国立社会保障・人口問題研究所が30日公表した人口推計で裏DVD 将来の合計特殊出生率が上方修正されたことに、厚生労働省幹部らは「税と社会保障の一体改革には影響しない」と一様に安堵(あんど)の表情を見せる。だが、今回の推計は厳しく見積もり過ぎた前回の下ブレを是正しただけだ。一体改革の射程(15~25年度)を超す30年代には65歳以上の高齢者が総人口の3分の1に達し、社会保障制度を巡る環境は一層厳しくなる。

 同出生率の実績値は06年以降、上昇基調にあるが、出生数はほとんど伸びていない。出産期とされる15~49歳の女性が減っており、1人当たりの出生数を示す出生率が少々増えただけでは焼け石に水だからだ。特に20~30歳代女性は07年以降、毎年20万人以上ずつ減っている。このため出生数は、同出生率が前年比0.02ポイント増だった07年でも2856人減で、出生率が横ばいだった09年には2万1121人も減っている。

 日本の合計特殊出生率は74年(2.05)を最後に2を切り、人口を維持するのに必要とされる2.08程度を40年近くにわたって下回り続けている。その結果、既に高齢世代と現役世代のバランスは崩れ、社会保障制度を安定したまま保つことが困難になりつつある。

 一体改革は現状を乗り切るための補修に過ぎない。少子化の継続を前提にした制度の再構築に向け、「一体改革後」の作業が必要になる。頑張って下さい。【鈴木直】