「下の句はみんなで頑張ってクイーンを打倒するといった類の話ではないです」
これは15日に小泉監督が自身のアカウントで呟いたコメントである。
それでは下の句は一体どういう話だったのだろうか?
遂に金曜ロードショーに初登場という事で、世界一の下の句好き(自称)がこの作品に隠された魅力を伝えるべく筆を取る事にしました( ̄∇ ̄)
まず今回の話の大筋は千早がクイーンである若宮詩暢(以下クイーン)と戦う話である。
だが、観た人ならご存じだと思うが試合は千早がボロ負けしてしまう。
しかし、実はこの話は千早がクイーンに『勝った』話なのだ!
千早がクイーンに勝った事は千早のある一言によって証明される。
正にこの映画の全てはこの一言によって収束されている。
というよりもこの一言のために全てが作られていると言っても過言ではない。
その一言とは?
俺はもうカルタはやらん。
そう心に決めた新をもう一度カルタの世界に引き込むべく遠路はるばる会いに行く千早と太一。
それがきっかけで千早はある決意をする事になる。
「クイーンを倒せば新は戻ってくるんだ!」
それからクイーンを倒すために日々猛特訓する千早。
そんな千早に太一はクイーンにこだわるのはダメだと否定的な意見をぶつけるのだ。千早の事が好きなら応援してやればいいのに。
だが、この太一が今回千早を最後まで正しい道へと導いてくれるメンターの役割を担ってくれるのだ。
「何のためにカルタ部作ったんだ? 何のためにカルタやってるんだ!」
この答えを皆さんはご存じだろうか?
知りたい方は上の句を観てもらえば分かる。
太一が千早をおぶっている帰り道。
太一の上で千早はこう語る。
『部員も増やして卒業してからも教えに来て、カルタの楽しさや熱を伝えたい』
これが千早の描いた未来なのだ。
にも関わらず現実では部活のみんなをほっぽって一人よがりにクイーンを倒そうと奔走している。
ドラバタしてあらぶりながら……
そんな千早を諭してくれるのが北央のドSこと須藤だ。
北央が強いのは人から人への繋がりを大事にしているからだ。今の一人よがりなお前は絶対に強くなれない。
そう教えてくれる。
部外者には絶対に見せてはいけない、代々受け継がれてきたマル秘ノートを渡す事で。
この後に千早が走るシーンは心に残ってる人も多いんじゃないかな。この時色々な雑念を振り切ったんだろうね。
ごめん。
と土下座する千早。
机君、かなちゃん、肉まんが千早がクイーンに勝つために知恵を絞っていてくれていたのには涙を抑えるのに
必死だった。
千早はあんなに皆をほったらかしてたのに泣
瑞沢は本当に良いカルタ部だなーって感じた。
そしてやっと団体戦を重視したと思ったら風邪で倒れて目が覚めたらまさかの団体戦終わってると言うね笑
当時劇場で観ててびっくりしたよw
でも誰も千早を責めない。
むしろ。みんな嬉しそうにしてるのだ。
なぜなら楽しかったから。
負けてもみんな楽しくカルタ取れたから!
そう。上の句で言っていた作りたい部活を、千早は作れたんだよ。
『楽しい部活』を。
そんな千早だからこそ。最後の言葉が出てきたんだね。
そして待ちに待ったクイーンとの一騎打ち。
勝つ想像ができない。いきなりこれである。
もう無理だ…。
ポン。その時肩を軽く叩いてくれる太一。
これで千早はある事を思い出すのだ。
「一番楽しかったのはいつやった」
これは綿谷名人から新へ、新たから太一へ、太一から
千早へと受け継がれた悪い流れを断ち切る方法だ。
立ち上がり目を瞑る千早。
ここで下の句の冒頭を思い出して欲しい。
幼い千早が目を閉じながらも太一と新の存在を近くに感じこう思う。
「私は一人じゃない!」
今は離れた所で須藤と戦っている太一。カルタをやめている新。部屋の隅で見守っていてくれる机君、かなちゃん、肉まん、顧問である宮内先生。
千早は自分が一人で戦っている訳じゃない事を知る。
そして次の瞬間、クイーンが一度も取られた事の無い『しのぶれど~』の札を千早が取る!
(ちなみにこのカットは元々CG使う予定だったけど広瀬すずのミラクルでノーCGになった。ここの手を振り終わっ
た後に当たり前に取れてるはずの札が取れてない事に気づき驚く様子をスローの中で演じきった松岡茉優は圧巻)
今まで死んだ表情でカルタをしていた千早がこれ以降楽しそうにクイーンと札を取りあうのだ。
みんなで、楽しく、カルタを取った時にあらぶっていた千早が、『ちはやふる』へと変わったのだ!
みんなの絆が糸のように繋がってるのが素晴らしい。
(このみんなの中にはカルタ部以外の部活も含まれているのも素敵♪)
しかし、文頭で述べたように千早はクイーンに負けてしまう。中盤からある程度対等に戦えているように見えるが、17枚差。サッカーで言うと7対2で負けくらいだろうか。
それではどこが千早はクイーンに勝ってると言うのか。
「団体戦なんてお遊びやったって、全員に言わしたるわ」
クイーンのこの台詞を覚えてるだろうか?
CMでも繰り返し使われてたこの台詞。
実はこの台詞はとても重要なのだ。
何を隠そう千早とクイーンの勝敗を分かつルール設定はこの時に定められたからだ。
「団体戦なんてお遊びでした」
そう誰かが一言でも言っただろうか?
それどころか千早はクイーンに完敗した後にこう言う。
「楽しかったね」
またカルタしようね。って。
しかも気づいたらクイーンは頷いて「いつや」と逆に言わされている。
団体戦をする人達はカルタを好きじゃない。
そう思ってたのに。
自分は他にカルタやってる人を見下していたのに、千早は、ただ目の前で楽しそうにカルタを取っていた。
千早とクイーン。どちらのカルタが純粋か。
これ以上無いくらいにクイーンは思い知らされる。
勝ったクイーンは一人寂しく会場を後にしていく。
千早も、もし一人よがりのままクイーンに勝っていたとしたら、同じく一人寂しく会場を後にしたかもしれない。
でも実際は、負けた千早に周りにはたくさんの人がいてくれる。
これが千早が作った部活の姿だ。
そしてこの『楽しむ』というのは綺麗ごとでも何でもなくスポーツに打ち込むアスリート達が誰もが口を揃えて言う大きな壁を乗り越える唯一の方法なのだ。
オリンピックのインタビュー等で緊張してるか聞かれて、「多少緊張しています。でも楽しんできます」
というワンシーンを皆さんも一度くらいは観た事あるので
は無いだろうか?
「将棋が好きだ、というのが根底にないと、最後のところで頑張れない」
これは将棋の現名人の佐藤天彦の言葉だ。
あの羽生さんを倒して名人に就位したのだ。
スポーツをやる上で、そのスポーツを楽しむ。好きというのは上達する事と切っても切り離せない関係なのだ。
好きこそものの上手なれは真理だと思う。
ちなみに名作中の名作漫画の『スラムダンク』も一言で話を要約するなら、『バスケが嫌いな主人公が、バスケを好きになる話』だと思っている。
そして下の句公開時に良く言われていた事。
「最後の名人クイーン戦がとってつけた感があってヤバい」
いーやヤバくない!!
なぜならあのシーンこそこの上の句と下の句の集大成のシーンだからだ。
『太一』
必要に応じて厳しい言葉をかけたり、優しく肩を叩いたりと名実共に部長の風格が出てきた太一。
個人戦なのに「瑞沢一勝!」と札を掲げる彼の姿を見て、上の句ではずっとうじうじしてた太一が、下の句では文字通り背中で部員を引っ張る存在に!
と俺は心の中で号泣してた。
「青春全部かけたって新には勝てない」
その太一がこの名人戦まで来たんだよ。
青春全部かけて!
「俺はカルタで新を越える」
これは上の句の終盤での台詞だが。
新を睨みつける太一からそう心の声が聞こえてくるようだった。
『新』
もうカルタはやらん。これは上の句の最後の台詞だ。
名人であったおじいちゃんこそが新にとってはカルタそのものだった。
だからおじいちゃんが亡くなり、カルタをやる意味が無くなったのだ。
その新が何故この名人戦の舞台に戻って来れたか。
千早は当初、クイーンに勝てば新が戻って来てくれると信じていた。
でも違った。負けはしたけど、楽しそうにカルタを取る千早を見て新はもう一度カルタを取りたいと思ったのだ。
カルタを楽しく取りたい。
それが新しく芽生えた新のカルタを取る意味だ。
ちなみに下の句の最後の台詞は何か分かるだろうか?
「俺はもうカルタはやらん」が上の句の最後の台詞だと前述したが、その上の句に続けて今回、
「また三人でカルタしよっさ」
という下の句が付くのだ。
オシャレー!
なんて綺麗な前後編の構成なんだ!
しかも、ちはやふるならでは♪
『詩暢(クイーン)』
強すぎて戦う相手がいないクイーン。
相手になるのが新くらいしかいない。
その新にカルタを取るように何度も促すも結局クイーンの力では新をカルタの世界に引き戻す事はできなかった。
(ちなみに原作に一回だけ、しかも凄く小さなコマでしか出てこない張り手のシーンを映画に導入したのヤバい。監督はどれだけ原作読み込んだんだ…)
でも本当はクイーンも独りではなく、みんなでカルタを取りたかったんじゃないかな。
千早との試合で最後にクイーンが取る札。
『寂しさに宿を立出でて挑むればいづこも同じ秋の夕暮れ』
これは、一人で寂しいと言う意味だがこの札が最後に飛んでいって千早とクイーンの試合は終わる。
クイーンが千早とカルタを取る事で、寂しさが飛んで行く事を暗示した演出なのではないだろうか。
もう一つ。
クイーンと机君にはある共通点がある。
実は、机君こそがクイーンの未来の姿なのだ。
「カルタ部に入る前までは一人で何でもできると思ってたいた。でも今はみんなで取るカルタが楽しいんだ。それを教えてくれたのは綾瀬(千早)だろ」
かつては一人よがりだった机君も千早に出会う事によって変わったのだ。
今までニヒルな笑みを浮かべていたクイーンが最後に純朴な微笑みを浮かべて千早を見つめている。
机君と同じようにクイーンもまた千早に出会って変わった事を笑い方一つだけで表現しきった松岡茉優の凄さやいかに。(茉優ちゃん大好き♡)
またカルタやろうねと言われて、
『いつや』
と答えた詩暢ちゃん。
それがこの千早とのクイーン戦である今日この日である。
またその更に先の未来。
一番カルタを楽しかったのは『いつやった』?
そう聞かれたら同じく、
詩暢ちゃんは迷わずこの日と答えるんじゃないかな。
『千早』
何かができるからって、何かを持ってるからって、人を見下したり人の楽しみを奪うような人間を俺は絶対に認めない。
途中千早がそうなりかけた時は胸が痛くて苦しかったが、最後には人に楽しみを与える存在になれて本当に良かった。
この感動を映画館の感動なんて揶揄されるもので終わらせていいはずがない。
俺もお世辞にも何かができる人間ではないし、何かを持っているような人間でも決してない。
それでも俺もいつか千早みたいに人に楽しみを与えられる人間になりたい。
いや絶対になる!
千早が与えてくれる情熱を映画館の外へ持って帰るぞ、と
最後に手を伸ばした千早。
心の中でその手をがっしりと掴みそう誓った。
その次の瞬間
タイトル『ちはやふる~下の句~』バーン!
……あのーなんでこの作品があらゆる賞を総ナメしてないんですかね汗
しかもこの完成度の脚本を1人で書いただと…コワッ
ぶっちゃけた話下の句の完成度が高すぎて続編出るって聞いた瞬間。いらなくね?
蛇足にしかならんやろって思った。
でもそれは小泉監督ももちろん承知で「上の句下の句で全部出しきった後に続編作れって言われても…」とインタビューで答えている。でもそれに続けて「でも作るからには前作を越えるような作品を絶対作って見せます」って淡々と語っていてかっけーーー!!!ってなった笑
そしてそれは大言壮語でも何でもなく。
うん。小泉監督なら本当に更なる傑作を生みだせるだろうな。その力が十二分にある監督だし。
(俺の中で是枝、西谷と並んで日本のトップに位置する監督になった)
そんな『ちはやふる-結び-』
誰がなんと言おうと世界で俺が一番期待しているし、何より楽しみにしている!
明日から公開だから!みんなも絶対に観てくれよな!
(ちなみに俺は試写会の応募全部外れた笑上の句下の句一挙上映とかも外れたのエーン泣
仕方ないから前売り券今から握りしめてるよ笑)
最後に。
この長文をここまで読んでくださった方々本当にありがとうございました。
このブログはあくまで私一個人の所感です。
でもこの駄文も誰かの楽しみを奪うものでなく、楽しみを与えるものになってると嬉しいなー(*^^*)♪