メールボックスを見ると何件か返事があり、その内の2人とはすぐに翌日ルームインスペクション(滞在候補の部屋を直接訪れ見学させてもらうこと)の予約が取れた。そして翌日の6月20日(金)。まず午前中に訪れたのは、ライアンという男の部屋だ。指定された住所に行くと見えたのは、何十階もあるビルで、待ち合わせ時間になり出てきた男は台湾人だった。Flatmateのプロフィールの自己紹介の文法の間違え方がなんかアジア人っぽかったので、あまり驚きはしなかったが。

彼はさっそく部屋を見せてくれた。3人用のそれほど広くないベッドルーム(2段ベッド一つと普通のベッド一つ)が2つと、ライアン自身が寝るベッドがリビングに一つで、いっぱいになると7人がここで共同生活をすることになる。レント(家賃)は1週間につき150ドルだが、1か月分まとめて払うと1週間につき5ドルの割引をしてくれるそうなので、実質$145/Weekとなる。彼はこの部屋の他にもう一つ、CBDの少し南にあるサウスバンクというエリアにも部屋を持っており、そこも案内してくれた。彼はオーストラリアに既に2年と数ヶ月の滞在経験があった。最初の2年はワーホリで、今は学生ビザで語学学校に通いながらこの部屋を貸して家賃収入を得るというビジネスをしているのだという。話してみるとフレンドリーだったし、印象は良かった。

午後に見ることになっていた2件目は、CBDから南に走っているSaint Kilda Roadをトラム(路面電車)で南下し、Inkerman Streetという通りにある所だった。出てきたのは若い女の子で、たぶんオーストラリアで生まれ育ったアジア系で、学生っぽい感じの子だった。レントは週110ドルと、1件目よりもだいぶ安かったが、この子は喋っていてあまりフレンドリーさを感じなかったので、是非ともここに住みたいという気持ちにはあまりならなかった。

あと何件か見てから決めたかったので、バッパーに戻るとまたFlatmateのページを開いた。よさそうな物件の主に連絡を取ってみる。ジェムという人の部屋が良さそうだったのでメッセージを送ってしばらく待っていると、僕の携帯にエマと名乗る女性から連絡が来た。「すみません、ちょっと覚えがないんですけど」と返事をすると、「あら、あなたの方からメッセージを送ってきたんじゃない?私、あのページではジェムよ」と返された。以前はジェマ(Gemma)と名乗っていて、それをFlatmate上では短縮してジェム(Gem)としていたのだが、つい最近エマと名乗る事にしたらしい。「名前変えてた」とか、言われなきゃ知らんがな、そんなもん。サイト上のプロフィールと違う名前で携帯でメッセージよこすなら、最初にそう説明しておくのが筋ってもんでしょうが。

翌日土曜日の朝、指定された場所に行って待ち合わせをし、部屋を見せてもらった。レントは週150ドルで、下の階にはトレーニングジムやプール、バーベキューセットもついていた。ベッドルームは2段ベッドではなく広めだ。2つあるベッドルームのうちの1つには、イギリス出身のカップルがいるらしい。部屋自体はだいぶ良かったのだが、いくつか気になる事があった。まず、2件目の子と同じくなんだか喋り方がツンケンした感じでフレンドリーさを感じなかった。最初に会った挨拶の段階からあまり雰囲気良くなかったし。もう一つは、最低3ヶ月は住み続けることとか、住人はこれらの家事を週替わりでこなすこととか、いろいろ後でめんどくさくなりそうなルールがあったことだ。彼女はホテルで働いていて、あまり家にいないのでなるべく長期間住めてなおかつ自分の留守中にも部屋をある程度任せておける人間だけに住んでもらいたいみたいだが、まだ仕事が見つかっていなくて無収入の状態で1箇所に何ヶ月も固定されるのは抵抗があったし、何よりこの人の話し方はあまり気に入らなかったので、ここもそんなに住みたいと思えなかった。

この日も前日と同じく2件のアポが取れていた。もう一つのアポはジョンという男とのものだ。このジョンという人は僕がルームインスペクションで会った人の中で唯一向こうから僕にコンタクトをとって来た人物だった。ポートメルボルンというエリアに部屋を持っている人で、この人は部屋にたどり着くための道案内を一番丁寧に行ってくれた。待ち合わせ場所のトラムストップで会ったのは、50以上はいっているおじさん。最初はオージーかと思ったが、workを「ヴァーク」、winterを「ヴィンター」と発音するなどのアクセントがあって所々聞き取りにくい。ゲルマン系言語の国の出身ですかと聞いてみると、ノルウェー人である事が判明。もしかしたらとは思っていたがやっぱりか。

ここはCBDで見た物件とは違い、一軒家にバックパッカーたちが何人も住んでいるという感じの所だった。フランス人などヨーロッパ系の住人が何人か見られた。レントは週145ドルと、ライアンの所と変わらない。日本人の女の子も1人いたらしいが、この家からだと毎朝4時台に起きなければ出勤できない場所で仕事が決まったため最近引っ越す事にしたそうな。このジョンというノルウェー人、たぶんルームインスペクションで一番丁寧に対応してくれた人だと思う。部屋を見せた後は車で近くのBay streetという通りを案内してくれて、銀行やスーパー等の場所を確認することができた。

更に、ジョンは職探しのことでもアドバイスをくれた。「手っ取り早いのは、その辺の通りにあるいろんな店に『コンチワー』とヒョコッと顔を出して、履歴書を配って回る事だね。うちの部屋に滞在してる子たちのほとんどは部屋から徒歩20分ぐらいのBay streetで仕事見つけてるよ。この時期は仕事を見つけるのはそんなに大変じゃないはずだよ^^今のメルボルンは冬でまだ寒いから、あんまり人が来たがらないんだ。」

この「お店にアポなしで履歴書を持っていきなり突撃する」という方法、APLaCで読んだ事があったが、やっぱり普通に行われていることだったんだなぁ。なんか安心したぞ。それにしても、人によって言う事が全然違うもんだな。午前中に会ったエマにも「今仕事探してるんだけど」って話をちょっとしたら、「今のオーストラリアでは仕事なんてなかなか見つからないよ。たとえサービス業で働くとしても何か資格とかがなきゃ難しいよ。」などとネガティブな事ばかり言われてたんだが。

この日のインスペクションはここまでで、バッパーに戻った。バッパーに泊まって数日経って少し洗濯物がたまっていたので、ランドリールームで洗濯をする事に。洗濯が終わり、乾燥機を使おうと思ってちょうど1つ空いていた乾燥機に向かうと、同じタイミングで乾燥機を使おうとマシンに近づいてきた女の子と譲り合いになった。最初は英語で喋っていたが、すぐにお互い日本人だと気づき日本語で喋り始めた。

当時僕がオーストラリアに来てまだ数日だったのに対し、その日本人の女の子は既に7~8ヶ月ぐらいは経っていた。オーストラリアで出会った、初めての日本人のワーホリの先輩である。彼女とはファーム探しをする時に避けた方がいいエリアなどについても話したが、彼女の話によると、ミルデュラだけは絶対に行っちゃダメとの事だった。悪徳ファームやそれとグルになっている業者が多く、ものすごく評判が悪いらしい。その時はオーストラリアに来て日が浅かったので「ふーん、そんな所もあるんだ」程度にしか思わなかったが、このミルデュラという場所、今後もファームのinfamous areaとして何度も名前を聞くことになる。

さて、ここまで金曜日と土曜日の2日間のインスペクションで4人と会ったが、できればもう1、2件見ておきたかったので、またFlatemateでよさそうな物件を見てみた。イヴァンという人の部屋が良さそうだったのでメッセージを送ると、早速携帯に返事が来た。この日に翌日のアポが取れたのはこの人だけで、月曜日にはバッパーからシェア先への引越しをしたいと思っていたから、そろそろ決めないとな、部屋。この人のルームインスペクションが終わったら、イヴァンも含めた5人に夕方までに連絡することにしよう。