一応自分は高校時代の部活は体育会系だった事もあって、テレビ番組『炎の体育会TV』はちょくちょく見てます。そして僕は陸上部だったので、やはり一番注目してしまうのは陸上競技の企画なのですね。
最近この番組での陸上競技の企画は上田君率いるジャニーズ陸上部がメインとなっていますが、あくまで一視聴者の意見として言わせてもらえば、森脇さんやおねだり豊さんが出ていた頃の、元の芸人さん主体の陸上部に戻してほしいです。というのも、厳しい事を言うようですが、上田君の企画に関しては「いや、それは違うだろ」と突っ込まざるを得ない部分ががわんさかと湧いて出てくるからです。
まず、彼の「指導」内容をテレビで流すのは、特に子供の教育上よろしくないと思います。以前に『ポジティブな熱血とネガティブな熱血』の記事でも書きましたが、僕は相手に対する個人的な攻撃や人格否定や八つ当たりを用いるような、彼の「熱血指導」を教育のあるべき姿として認めていません。
ただ、ここで注意していただきたいのは、僕は熱血指導そのものを否定しているのではないという事です。例えば以前僕はオーストラリアのセールス会社で働いていた事がありましたが、そこでのセールス研修を担当していた人物はストリートファイターⅡのザンギエフのような、超強面の人でやたらと声がでかく、メチャクチャ迫力のある人でした。
(↓想像図↓)
彼もまた超熱血指導だったのですが、彼と上田君の一番の違いは、彼は「だからお前はダメなんだ」とか「そんなんで結果が出ると思ってんのか、このバカ!」みたいな、個人的攻撃や人格否定や八つ当たり系の叱責は絶対に使わなかったという事です。本当に指導力がある人というのはそんなものを使わなくても熱血指導ができるものなのです。
上田君の行っている「熱血指導」は、不必要な八つ当たりを含むネガティブな熱血であり、また、陸上競技における指導内容にも全く賛成できません。例えば、今回の関東VS関西の企画は関東ジャニーズの2連勝で幕を閉じましたが、その時は内容的にも関東の圧勝だったにもかかわらず、上田君は試合後に関東メンバーに対して激怒。彼が怒った理由は次のようなものでした。
上田君:「今回、お前ら4人の走りで認められるのは2人だけだ。残り2人に対してはがっかりしている。特に菅田琳寧。なんだあの走りは?自己ベストよりもなんであんなにもタイムが遅い?最後手を抜いて走ってただろ?」
菅田君:「はい、確かに最後は気を抜いてました。」
上田君:「いくら内容的には圧勝でも、何で最後まで全力で走らないんだ。そんなんでこの先勝てると思ってんのか、このバカ!」
上田君はこのように怒り心頭でございましたが、実際には、内容的に圧勝している時は、最後に力を抜いてゴールするのは別に悪い事ではないです。陸上競技では必要のない時に無駄に体に負担をかける事はなるべくしません。毎レース毎レース限界を超える走りをしようとしていたら、体に無理な負担がかかり、故障のリスクが上がるからです。
また、本格的な試合では予選→準決勝→決勝と複数レースをこなしますから、特に大事なレース、つまり決勝になるまではなるべく体力を消耗せずに走りたいので、同じレースの他の選手が手を抜いても勝てる相手であれば敢えて手を抜くのが普通です。従って、大差をつけての勝利を確信していたから最後はスピードを緩めながらゴールした、あの時の菅田君の走りは陸上的にはむしろ賢い走り方なのです。
そして、上田君の「たとえ大差をつけて勝ってたとしても、何で最後まで全力で走らなかったんだ。そんなんでこの先もっと強い相手が出てきた時に勝てると思ってんのか!」という台詞に対しては、もう1つ突っ込みを入れてやらなければならない点があります。
例えば、リオオリンピック陸上男子400mリレーでは日本代表が銀メダルを獲得しました。その時のメンバーのケンブリッジ飛鳥選手がオリンピック後にいわて国体に出場した時、彼は400mリレーでは東京代表のアンカーとして走ったのですが、予選のレースだったという事もあり、最後はわざと大幅にスピードを緩めていました。
でも、これも上田君からしてみれば「けしからん」という事になりますよね?もし上田君の持論が正しいのであれば、このケンブリッジ選手に対しても、「何で自分よりレベルの低い選手たちが相手の時でも最後まで全力で走らないんだ?そんなんでボルト率いるジャマイカに勝てると思ってんのか、このバカ!」と同じように言ってやるべきではないでしょうか?そうでなければ、筋が通っていないのではありませんか?
上田君は、以前北京オリンピックのメダリストの塚原選手に直接会っていましたから、それを考えれば、リオオリンピックのメダリストのケンブリッジ選手に直接会うのも不可能ではないでしょう。でしたら、ケンブリッジ選手に会ったら彼に対しても最後まで全力で走らない事に対して喝を入れてやってくださいな。
それから、上田君は「もっと本気で、死ぬ気でやれ」とか「お前らはもっと上のレベルを目指してるんじゃねぇのか?」とか、かなり過激な事を常々言っていますが、口ではデカい事を言っている割には、実際の行動を見てみると彼の目標設定は中途半端な気がします。
だって彼、「最終目標は女子日本代表に勝つこと」と言っていますが、「もっと上のレベルを目指せ」とかいうのであれば、なぜ日本代表よりも更にレベルの高いアメリカ代表やジャマイカ代表に勝つことを目標に設定しないのですか?
冒頭でも述べた事の繰り返しになりますが、こんな事ばかりやってるんだったら、早々に元の芸人さんの陸上部に戻してほしいです。上田君はジャニーズJrの子たちに対して「お前らのこんな様子じゃ視聴者を納得させられねぇんだよ」とか言ってますが、視聴者である僕はジャニーズJrの子たちよりも、むしろ上田君のやり方に納得していないです。
また、こんなものが「熱血指導」、「良き指導者」のモデルとしてテレビで流され、そしてそれに対して周りの人間が「熱いな。ええ話や」などとヨイショしている事、そして彼のやり方に異を唱える者が見当たらない事に対しても違和感を持たずにはいられません。
せっかく最近は日本における教育方針もそこそこマトモで人道的なものに改善されてきたと思っていたのですが、その矢先にこんなものが流行るようでは悲しいです。一刻も早く、より多くの人が八つ当たりを用いた「熱血指導」に異を唱えるようになる事を願うばかりです。