、母ちゃんが“ニセJ”の声を完全に私だと信じ切ってしまったのだ。まぁ本当にたまたま似ていたのかもしれないし、パニくった母ちゃんが勘違いしたのかは分からないが、予め息子の名前を調べてから電話してくるとは手が込んでいる。

 完全に電話の相手を実の息子だと信じ切り、翌日の電話を待つことにした母ちゃん。明らかに絶体絶命のピンチだが、なぜかこの日の母ちゃんは、突然“ある興味”がムクムクと沸きだしたらしい……

つづく……