セコンドアウト! -104ページ目

『「金権編集長」ザンゲ録』を出したことでターザン山本は死んだ

 私が現在の仕事(プロレス関係の仕事、編集者兼ブックデザイナー)を志す上で、一番影響を受けたのは間違いなくターザン山本さんだ。この人が編集長時代の『週刊プロレス』やターザンさんの著書に夢中になり、プロレスの新しい楽しみを知って、そういう本を作ってみたいと思ったのが最初のキッカケ。

 その後、出版社で働くようになり、仕事で初めてターザンさんに会った。ちょうどターザンさんが長年勤めていたベースボール・マガジン社を退社した直後で、一番時間のあるときだったもんで、よく週に1回ターザンさんが住んでいる立石に行って、「編集とは」「デザインとは」「プロレスとは」みたいなレクチャーを喫茶店で2~3時間聞いたものだ。

 そのお陰で当時ターザンさんをプッシュしていた浅草キッドさんが、ターザンさんと共著というカタチで出した『プロレスLOVE論』(東邦出版)という本を作らせてもらったりした。
 その後も私が本を作るときは、あのときターザンさんから聞いた編集術やデザイン法を思い出して参考にすることも多いので、まぁターザンさんはいまの仕事をする上での“師匠”のような存在ではある。

 ターザンさんは一揆塾を作った辺りから結構忙しくなり、頻繁に会うことはなくなった。とはいえ、試合会場で会うこともあったし、たまに突然電話がかかってくるようなこともあったため、疎遠になったというわけでもないのだが……。
 それにターザンさんの場合、会って話す機会は減っても、日常生活のことをネット上に日記として公開しているので、遠くから生温く見守っていても近況が十分分かった。

 そんなターザンさんが一戸建ての自宅を競売にかけ、自身はワンルームのアパートに引っ越したというのを知ったときは、さすがにビックリしたが、まぁ日記を読むと相変わらず元気そうなので、「まぁいいか」という感じだったのだが、「どうやらターザンが週プロの編集長時代にカネをもらっていたことを告白する暴露本を出すらしい」というウワサが耳に入ってきた。

 まぁこの業界で仕事をしていれば、「昔はそんなこともあったみたいだよ」という話くらいは耳にするので、特別ビックリするようなことはなかったが、「あぁ、ついにそういうことまで言っちゃうんだなぁ。さすがに墓まで持って行くかと思ったけど」という、若干の寂しさを感じた。

 ちょうど、その頃久しぶりにターザンさんと電話で話す機会があり、なぜこのタイミングでそういう本を出す気になったのかをいろいろ聞いた。ターザンさんのことなので、どこまで本音かは分からないが、まぁとにかくこういう本を出すことで、“ターザン山本”というキャラクターに区切りを付けたいという気持ちはたぶん本音だろう。実際、私も「じゃあ、もうこれで“ターザン山本は”終わりですね」と言った。
 多くのプロレスファンや関係者がイメージする、あの“ターザン山本”というキャラクターを演じるパワーが、もういまのターザンさんには残っていないのだ。ほとほと疲れたというか、よく格闘ゲームで見られるパワーゲージみたいなものがターザン山本というキャラにあるとしたら、もう目盛りがスッカラカンの状態に思えた。

 その本、『「金権編集長」ザンゲ録』(宝島社)は、ターザンさん自身“ターザン山本”をやめるにはいいキッカケになったのだろうが、内容は事前のウワサとその書名通りで、当時の週プロに熱中していた1プロレスファンとしては「あ~、知りたくなかったなぁ~」という感じ。
 ただこの本はターザンさん自身が書いたのではなく、口述筆記(=ターザンさんがしゃべって、別の人がまとめる)のカタチを取ったため、非常に読みやすく、嫌な話がうまいことサラリと読み流せるように構成されている。この本を構成した人はなかなかのやり手だな。その辺は勉強になる。

 とはいえ、ファンのことを考えたら墓場まで持って行かなくてはいけないようなことを暴露するわけだから、“カリスマ編集長”だの“奇才”だの言われた「ターザン山本」は完全に崩れ去った。いわばこの本はターザン山本の遺書みたいなもので、少なくとも私の中のターザン山本は死んだと言っていい。イコール、もうターザンさんがプロレスや格闘技に関わるようなことはないような気がするし、例え関わったとしてもそれに興味はない。
 あとは“山本隆司”個人として競馬予想家なり、映画評論家なり、小説家なり、元気に新たな道に進んでいってほしい。そういう方面でまたお仕事を一緒にする機会はあるかもしれない。

浅草キッド×ターザン山本 プロレスLOVE論/ターザン山本

¥1,400
Amazon.co.jp

「金権編集長」 ザンゲ録/ターザン山本

¥1,300
Amazon.co.jp

↓クリックされると喜びます!
人気ブログランキングへ