介護を受ける利用者にとって、ADL(日常生活動作)とQOL(生活の質)の維持・向上は非常に重要です。しかし、良かれと思って行われた介護が、かえってADLとQOLの低下につながる場合があります。それを過剰介護といいます。

過剰介護とは、利用者が自分でできる動作まで介護職員が手伝ってしまうことを指します。自分で服を着ることができるのに着替えを手伝う、自分でトイレに行けるのに車椅子で連れて行くことなどが、過剰介護に当たります。介護職員側には、「危ない」「手間を省きたい」「早く仕事を捌きたい」といった理由があるといわれます。しかし、このような過剰介護は、結果的にADLとQOLの低下を招きかねません。

自分でできることをやらない、やれない状態が続くと、残存能力まで衰えてしまう可能性があります。歩くのが少し大変でも、自分で歩こうとすれば足腰の筋力は維持されます。しかし、常に車椅子で移動すれば歩くための筋肉が徐々に衰え、いずれは本当に歩けなくなるでしょう。食事も同様に、自分で食べられるのに介助されてばかりいれば、食べるための筋肉や機能が衰え、自分で食べられなくなる可能性があります。

このように、過剰介護によってADLが低下するとQOLも低下する可能性が高まります。自分でできることが少なくなるということは、生活の自由度が下がり精神的な負担も大きくなるからです。また、介護度が進行するとさらに多くの介助が必要になり、悪循環に陥ってしまいます。介護は、その人の持っている能力を最大限に活かし、自立を支援することが大切です。過剰介護にならないよう適切なケアを心がける必要があります。

介護業界において、ADL(日常生活動作)はよく見かける言葉です。ADLとは食事や入浴、排せつなど、毎日生活する上で基本となる行動のことを指します。一般の人なら普通に行えるこのような動作も、施設に入所している利用者にとっては、介護職員のサポートがないと難しい場合も少なくありません。その為、介護職員は利用者がそれぞれ必要とするサポートを見極める必要があります。

ただ手を差し伸べるだけでなく、利用者が自分で出来る事は無理のない範囲で行ってもらうことも大切です。そして、利用者が1人で出来ないことでも、残された能力を十分に発揮する方法がないか考える必要があります。

例えば、自分で排せつは出来るけれどトイレまで歩いて行くことが出来ない人に、安易にオムツを履かせるのはよくありません。せっかく機能している排せつ行為が衰えたり、本人の自尊心を傷つけたりする可能性があるからです。介護職員がトイレまで付き添ってあげるのがベストですが、毎回付き添うのが難しい場合もあるでしょう。そのような時には、ポータブルトイレをベッドの側に置いておくなどして、利用者の活動とQOL(生活の質)の両方を尊重することが大切です。これは寝たきりを防ぐ為にも効果的です。

施設で定期的に行われるレクリエーションも、活動が低下しがちな利用者に対してよい働きをしてくれます。身体だけでなく脳のトレーニングにもなるので、認知症の予防も期待出来ます。また、職員やスタッフと楽しみながら行なうことで、QOLの向上に繋がるでしょう。レクリエーションにリハビリの要素を取り入れることで、ADLにもよい効果をもたらします。介護する側にとって、QOLやADLは常に意識しておく必要があります。より詳しく知りたい方は、「ADLを正しく知ろう!」が参考になるでしょう。