種子島「蒼龍」のブログ

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種子島でのんびりと本を読んで暮らしているおっさんのブログです。
おっさんの大好きなもの(本、食べ物、子供やサッカー、焼酎や種子島の事など)について、ぼちぼちと書いていきます。

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久しぶりの更新になりました。

夏はなにかと忙しくて・・。


というわけで、久しぶりの更新は、山崎豊子先生の「約束の海」。

先生の遺作です。

第1章「約束の海」を執筆した時点でご逝去なされたので、未完の作品なのですが、この第1章だけでも先生の凄みがビンビンに伝わってきます。(構想では第4章で完結予定だったそうです。)


私は、先生の戦争三部作「不毛地帯」「二つの祖国」「大地の子」が特に大好きで、10年に一度のペースで読み返しています。

この「約束の海」は、四部作目になる予定だったのだと思いますが、未完のままでの刊行だlったので、読むのを躊躇していました。

先生の作品を、未完の状態で読むなどということを、先生が可と思うはずがない・・と思っていたからです。


が、

やはり山崎文学の吸引力・誘惑からは逃れられることが出来ず、ついに昨日、本を小脇に抱えて、ニヤけた顔を首の上に乗っけて部屋に行き、8行目から現世を離脱して、はっっと気がつくと、もう読み終わっていました。。


感想を述べると、

「ただ、ただ残念・・。」

「嗚呼、こんな傑作の続編が読めないとは・・。」

「残念・・。」

「無念・・。」

「切腹・・。」(BY ギター侍)



そう、先生の作品は、数が少ない・・。

ひとつの作品を書くのに、6~10年の歳月をかける為です。

ただ、発表された作品は、全て10点満点。(というか、オイラごときが点数をつけること自体が恐れ多い。)

そんな宝石の様な先生の作品の中でも、とび抜けて一番になる可能性、ポテンシャルを秘めた作品を未完で残して逝ってしまわれるとは・・。

本当に残念無念です。


山崎先生。

貴方の書き記された、戦争と人間、男の生き様、人生。

それらは、私の人生の中で、ひとつの指標として、これからも生き続けていきます。


「約束の海」

独善的評価=10点(10点満点中)






私は今、だいたい月に40冊くらいのペースで本を読んでいます。

作家名で選ぶ本、題名で選ぶ本、粗筋で選ぶ本、特定の人物や出来事について書かれている本。
あまりこだわりを持たないようにして、色んな種類の本を読むようにしています。


そして、一つの物語なりエッセイなりを、読み終わってから次に行くのではなく、常に並行して2~3冊の本を読みます。


①300~400ページくらいの物語。
②エッセイや評論。
③長編(シリーズで1000~3000ページくらい)の物語。


①や②については今までご紹介してきたような感じです。
今日は、それらと並行して、1ヶ月ほどかけて読んでいる長編についてご紹介します。



高村薫さん。
素晴らしい作家さんです。
この1ヶ月で、「マークスの山」「照柿」「レディー・ジョーカー」と、合田雄一郎シリーズの3作を読みました。

どれも素晴らしい物語ですが、私は特に「レディー・ジョーカー」が逸品と感じました。


この人の文体は、なんと表現したら良いか・・。

例えるなら、ある登場人物の人物像を描写するとき、
村上春樹さんなら、非常に細かい精密なタッチで、髪の毛一本・皺一つまで、キャンバスに絵を書くように見事に描写するのですが、
高村薫さんは、ノミ一本で大きな石を削りだし、3次元の彫刻をしているように人物を描写していきます。


その人物の、思考、生い立ち、感性、仕草、等を徹底的に書き出して、表面からしか分からない絵画ではなく、裏側まで表現する彫刻のように、丹念に丹念に描写しています。


この物語では、犯罪を犯すこととなる人たちの「動機」が、あんまりはっきりしていません。
普通の人が、確固たる動機のないまま、ある時、ふっとラインを超える様を、見事に書き出しています。
「脈絡のない動機」「脈絡のない人たち」を、登場人物の心理、生い立ち、過去、現在、を丹念に描写することによって、見事に表現しています。
・・ちなみに、この「動機」を浮かび上がらせるために、200ページも使います。(普通の物語で200P目くらいなら、もう犯人は逮捕されていますね。。)圧巻のディティールですね。


一方で、いわいる禁忌(タブー)にも果敢に挑む作家さんですね。
被差別部落、在日朝鮮人、障害者、同性愛など、真正面から表現しています。



徹底的な取材をもとに生み出される、骨太で、重厚で、硬質な文体。
人間の不可解さや人生の不条理さを、圧倒的な感性と説得力のある言葉、徹底的なリアリズムで表現できる文体。
最近、そういう硬派な作家さんが少なくなりましたね~。
思わず、新田次郎さんや、山崎豊子さんを思い浮かべました。



まぁとにかく素晴らしい物語です。
初心者の方には重いかもしれませんが、ある程度長編を読み慣れてる方々なら、絶対に外してはいけない作家さんですね。

私も、この続きの物語がまだまだあるので、あと数ヶ月は楽しみな長編読書が出来ますね~。


素晴らしい作家さんに出会い、
素晴らしい物語に出会う。
しかもそれが超大作大河ドラマな長編なら、まだまだ数ヶ月は続きを楽しめる。。


お金では買えない、知的な幸せ・精神の保養です。


「マークスの山」    =独善的評価9点
「照柿」          =独善的評価7点
「レディー・ジョーカー」=独善的評価10点
(10点満点中)

拝啓 池田晶子様


早いもので、貴方がお亡くなりになられて、はや7年の歳月が流れました。
その後の世界も相変わらず、物質は豊かなまま、精神は貧しいままの世界です。



「少しでもお金を稼ぎ、少しでも・・誰かさんよりも・・、良い服を着て、良い車に乗り、良いマンションに住み・・、」
他人と比較することでしか得られない幸福感、達成感。
他人と比較することで、簡単に絶望してしまう人生。


自分の表層的な感情に、屁理屈をつけて正当化し、生徒を従わせることしかできない教師。
表層的な感情を、言葉に落とし込む為の考察が出来ず、キレることでしか大人に表現できない生徒。


簡単に「正義」の看板を背負って、他国を攻撃する国。
そもそも、「正義」の意味を考えることの出来ない指導者たち。


限り有る、貴重な資源を使い作られる、本来とてもプレミアムなモノであるはずの「本」が、紙屑のように扱われている現状。
私から見ると、貴方の精神とは、かけ離れた人達が書く言葉に、世界は満ち溢れているようにしか思えません。



思えば、貴方の著書に出会ったのは、20代も半ばの頃でした。
人生に絶望しつつ、かといって何も行動することの出来ない、中途半端な私が、貴方の著書に出会い、少しずつ変わっていくことができました。


貴方が私に教えてくれた事。
それは、
「知る」ことよりも「考えること」、
「思う」ことよりも「考えること」、
そして「言葉の大切さ」です。


それは、なんの道標もない、とてもとても広大な「言葉の海」を、ほんの小さな舟で漂流していた私の、「オール」となり、「羅針盤」となりました。


それまで私は、これほど、考察に裏打ちされた、美しい言葉、確固たる精神、正確な記述、でも解り易い、優しい言葉、に出逢ったことはありませんでした。


人間が「考えること」の偉大さ、そしてそれを「言葉にする」ことの偉大さを知り、自分という人間の矮小さを知る事ことができました。


今でも、「池田晶子」という貴方の名前を思い浮かべるとき、目頭が熱くなってしまうことを抑えることは出来ません。

今でも、読む本、触れる本、出会う本の中に、いつも貴方の面影を探しています。

これからも、貴方の言葉と出会った時の「衝撃」を求めて、あらゆる本を読んでいきます。


「人は、どこから来て、どこへ行くのか。」
私には、貴方がどこへ行ってしまわれたのかは分かりません。
ただ、貴方の精神の「種」は、本を通して世界にまかれ、色んな芽に育ってきていることは、私には分かります。


ほんとうに、ありがとうございました。

                             蒼龍



「14歳からの哲学~考えるための教科書」
独善的評価=採点不可