さて、番外編の北欧旅行編は終わった事ですし、本編のワーホリ話に戻りま~す。

 

オレンジファームでのピッキングの仕事を始めて2日後の水曜日。いつものように出勤のため朝早くに起き、朝食や支度を済ませてリビングに出てみると、ヨーロッパ勢がお喋りしていた。会話の中心になっていたのはデンマーク人のキオン。どうやら彼は以前時給40ドルの仕事を見つけたことがあるらしく、周りのバックパッカーたちはどうやってそんな高給の仕事をゲットしたのかと興味津々だったのだが、彼の答えはあっけらかんとしていた。たまたまバーにいた時に話しかけて仲良くなったオジサンが仕事を紹介してくれて、やってみたら実はそれが時給40ドルの仕事だったのだそうな。なんかAPLACのワーホリ体験記に出てきた、タスマニア伝説のチェリーファームの仕事をゲットした日本人と似たような展開ですな。

 

月曜と火曜はサイモンとハリスのイギリス勢とチームを組んだが、この日は日本人女性Mさんと一緒に作業をする事になった。前日までMさんと一緒にピッキングをしていたペアの子が、少し具合が悪くなったそうなのだ。働けないほど症状がひどいわけではなかったらしいが、大事をとって一応その日は休む事にしたらしい。それでMさん1人になってしまったので、そこに僕が加わって2人でやる事になったのだ。

 

そしてその翌日も、僕はイギリス勢とではなくMさんとチームを組む事になった。水曜日に仕事を休んだ子が木曜日に働けるのかどうかが直前になるまでわからなかったので、その子が木曜日も休む事になった場合を考えてこの日もとりあえずMさんと僕で組んだ方がよさそうだねという事になったのだ。

 

Mさんとペアを組んでいたこの韓国人の子も、ちょっと前まで日本人男性Sさんと同じベトナム人経営のファームにいたらしいが、Mさんと一緒にオレンジファームの方へ移ってきたのだそうだ。この子の名前は「とあるサッカーの名門」と同じ名前(少なくとも日本語カタカナ表記では同じ)で、アラサー女子のギリホリ(ワーキングホリデーの年齢制限30歳ギリギリでワーキングホリデーをする事)である。

 

僕はこの日木曜日はこの女もMさんと僕のチームで一緒に作業をする事になったと聞いて、あまり良い気分ではなかった。この女はアジア人に時折見られる白人崇拝者の典型であり、しかもこいつの場合その度合いが酷いのだ。

 

僕はこのホステルで新しく見かけた人には一通りHiとかGood morningとか挨拶をしていたし、ホステル内の他の滞在者も、アジア人であるとかヨーロッパ人であるとかそんな事に関係なく挨拶をしていた。ところがこの女は、僕の挨拶を完全にシカトするのだ。1回目や2回目は「あれ、声をかけられているのに気付かなかったのかな?」ぐらいにしか思わなかったが、何度やっても無視されるため、これは確実に意図的にやっているのだなという事がわかった。当時のルームメイトだった日本人男性Sさんに聞いてみても、「こっちは普通に声をかけてるだけなのに何であんな冷たい態度を取られなきゃならないのかよくわからない」と話していた。

 

これだけ聞くと、日本と韓国の歴史問題が原因で日本人に対して敵意を持っているのだと思うかもしれないが、こいつのこういう態度は日本人に対してだけではないしばらくしてこのホステルに新しく入ってきたインドネシア人も、「あの韓国人の女の子、アジア人とは全く喋ろうともしないよね」と言っていたし、そのインドネシア人と同じぐらいの時期に入ってきたダイアナというイングリッシュネームの韓国人の女の子に対しても、徹底的に無視である。同じくそれぐらいの時期に入ってきた日本人H君も、この女のダイアナに対する態度を目撃しており、「あの人、同じ韓国出身で滞在先でも同じ部屋で過ごしているダイアナにあの態度、どう考えてもおかしいですよ!あれじゃダイアナがかわいそうです!」と証言していた。

 

しかしその一方で、この女は、イギリス人であろうがドイツ人であろうがデンマーク人であろうが、国籍を問わず相手が白人である場合は掌を返したように態度が一変する。アジア人を相手にしていた時のピラニアのような獰猛な目どこへ行ってしまったのか、お星さまの如くキラッキラに目を光らせ、普段の奴からは想像もつかない程フレンドリーに振る舞うのだ。声のトーンも別人のように変わっている。以下想像図。

 

Before(対アジア人用の目つき)

 

After(対白人用の目つき)

 

そんな「とあるサッカーの名門」とチームを組む事になり、僕は仕事中に不愉快な事が起こるのではないかと思っていたが、この予感は現実のものとなった。

 

オレンジピッキングの作業は完全出来高制で、1箱いっぱいにすれば28ドルの給料が発生する。なので3人で3箱集めればその時点で1人28ドルずつの給与が確保された事になる。物理的には、3人がそれぞれバラバラに、1人1箱ずつ3つの別々の箱にオレンジを入れても、3人が3人とも1つの同じ箱に取ったオレンジを入れていき、それがいっぱいになってから次の箱にオレンジを入れ始めるというスタイルと取っても、結果的に3箱いっぱいになる事はなる。だが前者の3人がバラバラに異なる箱にオレンジを入れる方法だと、1人でもオレンジをもぎ取るペースがずれていると、例えばそろそろ仕事を終わろうかという時間帯になった時に、半分程度しか埋まっていない箱が2つまたはそれ以上存在してしまう可能性が出てくるため、結果的にチームで行う仕事として効率が悪い。(※満タンになった箱以外はカウントしてもらえないので、中途半端にしか埋まっていない箱が2つ以上あったら終わらせるのが大変である)だからこのファームでは、イギリス人のチームであろうと、デンマーク人とドイツ人のチームであろうと、アジア人のチームであろうと、チームのメンバーみんなで同じ箱に取ったオレンジを入れていこう、つまり個人でバラバラに別々の箱にオレンジを入れていくのではなく、共同作業で同じ箱に入れていこう、という事になっていた。

 

そしてこの日のMさんと僕と「とあるサッカーの名門」のチームでも、念のためMさんが「3人バラバラに動くんじゃなくて3人で一緒に同じ箱を1つずつ埋めていこうね」と作業開始時に確認をし、その時点では奴もそれに合意しており、実際に作業が開始されてからも奴はMさんと僕と同じ箱にちゃんとオレンジを入れていた。

 

作業開始からまだ間もない段階で、「とあるサッカーの名門」はピッキング作業中の僕に目をやった。ちょうどその時、僕はハシゴを使わずに地面に立った状態でも取れそうな位置のオレンジを狙っていたのだが、そのオレンジは僕の背丈からするとちょっと高く、グッと片手を伸ばすとやっと届くかどうかという位置だった。しかもその時点で僕の体の前にかかっている袋にはけっこうたくさんのオレンジがたまっており、何もない時と比べると僕の動きは少し鈍くなっていた。もちろん、たまたまこの時だけはこういったいくつかの条件が重なった事により僕の動きは少し遅くなっていたが、もちろんそうでない時はもっとさっさとオレンジをもぎ取れる。だが、ちょうどこのやや動きが鈍くなっていた時の僕のオレンジピッキングを見て、「とあるサッカーの名門」はMさんにこう言った。

 

「とあるサッカーの名門」:「あいつ、取るの遅い!」

 

ふと「とあるサッカーの名門」の方を見ると、奴はさっきのピラニアの画像のような軽蔑の眼差しで僕を睨んでいるではないか。そしてこの「とあるサッカーの名門」は3人で同じ箱にオレンジを集めるのを止めてしまい、自分で勝手に別の箱に自分のオレンジだけを入れ始めた。「この男と一緒に働いてられるか、この男と同じ箱にオレンジ集めていられるか」とでも言いたげな行動だ。「あの子、ほんっとに信じらんない!」とMさんも呆れるばかりだ。

 

Mさん:「もうやだ!ありえないあの子!」

 

僕:「あれ?いつも一緒にいるから、僕てっきりMさんはあの子と仲良いのかと思ってましたけど」

 

Mさん:「ファームの仕事をする前はシティで一緒に住んでて、その時は友達だったんだけど、今ははっきりいって、本当はあの子と一緒にいたくないの

 

傍目では友達なように見えたが、やっぱり実際には違っていたらしい。Mさんの話によると、こいつは普段からMさんに対してもカチンとくる態度なのだそうだ。

 

僕:「よくあんなのとずっと仲良くしてられるなと思ってましたけど、やっぱりMさんも本音ではあの子は嫌いだったんですね^^;まぁあの子態度悪いですもんねぇ、特にアジア系の人に対して。」

 

Mさん:「あの子いつも『ここのホステルのみんなは私を嫌ってる。だから私はここにいる奴らみんな嫌いだ』とか愚痴ってるの^^;私、あの子にはもう今まで何回も『まずはそういう自分自身がみんなに対する態度を改めなかったらいつまでたっても状況は良くならないよ』って言ってるんだけどねぇ」

 

僕:「そもそも自分の他のアジア人に対するあの態度のせいで嫌われてるっていう一番大事な部分に関する自覚がまるでないですね。。。あの子、年いくつですか?」

 

Mさん:「もう30だよ」

 

僕:「マジっすかー!?30年も生きてきて、奴は今まで何を学んできたというんでしょうね?^^;」

 

Mさん:「もうこんな奴ほっとこう。今まで散々自分勝手な言動しといて、今回もチームとして動く気がないっていう意思表示を自らしたんだから、こっちも手を貸してあげずに勝手にさせればいいよ」

 

そうして僕とMさんは2人でせっせと箱をもぎ取ったオレンジで埋めていき、数時間後には2箱がオレンジでいっぱいになった。ところが、「とあるサッカーの名門」の箱を見ると、まだ半分も埋まっているかどうかといった所だった。なんなのだ、こいつは^^;僕のオレンジピッキングを見て「取るのが遅い」とバカにし、あれだけエラソーな態度を取って自分勝手な個人プレーに走った挙句、結果を見てみたらこの程度かよ?それだけならまだしも、この女は「もうこれ以上1人でできない。手伝って」とMさんに泣きつく始末だ。なんという無様な奴なのだろう。最初は呆れていたMさんだったが、結局僕ら2人はこの「とあるサッカーの名門」のために箱の残りの半分を手伝い、この子だけこの日の給料がもらえないという事態を防いであげる事にした。

 

この肉体年齢は30歳で精神年齢は3の子のため(こいつよりもよっぽどお利口な全世界の3歳の子たち、ゴメンナサイ)に、僕とMさんはせっせとオレンジをかき集めていたのだが、その横でこの「とあるサッカーの名門」を見てみると、いつまでたってものんきに一服しているばかりで、ピッキング作業に戻ってきそうな気配がまるでないではないか。結局残りのほとんどはMさんと僕で仕上げ、こいつはほとんど何の役にも立っていなかった。そして仕事が終わった後でも、「ありがとう」や「ごめんなさい」といった類の一言は、この女の口からも鼻からも一切出てこなかったそういえば、こいつがMさんに泣き言を言う前の段階で、重たいハシゴを倒してしまって自分だけの力で持ち上げて元通りの位置に戻せなかった時にも僕が助けてあげたのだが、その時もこいつのツーンとした態度は変わらず、感謝の言葉も聞こえてこなかったな。なんという奴なのだ?

 

Mさんは今日という今日は我慢の限界で、この女とはこの後まともに口をきいてあげなかったらしい。すると、彼女はさすがにそれには堪えたらしく、「ねぇ、後でゴハンごちそうするからさ!」とMさんに歩みよろうとしたそうなのだ。その事をこの日の夜にMさんから聞き、「一応この女にも反省するだけの心はあるのかな」と僕は思った。

 

ところで、今回はこの韓国人の女に関してボロクソ書いたのだが、韓国人がみんなこんな奴ばかりなのかというと、言うまでもなくそんな事は決してない先ほど少し名前を出したダイアナというイングリッシュネームの韓国の女の子は逆に物凄くフレンドリーで礼儀正しく、話しやすくて誰からも好かれる人柄の子だった。同じホステルに滞在している、同じ時期に同じ国から来た2人の女の子が、ここまで見事なまでにロクデナシの嫌われ者と良い人の好かれキャラの真っ二つに分かれるというのもなかなか面白い現象だ。まぁ、今回メインに書いているのは、旅をしているとこういうしょーもない奴に出会う事もありますよという事だから、もしワーキングホリデーなど、海外の旅をお考えの方はこういった人間に対する心の準備ぐらいはしておくとよいと思われます。

 

そして話は戻って翌日の朝。僕が朝食を終えてキッチンで皿を洗っている時、「とあるサッカーの名門」が横に来たのが見えたので、僕は明るく「おはよう^^」と声をかけた。昨日の事もあったし、今度こそは彼女の態度も改善されている事だろう。その結果…

 

僕は今回も完全シカトされたのでした。