月曜日に会社をクビになり、その翌日にオリビアも自ら会社を辞めた時、彼女とは電話やテキストメッセージのやりとりをしていた。2人ともこの会社のセールスチーム所属ではなくなったが、近いうちにどっかでディナーでも一緒にどうかという話をしていた。そこにビクトリアと元ルームメイトのレオも加わり、その週の金曜日にフリンダースストリート駅で待ち合わせをする事になっていた。

そして約束の待ち合わせの時間。フリンダースに最初に着いたのは僕だった。3人に会えるのを楽しみに駅の入り口で立って待っている僕。ところが、僕以外の誰も一向に来る気配がない。どういう事かと思ってまずオリビアに連絡をしてみた。すると彼女は「今は金がないからどこにもいけないし誰にも会えない」と言うのだ。マジかい?自宅からフリンダースまで来てどっかの店で食べて帰るだけなんだから、数十ドルもあれば余裕でないの?それすらないんかい?ていうか、僕もオリビアも入社して3週間たった所で既に会社を離れたとはいえ、その間基本給800ドル(手取り687ドル)は毎週もらえてたんだから、むしろ貯金ができてないとおかしいんでないの?しかもオリビアは3週目はマネージャーとして基本給200ドル上乗せしてもらってたんだし。毎週給料入る度に全部使っちゃってたのかねぇ。てか、来れないのがわかってたんならもっと早くそう言ってくれ。

そしてレオにも連絡を取ってみる。すると、今大学で大事な課題に取り組んでいるのだという。予定が変わって来れなくなったが、連絡するのを忘れていたらしい。何と。オリビアに続いてレオまでも。これでまさかビクトリアまでもドタキャンて事はないよな。

しばらくすると、ビクトリアからも連絡が来た。今日ターフを回っている最中に、最近新しく入社したシェーンがターフの住人の1人に殴られるという事件が発生したらしい。しかもその男に仕事用のiPadまで盗られて、警察に連絡して対応してもらっている最中だというのだ。以前マットのセールスのお手本の件でも少し触れたが、ターフの住人はセールスの人間に対して敵意むき出しで出てくる事も少なくない。実際、僕も僕の姿を見た途端に怒り狂った住人から野良猫のようにシッシ!と追い払われた事もあるし、ビクトリアもチャリティセールスの者ですと自己紹介をした瞬間に怒鳴り散らされ走って逃げた事があったらしい。

Door to doorセールスでは一日で百何十件もの家を回り、それを毎日繰り返すため、時に実際に物理的暴力を振るってくる住人に遭遇したとしても不思議ではない。そして今回たまたまその犠牲になってしまったのがシェーンだったのだ。幸いその男は暴行容疑で現行犯逮捕され、破損したiPadもシェーンの過失によるものではないものとして、会社の負担で新しいiPadを支給してもらえる事になったそうだ。ただその日は被害者側も警察まで行く必要があり、本来勤務終了時間と比べて終わるのが大幅に遅れてしまいそうなのだという。こんな時に無理して一緒にディナーする事もないし、結局またの機会にという事になった。

それにしてもビクトリアのは仕方なかったとはいえ、同じ日にこんな風に3人から同時にドタキャンされるとは。しかも会社をクビにされた数日後に。嫌なことって来る時は重なって一気に来るもんだな(泣)