現金による支払いが心地よかった日本人の慣習が変わるかもしれない。スマートフォンやタブレット端末を使ったクレジットカードの決済サービスが多様化し、導入する店舗の裾野も広がっているためだ。さらに少額決済が多い電子マネーも消費税増税で1円単位の取引が増えたことで、利用が増えている。欧米に比べキャッシュレス後進国だった日本だが、2020年東京五輪開催で増加する訪日外国人観光客への対応などを追い風に、その地位を返上することになりそうだ。最近の動きを追った。
■敷金・礼金の支払いも
「初期投資をなるべく抑えたかったので、このサービスを導入して助かっています」
木製マシンを使いけがなどを克服するエクササイズ、ジャイロトニックなどを施術する「AMOG BODYBALANCE TOKYO」(東京都中央区)の中村夏希代表は、スマホやタブレット端末などを利用したクレジットカード決済サービス「Coiney(コイニー)」導入の理由をこう説明した。
中村代表は4月に開業したばかりで、利用額の4~7%の決済手数料がかかるクレジットカードの導入はあきらめていた。
しかし、スマホに差し込むカード読み取り機が無料提供されるほか、店舗側の負担は3.24%の決済手数料のみ。平均1カ月強かかるクレジットカード会社の店舗審査も数日間で可能とあって、導入に踏み切った。
スマホなどを使った決済サービスをめぐっては、Coineyを運営するコイニー(東京都渋谷区)や米スクエア、米ペイパル、楽天の「楽天スマートペイ」などが市場を開拓してきた。コイニーがクレディセゾンと、米スクエアが三井住友カードとそれぞれ提携するなど、クレジットカード会社の“代理戦争”の側面もあるが、いずれも初期費用や決済手数料の安さを武器に、クレジット決済になじまないとされた個人事業主や業界に浸透している,ルイヴィトンマフラー。
コイニーは、慣例的に現金や銀行振り込みでの支払いが多い業界との提携を強化している。9月には家賃保証の日本セーフティー(大阪市)と提携し、現金決済が主流の敷金・礼金などの支払いでサービスを導入。また、リクシルとも提携し、全国約400店のフランチャイズチェーンで10月からスマホなどによる決済を順次始めている。
■訪日外国人向けに環境整備
復興庁も10月から、東日本大震災の被災地の観光振興につなげようと、福島県会津若松市の観光地でコイニーのシステムを使った導入試験を始めた。外国人旅行者は少額でもカードでの支払いを希望する人が多いといい、小さな土産物店や飲食店でもカードが使えるようにして利便性向上を目指す。
米スクエアも3月、レジ業務をスマホなどで行える無料アプリ「Airレジ」を提供するリクルートライフスタイル(東京都千代田区)と連携,ルイヴィトンマフラー。これを使えば、飲食店などではテーブルごとの注文入力や席の管理、会計・売上管理などもできる,ルイヴィトンマフラー。
また、クレジットカード大手の三菱UFJニコスは、商店街のキャッシュレスを加速させる。自由が丘商店街振興組合(東京都目黒区)は9月下旬から、1台の端末で複数のキャッシュレス決済ができるシステム「J-Mups(ジェイマップス)」を順次導入している。クレジット、交通系電子マネー、中国で普及する銀(ぎん)聯(れん)カードなどによる決済ができる。同組合は、訪日外国人向けの買い物環境の整備に着目。同社の担当者は「東京五輪に向けてクレジット決済の普及に勢いをつけたい」と話す。昨年10月には、ジェイマップスに外貨建てによる決済サービスを追加しており、訪日外国人の利用が多いホテルや観光地での導入を増やしたい考えだ。
日本では、地方や観光地でクレジット決済が普及していないことが、現金決済の割合を高くさせている。クレディセゾンによると、平成24年度の国内個人消費に占める決済手段は現金が55.8%が最も多く、クレジットカードは12.7%だった。
これに対し、米国(2012年)は現金が20.1%だった一方、クレジットカードとデビットカードを合わせると49.2%でキャッシュレスが進んでいる。お隣の韓国でのクレジット決済の割合も50%超だ,ルイヴィトンマフラー。
国内のキャッシュレスの流れをさらに加速させそうなのが、電子マネーの利便性の拡大だ。
■電子マネーで地域活性化
全日本空輸は10月から、国内線の機内販売でJR東日本の「Suica(スイカ)」やJR西日本の「ICOCA(イコカ)」など、交通系ICカード計9種類の電子マネーを新たに使えるようにした。
全日空は、交通系カードを手荷物に入れずに身につけている乗客が多いとみており、年約20億円ある売上高が、1割ほど伸びると期待する。
イオンは、全国67の自治体と協定を結び、電子マネー「WAON(ワオン)」を使ったサービスを展開している,ルイヴィトンマフラー。具体的には、ボランティアや行政施設を利用したり、地元のプロスポーツチームの試合を観戦したりした際にポイントがたまる。ポイントは、商店街など地域の加盟店で利用できる。イオンリテール電子マネー推進本部の上山政道本部長は「地域活性化につながれば」と期待する。
消費税増税の影響で1円単位での支払いが多くなったことも、電子マネー普及を後押ししている。インターネットを利用した市場調査会社、クロス・マーケティング(東京都新宿区)によると、4月以降に電子マネーの利用を増やしたきっかけとして、「交通費が安く済む」(29.1%)、「小銭が増えてわずらわしいと感じたため」(22.1%)と、3、4位を占めた(複数回答)。今後の傾向として、4割近くが「利用を増やしたい」と回答している。(鈴木正行)
タブレット端末でカード決済するアンティーク店の正尚堂=京都市左京区(内山智彦撮影)(写真:産経新聞)