この日は日本から持ってきたそうめんを食べました。ヘイディは6月に大学の国際交流プログラムで3週間ほど日本に行っており、そこでもそうめんを食べた事があったので、なんだか懐かしそうにしてました。彼女たちには簡単なそうめんの作り方を英語で書いたメモを渡しておいたので、余ったそうめんは次からは自分たちで作れるはず。堪能してくださいな^^
パウラは夏休みとかみたいな時間がある時は彼氏のヴェサとよくテニスをするそうで、よかったら一緒にテニスする?と誘ってもらえたので参加する事にしました。テニスは10歳とか11歳の時とかにちょっとやった事があった程度で、もう軽く15年はやっていませんでした。案の定パウラにもヴェサにも負けましたが、一応なんとかポイントを奪うぐらいはできました。
そういえばパウラの家からテニスコートまでは徒歩10分ほどだったのですが、家の玄関の鍵は敢えてかけませんでした。最初は僕は「えぇ、鍵かけなくて大丈夫なの?(『ていうか俺のパスポートとかお金とかも部屋にあるんだけど^^;』、と心の声)」と聞きましたが、パウラは「大丈夫大丈夫^^;誰も何もとってきやしないから。この辺は治安がいいから、鍵かけないのは普通だよ」とあっけらかんと答えました。都市部ではさすがに鍵をかけますが、こういう田舎なエリアでは近所の人たちを信用して鍵をかけないのはまだまだ普通なのだそうです。
この日はテニスが終わって夕食をとった後はサマーコテージ(夏休みにくつろぐための別荘)に行きました。このコテージ、なんとパウラのおばあちゃんが自分で建てたそうです。コテージは少し離れた島に建っており、途中までは車で行きますが、そこから先はボートを漕いでいかねばなりません。ボートを乗るために岸の近くまで車で来たのですが、ここに来て問題発生。コテージに行くためのボートがなかったのです。どうやらこの日はパウラの従兄弟が既にコテージを使っていたため、ボートはコテージ側にあるのだそう。パウラは従兄弟に「これから自分たちもコテージに行きたいんだけど」という電話をしようとしますが、従兄弟は電話に出てくれません。
ここでパウラはこう言いました。「こうなったら選択肢は2つしかないね。私のコテージに行くのは諦めて、代わりにリーシのコテージに車で行くか、それとも私が向こう岸のコテージまで泳いで行って、ボートをこっち側まで持ってきて、それからみんなを乗せてまたコテージまでボートで行くか。」
1つ目の選択肢はともかく、2つ目の選択肢にはヘイディやリーシもちょっと「え、本当に大丈夫なの?」と引き気味。向こう岸のコテージまでの距離は約1km。聞けば湖の深さは深い所で8mほどあるそうで、もし何かあったら溺れてしまう危険もあります。
ここでパウラは「ねぇ、どっちの方がいいと思う?」と僕に聞いてきました。僕は「うーん、リスクの少ない方だね」と答えたのですが、するとパウラは「ハハハ、リーシのコテージの方に行くって事ね。でもゴメンね、私やっぱり泳いで自分のコテージの方にいくわ。せっかく忠告してくれたのにゴメンね^^」とあっさり僕の忠告を却下。
おい、じゃあなんで聞いたんだよ!
ちなみにここまでのこの会話は駐車場に停まっている車の中で行われており、ここでパウラはこう言いました。「じゃ、そういう事で、私泳ぐから。今から水着に着替えるわ!」そういうとパウラは車のトランクの方へモゾモゾと移動し、本当に着替え始めました。
僕:「おいおいおい!本当にここで着替えるんかい!」
パウラ:「そうだよ~。」
僕:「俺の存在が気にならんの?俺、今その気になれば後ろ振り返れるんだよ?やらんけど。。。」
パウラ:「いいも~ん。そしたらもっと見えにくい死角に潜り込むから」(←そういう問題か?^^;)
そうこうしているうちに、パウラは着替えを完了して水着姿に。裸足でトコトコと岸まで歩いて行きました。
僕:「ほ、本当に大丈夫なの?湖の水は冷たくないの?」
パウラ:「うん、平気平気。いつも入り慣れてる温度だよ」
僕:「水の中に何か危ない生き物とかもいないの?」
パウラ:「フィンランドにはそういうのはいないよ^^」
いろいろと聞かれても泳いでいくのが当たり前であるかの如く平然と答えるパウラ。日本で日本の友達がこういう事をしようとしたらもっと強く止めていたと思いますが、フィンランドに来たのが初めての僕は、フィンランドでこういうのが普通なのか異常なのかよくわからず、あまり強く出れずに結局パウラは泳いでいく事になりました。でもさすがに妹のヘイディもちょっと心配なようで、「とにかく溺れるのだけは絶対にやめてね!死なないで!ちゃんと生きて帰って来るんだよ!」と念押し。そりゃやっぱりそうですよね。心配ですよね。でも心配している妹や友達をよそに、パウラは湖へ入り、そのままゆっくりと向こう岸へ向かって泳いで行きました。
しばらく待っていると、ボートがこちらへ向かって進んでくるのが見えました。ボートを漕いでいるのはパウラ。おお無事だったんだ!よかったよかった!
パウラ:「ああ、寒い寒い!泳いでる時は良かったけど、漕いでるのは寒いわ。さぁ、早くコテージまで行こ!」
みんながボートに乗ると、パウラは再びボートを漕ぎ、ついにみんなで向こう岸に上陸しました。
後で聞いた話によると、泳いでくるパウラをみた従兄弟たちはビックリ仰天したそうで(←そりゃそうだろ^^;)。パウラと従兄弟のやりとりはこんな感じだったそうです。
従兄弟:「おい、なんか誰かが向こうから泳いでくるぞ!あれ、パウラじゃないか!」
パウラ:(上陸後)「ちょっとぉ!さっき電話したのに出なかったでしょ!おかげで私、自分でボートを取りに1km泳いでくるハメになったんだからね!」(←いや、それはあなたの意思です。しかも友人の制止を振り切って(笑))
話は戻って、サマーコテージに着いた僕たちは、パウラ以外も全員水着に着替え、サウナに入る準備をしました。従兄弟たちが既に使っていたので、サウナはもう温まっているとの事。サウナの本場フィンランドの本格的なサウナは初体験です。
サウナの中に入ってみると、やはり非常に蒸し暑い。それもそのはず、サウナの温度はおよそ90℃もあるのです。別に激しい運動をしているわけでもないのに、少し座っているだけでも僕の体からは汗がドバーっと噴き出してきます。一方でパウラ、ヘイディ、リーシのフィンランド女子3人の肌を見てみると、うっすら程度にしか汗をかいていないではありませんか。あんたたち、一体どういう体の構造してるんですかい?
僕:「俺はもうこんな滝のような汗が出てるっていうのに、何で君らそんなうっすら程度の汗しかかいてないの?」
ヘイディ:「女の子の肌はねぇ、汗をかくものじゃなくて光り輝くものなのよ^^」
ハハハ、フィンランド女子からもこんなセリフを聞くとはね^^;
そしてしばらくすると…
僕:「うあぁぁ、暑い!俺、もう我慢できない!」
そういうと僕は外で出て、湖に入りに行きました。少し遅れてフィンランド3人娘も湖に入りに出てきました。みんなで湖に入ると今度は…
僕:「んぎゃぁー、寒い!寒い!何℃なの、水温?」
パウラ:「15℃ぐらいだよ」
僕:「そんなにあるの?5℃ぐらいしかないように感じるんだけど。。。もう俺、サウナに戻る!」
湖に気持ちよさそうに全身浸かっているフィンランド女子3人をよそに、僕はサウナへふらふらと逆戻り。
しかし後2回ほど「サウナ→湖」のサイクルを繰り返すと、徐々に体が慣れてきたのか、サウナや湖の中にいられる時間が少し長くなりました。
3回目の湖の時は、ちょっと足がつかない深さの所までみんなで泳ぎに行きました。僕は別にカナヅチではないし、人並み程度には泳げるのですが、プールで泳ぐのと湖で泳ぐのはやはりだいぶ違う感じがしました。1つはやはり水温が日本で入り慣れた温水プールと比べてだいぶ低いので、水温に慣れていない状態だと体力を奪われる感じがするという事。もう1つは湖の水がそれほどクリアではないので、1m先も見えず、視界が確保されておらず不安感があるという事。せっかくゴーグルを持ってきたのにあまり役に立ちませんでした。
水に顔をつけない状態で立ち泳ぎをするのに慣れていない僕は、水面に浮かんでいようとするだけでも体力を消耗してきました。
僕:「あぁ、やっぱ室内プールとはだいぶ違ってちょっと怖いな~」
ヘイディ:「大丈夫、溺れそうになったら私たちが助けてあげるから^^」
そうは言ってもらえたものの、本当に溺れそうになって助けられるようではシャレにならんので、早めに切り上げてサウナに戻る事に。サウナ内では、日本人の僕とフィンランド人の3人の温度感覚の違いについて話したりしました。
僕:「フィンランド人にとっては湖の冷たさがなんともないのはわかるけど、サウナの暑さも汗もあまりかかずに平然としていられるってどういう事?」
ヘイディ:「んー、まぁ子供のころからずっとやってるしね~」
僕:「こんな90℃の蒸し暑い部屋が平気なんだったら、日本の高温多湿の夏も楽勝なんじゃない?今日本ではいくつかの地域で39℃ぐらいになってるんだけど」
パウラ:「それは違う違う!私たちがサウナの暑さが平気なのは涼しい格好をしてるし短時間だけしか入ってないからだよ。日本のあの蒸し暑い夏で長時間スーツ着てるとかは無理無理!」
たしかにサウナの中ではスーツは着てないけど、「短時間」ではない気がするんだけどなぁ^^;
お喋りしながらのサウナと湖での水泳はあっという間にすぎ、普通の服に着替えてコテージの外に出ました。外にはたき火をしている所があるのですが、そのあたりではパウラの従兄弟たちが音楽を聴きながら酒を片手にトランプをして遊んでいます。ちなみに聞こえてくる音楽はドンドコドンドコデンデケデンデケと、やたらとビートの速いヘビーメタルの音楽。さすがメタル大国でもあるフィンランド。何かする時のBGMはメタルなのですね。
トランプのゲームにも参加させてもらい、その後はウインナーをたき火で焼いて食べました。これぞスオマライネン・マッカラ(suomalainen makkara)ことフィンランドソーセージ。辺りはすっかり暗くなり、夜遅くなったので、そろそろボートを漕いで戻る事に。
無事に向こう岸に辿り着き、車で家に向かう途中、パウラはこんな事を言いました。
パウラ:「ああ、楽しかった!でも、今日は私の彼氏のヴェサが一緒に来てなくて逆によかったかもね。ヴェサがいたら、私が向こう岸まで泳ぐって言った時に絶対に行かせてくれなかっただろうから」
ハハハ、そうですかい。やはりあなたのあの行動は、フィンランドでも普通ではなかったのですね^^;
そういえば、サウナと湖に夢中でパウラのサマーコテージの写真撮るの忘れてました。という事で、ネットで拾ってきた夏の別荘想像図。