これは、ニンテンドースイッチ版エルネア
王国の日々でのプレイを基にした物語です。

▼登場人物の相関図



「この時代は魔銃師会がえらく主権を握っているんだね。魔銃師会は必要な時にだけ知恵を与えたほうがバランスが良いものを」


魔銃師アーサーがわざと呆れたようにして珍しく本音を吐いた。


「時代錯誤だ」


その態度から反感を買い、騎士隊はいくらアーサー先生の考えでも、もう古いから受け付けないと端から相手にしなかった。


「知恵は常に与えれば危険だ。周りが考える力が低下してしまう」


魔銃師アーサーは事の異常性を理解してもらえないだろうと思いながらも言い聞かせた。


「王族を守るのは騎士隊の役割だ」



自身に誇りがあるのだろう騎士隊の語気には重みがあった。



「知恵のある者が常に前に出たらどうなる事か……」


魔銃師アーサーはこの時代の人間はそのリスクというものを回避できないのならば問題が起こったときに対処というものができるのかと懸念した。


マーリンは前へと手をかざした。


「──全員乗った!抑えるよ、父さん!」


魔銃師アーサーも前へと手をかざした。



「──この人数を……?無茶言うねー」


キリルも加勢した。


「……オレを忘れてないか?」


マーリンの手からは青色、キリルと魔銃師アーサーの手からは紫色の炎のような光が流れるように出てくる。


それぞれの光が融合し、みるみるうちに目の前の光が大きくなっていく。


「ーー⁉︎」目も眩むほどの強烈な閃光が騎士隊に襲いかかった。


それを3人の手で押し付けた。


「あとはオレ達が時間を稼ぐ!マーリン先生、早く行け」


キリルは敵を負傷させないほどの防御を保っておきたいところだが、思った以上に騎士隊の反撃が大きく、力加減が難しい事に頭を悩ませた。


「一時的に視神経を脅かすくらいだから悪く思うなよ!」


マーリンは最後に一頻り防御を放つと、離脱しようとしていた。


「──早く行け。全ては目的のために」




それを見た魔銃師アーサーは短い言葉でマーリンを急かした。



マーリンは躊躇う素振りを見せたが、頷いた。



「──うん……死んでも相変わらずだね、父さん」


だが、ここでマーリンが抜けては連携のバランスが乱れてしまう。




どうしたものか、とマーリンは正義感から迷ったが、敵と味方の互いの安全を優先させようと試みた。




レイラは魔銃師アーサー達を一瞥すると、舟を発進させようとしていた。



「レイラさん操縦できんの??」



イマノルは驚いた声を上げた。



「任せなさい!昔よく操縦してたんだから」



そう言い放つと、レイラは船にエンジンをかけた。


「頼むぞ、レイラ。また会おう」


魔銃師アーサーは防御魔法に集中しながら、背後のレイラに言った。



「私がまだ生きてればね」



船が動きだした。



名残り惜しかろうが、その感情を認める訳にはいかない。


今となっては致し方のない話だからだ。



「ほーんと。釣れないなあ」



魔銃師アーサーはその場をはぐらかすように言ってみせた。


「あなたはいつでも人誑しなんだから」


そんな心中を知る由もないレイラはひと睨みすると去っていった。




「魔法使いたち大丈夫かなぁ?!」


イマノルが心配そうに後方を見た。


魔銃兵であるパトリックはカピトリーナの状態を確認しながら言った。


「あの3人なら大丈夫」


「──マーリンさん……」


アリスは夫マーリンが岸に残って闘っている事を思えば、穏やかではいられなかった。


船内から子ども達を守り、夫の無事よりも子ども達を最優先してしまった事にアリスは今になって気持ちが沈んでしまった。


だが、右に左にと大きく船が揺れている事にアリスは気づいた。


「俺たちも大丈夫かな?!」


イマノルが焦ったような声を上げた。



「逃げる時に安全運転するバカがどこにいるのよ!」


レイラの運転は船内へと水しぶきを大量に入れ、船の旋回は綺麗に小回りが効く訳でもないので、振り回されるようだった。


アリスが乗った船は陸地から離れていってしまった。


愛する夫と娘を置いて。


「……」


アリスは無言で水面を見つめていた。


あまりにも荒々しい運転で波が左右上下に揺れていた。



「きもちわる……い」



ベロッドが嘔気を訴えたが、スピードを緩める訳にもいかないのが現実だ。



もうすぐ巨大な水門を抜ける。




──その時だ。




ひんやりした空間の中で一際白い肌をした美しい女性がこちらの方面へと船でやってきた。



ひっそりとした今にも沈みそうな船に乗っているにも関わらず凛とした様子でこちらを見ていた。




アリスはそれが誰なのかを知っていた。




この国の女王の娘であり、アリスの姪だ。




「──カルミア!」



アリスは叫んだ。



「どこに行くの!」



「──アリスさんには……」



王太女でありながら、ティアラを外していたカルミアは凛と言い放った。



「アリスさんには関係ない!」



そう言い放つと、カルミアは舟を進めた。




「カルミア!!」



アリスは今にもすれ違いそうな舟に向かって手を伸ばした。