俺が抜き去るとすぐに追いかけてきた。しかも、俺が知らないと思って、豪快に走って追ってきた。

やはり走るのと歩くのではスピードが違う。このままでは抜かれる。俺はビルに映る奴を見て、前に出させないようにガードしながら歩いた。


会社まで後100メートルぐらいに迫った時、回りに人混みが無くなった。

人混みが無ければガードも出来ない。


こうなったら奥の手を出すしかない。奴は俺が見ていないと思って走っているから、見ていれば走らない。

俺は何度も振り返りながら、全速力で歩いた。奴は振り返る度に走るのをやめ、歩きに戻したので、少し距離が離れた。


もう下半身の筋肉が限界に近い。

あと少しでゴールに着く。あとわずかだと思った瞬間、奴は俺が見ているにも関わらず、走りだした。


マジかー、あんた走ってますよ~


ゴール寸前の所で抜かされた。

奴は振り返りニヤニヤしている。


ムカつく。勝ったような負けたような。


この戦いが始まって、遅刻はなくなった。何がやる気に繋がるか分からない。


くだらない戦いだが、絶対に負けたくない。家から駅までの戦いを含め、明日はアイツら全員を完膚なきまでに叩きのめす。絶対勝つ。


続く